18951005 NO3820 平安道祥原郡において賊徒蜂起の件
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駐韓日本公使館記録 8巻 二. 本省往来信 (22) 平安道祥原郡において賊徒蜂起の件
文書題目 (22) 平安道祥原郡において賊徒蜂起の件
文書番号 発第五十号
発信日 明治二十八年十月五日 ( 1895年 10月 05日 )
発信者 特命全権公使 三浦 （＊三浦 梧楼・在朝鮮特命公使）
受信者 外務大臣臨時代理 西園寺
(22) 平安道祥原郡において賊徒蜂起の件
発第五十号
過日来電報で具申しておきました通り、「当国平安道祥原郡（＊祥原郡＝チャンウオングン 平安南道中和郡祥原面を中心とする地域）において先月十日夕刻、賊徒が蜂起しその内四十名計りは外国銃を携え郡守官宅及び民家に乱入し武器、弾薬、韓銭等を掠奪し同地東南約五里の地に屯集している」との趣旨が南部兵站監より電報で伝えられましたので追々探訪を遂行したところ、この賊魁は金秀元（キムスウオン）というものでもと祥原郡守以上に位していた人である。そしてその蜂起の主意は思うに国政改革に反対するものにほかならず、その部下実数は百八十七人を有しているとのこと。十四日に至り我が兵の掃討を恐れることと黄海道の海州（ヘジュ）を守撃するという目的をもって、銃器、財物を牛に載せ、妻や子供を連れて黄海道遂安（スアン）方面に潜んでいた。
その後載寧（チェニョン）、銀波（ウンパ）の間にある長寿山城に移り、敗退の道で昨冬かつて東学党に参加したものたちを呼び集めやや猖獗になろうとする勢いがあったが、去月三十日海州官兵がこれを囲んで火を放ったため、再び平安道に向って遁走したと言う。
なおその後の同賊徒の挙動については怠らず注意を加え報告致すつもりです。
今同賊徒が散布している檄文だといって入手致しましたのでこの文を添え念のため前顕の模様をとりあえず具報致します。
明治二十八年十月五日
三浦 特命全権公使
西園寺 外務大臣臨時代理 宛
[別紙]
文書題目 榜山砲文
榜山砲文
曰爾山砲等静聴我言 側聞汝矣等都会衆砲与我対敵云此果然耶 実若有是事吾不知爾等心腸果何如而有是挙矣我不是別人為国討賊之彰義士也別有期会事暫留於此是去乙汝矣等何苦而敢欲以卵撃石必断縷命此豈不為之寒心㦲汝我俱是一国之民忠義則一也反相攻撃致有殺傷於情体可乎汝我俱是
王臣而我則起義討賊汝則助逆蔑義於人倫可乎究其汝等之所為生為逆徒死為逆鬼豈不自悚自愧而可容於覆載之間哉汝有数万之来其若摧枯振稿然起義者非徒討賊亦済蒼生而汝等即是至愚之氓不知何忠何逆或眩於巧言或牽於威脅肯委身於死地送百年於先刻此乃起義者之所不忍也故玆以掲榜稍有知覚者看榜処之無悔於泉下之地者
(*私訳)
榜山砲文
君たち「山砲」たちは私の話を聞きなさい。聞くところによると君たちがすべての砲手たちを集めて我々に敵対しようとしているというがこれは事実なのか。本当にこういうことがあるならば理解できないことなのだが、君たちはどんな考えでこういうことをするのか。私たちはほかでもなく、国のために盗賊を討伐しようとする彰義士として、ほかに約束があって、しばらくここに留まっているのだが、君たちはどうしてあえて卵で岩を打ってでも自分のか細い命を絶とうとするのか、これはまことに情けないことである。
君たちと私たちが皆同じ国の民として忠と義の根本は同一なのに、反対に互いに殺し合おうとしているのだが、これは正しいことなのだろうか。君たちと私たちはみな王の臣下であるのに、私たちは自分たちの意志で蜂起し盗賊を討伐しようとするのに、一方君たちは逆賊を助け、義を滅ぼそうとしている。これは人倫として正しいことなのだろうか。君たちの所業を問い詰めれば、生きては逆徒になり、死んでは逆鬼になることなのに、これが自ら恐ろしくて恥ずかしくないのであれば、どうして天地間に容認されることができるだろうか。
君たちの数万がやって来て蜂起するならば、ただ盗賊を討伐するだけでなくまた、人々を救済することにもなるのに、極めて愚かな君たちは何が忠で何が逆なのかを知らずに、巧妙な話に誘惑されたり、威嚇に引きずられて自分を死地に置こうとすると、あっという間に命を失うだろう。これは義に立った者がとても見ることができないところだ。
したがってここに触書を掲示するので、少しでも分別のある者はこの触書を見て対応して死んだあと後悔することがないようにしなさい。
乙未 8月 6日
平安道 彰義士 金（＊）
[別紙]
文書題目 長寿山匪類移檄文
長寿山匪類移檄文
聞持裘正領々正則毛理誅悪及本々誅則悪消目今倭奴之所謂開和云者此可曰開和乎所謂開和者開物和衆彼我相�Ｋ槎義蟷沈У邁砧�兵犯闕逼
君父而奪寶器革法改制逐将相而取軍物使我邦有
君而無君有国而無国万国開和之法本初如是乎此不是開和即是逆賊之売国倭奴之滅国聖人有言曰十室之邑必有忠信以今観之聖人其欺我乎漢城十三万家戸無一介忠臣尚矣勿論五百年簪纓相継受無窮的
天恩者絶無半介之瀝肝披膽為国雪憤反納頭於倭奴謟付於逆賊伏々乞々苟得一仕幸延当下之残命自謂一生之得計箕聖之我罔為臣僕蜀将之有断頭将軍何足責備於似此之良班乎思之及此心如刀割以是之故函揮奮涙糾合義士暫留於此以待 天師先掃妖賊次済生民以清我邦則豈非上所云々者乎国運不幸有此赴義討賊之挙未有蘇雙之周済反致呉桂之指入淫美人兮豈不痛哭断腸乎今赴湯蹈火為国捐生馬革裹屍上不愧天日下不負比干至若身居相位国之存亡視同浮雲義之有無看作弊屣倡駆烏合之衆欲討赴義之士於倭奴可謂忠臣於 国家将作何物非但生為 国家之逆臣即是死為祖先之逆孫生存死去無所容処何等慨歎今有雄兵数百不可与草々小卒対敵専候車駕一決雌雄
乙未八月初六日
平安道 彰義士 金
(訳文)
長寿山匪類 移檄文
聞いたところでは、裏に毛皮を当てた衣服（カジョッ）を着れば襟を正さなければならず、襟まっすぐだと毛皮の毛が整然と揃う。同じように、悪を罰するなら根本に及ぼさなければならないのだが、根本を罰すれば悪が消滅すると言うことだった。
今倭人が甲午改革を開和だといっているがこれを開和ということができようか。開和というのは万物の道理を知って民衆を和順させることによって、あちらと私たちが共に喜び互いに傷つけることがない。
しかし軍隊を導いて宮廷を侵犯し、軍部をおどして宝器を略奪し、法と制度を改革させて将相を追放し、軍規を奪って我が国をして国王があるのに国王でなくし、国があるのに国でないものとしたのだが、万国が開和するというのは本来このようなことのか。
これは開和がではない、これは即ち逆賊の群れが国を売って、倭人が国を滅亡させることだ。
聖人のお言葉に「十戸の小さな村にも必ず忠臣がいる。」とあるが、今の状況を見ると聖人が私たちをだましたのだろうか。漢城十三万の家戸に忠臣がいないことは言わないとしても、五百年間官位を継続して無窮の国王の恩恵を受けた者たちが、真心から国のために憤りを晴らそうとする心は全くなく、かえって倭人に頭を下げ、逆賊にへつらい身を伏せて頼み込み、かろうじて一つの官位を得て、運よく当面の命を延命することを一生の良い計策とみなす。
しかし箕聖が私たちを臣下と見なさないことと、蜀将に首を落とした将軍がいたことこそ、こんな両班（ヤンバン）に比べればどうして責められようか。思いがここに及ぶと心は刃物で切られるように痛む。
であるから、涙を払い義士を糾合してしばらくここに留まり待っていると、天子の兵がまず無謀な盗賊を掃討し、続いて生民を救済して、我が国を平穏にするとしたらそれこそ上で述べた通りではないか。
国運が不幸であり、盗賊を討伐するこの義挙を引き起こしても、「未有蘇雙之周済 反致呉桂之淫美人兮(いまだ双方が蘇生するように、広く救済されることができなくて、かえって清国の将帥・呉三桂が自分の功を過信して反逆をしてしまった)」ように、どうして気苦労を断ち切って痛哭しないでいられようか。
いまや危険をものともせず、国のために命を懸けるなら、屍身を馬の革にくるみ空を仰いで恥じることなく、殷の比干＊にも恥ずかしくないだろう。
しかし宰相の地位にありながら国の存亡を浮雲のように軽く見、正義を履きつぶした靴のようにみなし、民を思いやって義に走る人々を討伐しようとする者どもは倭人に対しては忠臣といえるだろうが、国には将来何になるだろうか。ただ国家の逆臣であるばかりか、死んでは先祖の逆孫であり、生きても死んでも受け入れられるところはないであろう。どれくらい嘆かわしいことであるか。
今勇ましい軍隊数百はつまらない軍卒たちと相対することなく、ひとえに王の命令を待ち、結着をつけるのである。
乙未 8月 6日
平安道 彰義士 金
＊この「長寿山匪類移檄文」は、尾上敏子訳
＊甲午改革 「1894年(甲午の年)から翌年にかけて行われた朝鮮の政治改革。甲午農民戦争を機に出兵した日本は，日清開戦の口実として朝鮮の内政改革を主張し，7月23日には王宮を占領して大院君を擁立，金弘集を首班とする開化派の政権を成立させた。新政権は会議機関として軍国機務処を設置し，相次いで近代化のための改革法令を発令した。官制の改革による宮中事務と国政事務の分離，科挙の廃止，租税の金納化，通貨の改革，身分差別の撤廃，縁坐制･拷問の廃止など，改革は広範囲に及んだ。」
https://kotobank.jp/word/甲午改革-260834
＊「呉三桂 中国，明末清初の武将。遼西で明軍を指揮し対清戦に活躍したが，李自成の北京占領を聞き清に帰服。清軍を先導して北京を回復し，のち清の本土征討に活躍。平西王に封ぜられ，親王となる。雲南・貴州総管として強大な勢力をふるう。三藩の乱を起こしたが乱中に病死。」 出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて
＊殷の比干（＊
https://ja.wikipedia.org/wiki/比干）
＊参考資料
18950919 NO3645 平安道祥原郡で発生した暴徒事件に対する措置の件 4
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駐韓日本公使館記録 7巻 五. 機密通常和文電報往復 一•二 第4冊 (133) [平安道祥原郡で発生した暴徒事件に対する措置 件] 4) [平安道祥原郡で発生した暴徒事件に対する措置 件] 4
文書題目 4) [平安道祥原郡で発生した暴徒事件に対する措置 件] 4
文書番号
発信者 仁川高井 兵站監
受信日 九月十九日午前九時接 ( 1895年 09月 19日 )
受信者 三浦 公使
4) [平安道祥原郡で発生した暴徒事件に対する措置 件] 4
九月十九日午前九時接
仁川 高井 兵站監
三浦 公使（＊宛）
本日午前、水野大佐よりの報告では
「平壌司令部から特派した探偵の報告によれば、祥原（チャンウォン）の賊の実数は一八七人、十四日遂安（スアン）＊方面へ去った。賊たちの説くところによれば『日本兵がやってきてお前たちを殺す。だから我々はこの地に止まることはできない。速やかに海州を占領するのが一番だ』という。銃器・財物を牛で運び、妻や子供を連れて去った。集まっていた五ジウホウ（＊祥原の住民を指すか。不明）は、昨夜賊が去った後、付近の村民が自分の家屋を焼いた。『賊徒は良民を襲ったりはしない。ただ奸官を除くのみである。』との趣旨だとの説である。」
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