日本人は何事にも原因と結果があると考える。
でも多くのことは自分に原因があっての結果ではないし、そもそも自分が不幸か幸福かは外部要因より心の中、脳内環境の問題である。
麻薬でハイになっている人は、外部要因が何であっても、最高に幸せなわけだし、ウツでふさぎ込んでいる人は、外部要因が何であっても、とてつもなく不幸である。
だからウツになった時は、外部要因を考えるのではなく、脳内環境を考えなければいけない。
「問題があるからウツになる」のではなく「ウツになるから問題が起こる」のであり、問題の解決にはまずウツを治す必要がある。
しかしウツは気持ちの問題ではないので、自分の意思ではどうにもならない。
また、いくら聖書を読もうが、なぐさめの言葉を聞こうが、やはりウツは去っていかない。
叱咤激励は逆効果だし、
「気合と根性でウツを治さないからいけない」と責められれば、心は壊れてしまう。
ウツは心の問題ではなく、心が入っている脳の障害。
だから自分の力ではなんともならない。
物質的に脳内環境を改善する必要がある。
それは抗ウツ剤であったり、食物だったり、筋トレだったり、睡眠だったり。
私自身、ウツ気質で、長年、苦しんできた。
でも「ウツは脳内環境が原因」という事実を知らなかったため、ひどい目に遭ってきた。
世の中にはウツにならない人がいる。
彼らは「人間皆平等、みんなつらい思いをしている」と言う。
彼らの言う「つらい思い」とは、他人から殴られた痛み、異性にふられた苦しみ、収入が入って来ないことへの苛立ちであり、直に自分を襲っている不幸に対する感覚器官が感じる痛みである。
確かにそれらの痛みは誰もが共通だろう。
でもウツの苦しみはこれらとは違う。
脳内で勝手に生成され、それがどこまでも広がってしまう苦しみである。
正しい知識を持っていないと、ウツを心の問題と勘違いし、心の持ちようを変えてみようとしたり、他人になぐさめてもらおうとしたり、本を読みあさったりしてしまう。
自分の経験から言えば、100慰めの言葉を聞いても、ウツ状態から抜け出せないが、たった1錠、抗ウツ剤を飲んだら、ウツなどどこへやら、先ほどまでウツで苦しんでいたことがウソのように消えてしまう。
ウツで悩んでいる時はウツの原因は外部要因だと思い込んでいるが、抗ウツ剤を飲めば、外部要因は一切変わらないのに、ウツはけろりと治ってしまう。
確かに殴られた悔しさや痛みはあるし、恋人にふられた悲しみはある。
でもそれは感覚器官が感じる痛みであり、脳内からわき起こる鬱屈した苦しみではない。
問題とウツはあまり関係がなく、ウツになる人は問題があろうがなかろうが、勝手にウツになり、苦しむ。
ウツは脳の病気である。
病気は、気合や根性で治すことはできない。適切な治療と養生が必要。
このことを知らないがために、どれだけ多くの人が悲惨な人生を歩み、人間関係を崩壊させ、また自らの命を絶ってしまっていることやら。
ウツ体質ではない人には、ウツになる人のことを考えることができない。
だから彼らは威勢のよいデタラメなことばかり言う。
そんな彼らのデタラメを信じれば、ウツの苦しみは延々と続き、それから逃れるため、自ら命を絶つこととなる。
私自身、ウツで苦しみ、ウツのため人生の幸福の大部分を失った。
だから同じウツで苦しむ人たちに、少しでも早くウツの原因が脳の病気であることを知って欲しい。
そしてウツだと感じたら、心の病気外来に行き、その道の専門家に診てもらうことだ。
自力で治そうとがんばったり、何の知識も持たない他人に愚痴を言っても、ウツは悪化するだけ。
私がいくら声を大にして言っても、ウツで悩む多くの人は聞く耳をもたないだろうけど、でも「ウツは脳の病気」は、聖書の言葉と並んで、私が人に伝えていきたいことだ。
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