18970312 NO5044 宮廷録事•任免一束•雑件
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012_0030_0050 駐韓日本公使館記録 12巻 参. 本省往復報告 (5) [宮廷録事•任免一束•雑件]
文書題目 (5) [宮廷録事•任免一束•雑件]
文書番号 報告第二三号
発信日 明治三十年三月十二日 ( 1897年 03月 12日 )
発信者 加藤 弁理公使
受信者 大隈 外務大臣
(5) [宮廷録事•任免一束•雑件]
報告第二三号
宮廷録事
陛下におかれては還宮なさることになり、種々の特典を恵まれることがかねてから聞いていたが、去る八日の官報で次のような詔勅を公報なさった。その全文を翻訳すると、
「王はこう言われた。『宝籙（＊道家の預言書）』に書かれているのは『いついつまでもさらに固くせよ』と言う事であった。先烈(祖宗を言う)におかれては明るく助力してくださり朕は外館（＊露館）で休んだのだが、今ついに旧宮へ臨御し縟礼を催して慶祝した。
振り返ってみると朕は仮に徳がないとしても、王業を引き続き受け継いだのだからどうするか。国には更に加えて難局ばかりに直面し、先きの甲年(1884年の金玉均の変)、後の甲年(1894年)があって股肱の臣を痛憤させ、壬兇の謀事（＊壬午軍乱）は上古、中古以来いまだなかったことだったが 、乙未年秋の乙未事変(1895年10月の変 *乙未事変=閔妃暗殺)は今でもどう考えても到底口にすることができない。
天綱と人倫が既に崩れたのに、実に百姓たちが危惧している乱崩逆節をいつ鎮静できるのか分からない。神人の憤冤を積み、天罰を下さなければならない王法も、まだ『春秋』におけると同様に、厳正な処理を広く行き渡らせることが出なかった。
ああ、ため息をついてしまう。軍勢で宿衛を警戒させ、殿宮を皇華（＊王の聖徳）をすべて播遷されたのに、朕は多くの忙しいわずらいを経験した。歳月は再び春を迎えたのだが、時難は今も鎮静化できず昼も夜も憂え終わるところがないが、卿士・庶民たちが還宮を願い祈願することが長くなって、また還宮するという詔勅を承ることは、国内の遠近で必死になって願い求めることになった。
思うに、慶運宮は古い宮殿であり王家がいつの時代も宮殿として、昔宣朝においても駐蹕なさったところとして、弘業が盛昌したところでもあり、英朝におかれてもすべての慶事を飾設させたことがあり、大きな典礼はこの場所であまねく執行された。
ああ、ため息をついてしまう。この由緒深いことを後代に昭明してやらねばならず、先世たちのこの豊厚だった経世の大計を貼示したことを忘れることはできないのだが、本日はその高い聖績を美しく手本として写すことが出来なくなっている。
いまは先王のその意味を継承し明旨を発し、太王妃、故・閔后お二人の移安を行なおう。幸いにその場所が宮殿と近くにあり、真心を尽くして奠礼をすることになった。そして別殿・寝齋の新築は開始するよう計画していたのだがこれを中止した。時が来れば以前のものより贅沢で無く造り上げよう。
良い事であっても昔の模倣ばかりせず、卑宮を昭倹し、形式には旧齋（もの忌み）を倣い、周国の時代の王の聖徳と同じ図功に巡り合えば、天幸が戻ってきて吉日が舒和し、厳（おごそか）かに大闕に列し、禍をくい止めることができその品位が北極星と同様に光彩を増し、
鶴駕鷄鳴（＊はっきりと目につくこと）は銀河水のようにきらびやかで、めでたいことが重なり、祥雲が大闕へ集まって来るように百官たちはお辞儀をし、喜んで小躍りしながら歓声が響き渡り、全ての百姓もやはり喜んで踊っているようだ。
したがってこのようになればすべての国に雨が降るように、全ての百姓が王沢を享受するようになるよう、次のように当然しなければならないことを列挙する。」
一. 天地宗廟社稷へ当然粉わなければならなお祭典は例を察して挙行せよ
一. 内外六品以下の各官は一階を加予する(一階昇級の事である)
一. 朝官年八十で階二品以上のものには、例に照らして米を賜ふ。参品以下及び士庶で年九十以上であるものには、有司が時をもって問存して意を示せ(慰問して論思旨を示せとの意)。
一. 軍隊各隊の兵卒は例に照らして飲食物を送って労苦をなぐさめよ。
一. 各地方にいる鰥寡、孤独及び残疾者でその苦労を告げることができない人は、有司が心を留めて時を選んで不足を補い、住む所を失ってしまうことがないようにせよ。
一. 内外官員の公に因り(公務上の過失)降革(降は降等、革は免職)されたものは該部査明奏請して戒(処分)を免ぜよ。
一. 各道に流配以下の犯罪人はともに減等発落せよ
一. 京外監禁の犯人は犯す所の情節を査明し分別減等して発落せしめ、内に案情がもとも軽く赦免を与える予定の者もまた該部査明し、旨を奏上して定奪せよ。
以上は先月二十六日に下された聖旨であったが、これに基づき韓法部大臣は本月二日をもって軽減を与えるべき犯罪の種類を見分け、奏上の上、謀反・強盗・竊盗・殺人犯・奸通・詐偽罪以外の犯罪はすべて一等を軽減し、この類の未決犯人には判決を待って又一等を軽減するよう定めた。
一. 大行王后(故閔后)の諡号を明成と定められた旨去る二日仰出された。
一. 去る五日(陰暦二月三日)は大院君夫人の八十誕辰に当り、陛下は詔を下して「・・・この時まだ宴を挙げていないとはいえ、喜びを表す物がなくてはなるまい、云々」。そこで宮内府に命じ一千円を御饋送あらせられた。
任免一束
一. 「秘書丞・金鴻陸（キムホンユク）は功労既に多くある」と言って先月二十日特に正二品に、掌礼院掌礼・洪鍾宇（ホンジョンウ）は「経歴が既に長い。秘書丞の任に相応しいであろう」との宮内大臣の推薦によって、去る二日特に正参品に昇級した。また李世稙（イセジク）は先月二十六日法部刑事局長に任じ勅任四等に敍せられた。
一. 今回韓廷において民法を編製しようとの事で、法律起草委員会を再興し先月二十七日においてさきの委員・玄暎運及び権柔燮にその委員を命じた。
一. 欧洲六国の公使館参書官・金基龍（キムギヨン）は去る八日願いによって免官となった。
雑件
一. 昨年勅令第三十六号第一条をもって平安北道の観察府の位置を定州（チョンジュ ＊平安北道の南部、黄海の西朝鮮湾に面する。南は平安南道に接する）に定められたのだが、去る七日寧邊（ニョンビヨン ＊定州の東北東。平安北道の南部。南は平安南道に接する）に改置する旨勅令第十五号をもって発表した。
一. 欧洲六国の全権公使・閔泳煥（ミンヨンファン）は先に英国后帝即位六十年の賀儀に参列するため特に大使に命せられていたが、来る十七日(陰暦二月十五日)に出発するだろう、と言う。
一. この頃、前正言・朴仁煥というものが一の封事を上り、秘書丞・金鴻陸、内部地方局長・金重煥、農商工部大臣・李允用、法部大臣・韓圭卨、軍部大臣・閔泳煥、駐米公使・李範晉を劾弾したのだが、李・農商工部大臣及び金・秘書丞はこれを誣告だとして、その審理を高等裁判所に請求した。そこで同裁判所は告発人を引致しようとして、朴仁煥がまず逃げたが、既に縛に就いている。その関係人として一昨夜(十日)まで引致されたものは、平安北道の観察使で、宮中にあっては権勢家と呼ばれていた李容翊、及び朴万興、趙鍾�辧�鄭陽五など数人である。同裁判所はこれの審理を進行しようとしたのだが、その所長である韓・法部大臣は弾劾を蒙っている一人であると言って出廷する事を避忌し、その職を去りたいと願い出たのであるが、昨十一日につぶさに卿の懇（まごころ）を確かめた。「実病は既にこのような状態なので今しばらく勉めて卿の懇にそうようにつとめよう」との批旨を下し、その休養を許され、即日議政府贊政・趙秉稷に臨時法部大臣署理を命じられたので本審問は今後着々進行することになるであろう。
一. 今回韓廷においては、各部大臣その他の執務細則等を規定し、各部大臣は毎日午前九時から午後三時を執務時間となし、退出後はいずれも慶運宮に出頭して一応会合する事とした。そして議政府会議は毎週二回開設の事に定めた。
一. 還宮の際大いに活躍することを期待して議政の命を拝していた金炳始は、その後万事意の如くならないので、東小門外の三人台に起臥し辞職を願い出たのだが、昨十一日において陛下は「朕の行き届かない点を正しひろく時艱を救え、云々」の懇ろな批旨をもってこれを差し止められたのだが、同人においては到底再び起つ模様はないと言う。
一. この程入京せる露国・シヱヴヱレフ、汽船会社員・ルーベルク、予備海軍士官華族・カズリン、カラツサフスキー等の諸氏は、現在滞在しているがその用向きは元山近海において捕鯨特許の権利を得ようとの目的だと言う。
明治三十年三月十二日
加藤 弁理公使
大隈 外務大臣 宛
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