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2020年01月02日03:54

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何用あって月世界へ山本夏彦名言集

何用あって月世界へ

山本夏彦名言集

文藝春秋

人は言論の是非より、それを言う人数の多寡に左右される。　日常茶飯事

言葉というものは電光のように通じるもので、それは聞く方がその言葉を待っているからである。　　毒言独語

人は分かって自分に不都合なことなら、断じて分かろうとしない。　茶の間の正義

ちやほやされるのは、幸福に似て不幸である。　茶の間の正義

教えるということは才能である。または技術である。その才能のないものが教えると、教わるものは迷惑する。　毒言独語

言って甲斐ないことは、言わないものだ。　毒言独語

実を言えば、人が傷つかないところで傷つくのは、才能の一種なのである。　毒言独語

世の中には笑われておぼえることが多いのである。　毒言独語

善良というものは、たまらぬものだ。危険なものだ。殺せといえば、殺すものだ。毒言独語

非は常に他人にあって、みじんも自分になければ、経験が経験にならない。　毒言独語

文はうそなり、と私は思っている。文は非となりと言うが、それは同時にうそなのである。
毒言独語

感じたことをそっくり言うのは、勇気がいることである。また徒渉の技術を要することである。編集兼発行人

おめず臆せず自分の見たところを言うものは、ばかでなければ勇気あるものである。
編集兼発行人

作り話が実話にきこえるのは、そのなかに本当の部分があって、それがうその部分を覆うからである。　編集兼発行人

ほめる言葉の多少が文明の尺度なら、憎まれ口の多少も同じく文明の尺度である。
編集兼発行人

子供は大人がみくびるほど鈍くない。彼らは大人が何を欲するか知っている。編集兼発行人

この世の中は、九割以上習慣で動いている。そして、それでいいのである。習慣にはそれぞれ意味がある。けれども、なぜと聞かれても困る。　編集兼発行人

一人の趣味が洗練されることはある。大ぜいのそれが洗練されることはない。　
笑わぬでもなし

何より流行のいいところは、向こうからやって来ることである。　笑わぬでもなし

つかまえる人とつかまる人の区別が、はっきりしている世の中が、治まる御代だと今にしてしのばれる。　笑わぬでもなし

「お早う」「こんにちは」「おさきに」が言えないような人間関係は、そもそも人間関係ではない。　かいつまんで言う

新しい言いかたと古い言いかたがあったら、原則として私は古い方をすすめる。「ちりし」は新しく、「ちりがみ」は古い。出れるは新しく出られるは古い。　かいつまううで言う

親は子の口まねをしないことをすすめる。これだけで日本語は改まる。親というものは、子供がこの世で出会う最初の教師である。箸のあげおろしから、基礎的な言葉まで、子が親のまねをするのが順序である。　かいつまんで言う

むく鳥のように、雀のように親子は同じものだから、子が一人前になったら、親はいらないのである。　かいつまんで言う

なあーんだ、和服を着れば老人になれるのか。

事実があるから報道があるのではない。報道があるから事実があるのである。
かいつまんで言う

大ぜいが異口同音にいうことなら信じなくていいことだ。　かいつまんで言う

私たちは何回でも何百回でも同じ言葉にだまされる。　かいつまんで言う

馬鹿は百人集まると、百倍馬鹿になる。　かいつまんで言う

この世は、当人と他人から成っている。他人の目には、ありありと見えることが、当人の目には見えない。　二流の愉しみ

当人というものは、思い知ることがない存在である。　二流の愉しみ

当人というものは、老若を問わず、あらゆる他人のなかに一人ずついるのである。他人というものは、いつ当人に豹変するか分からないものはないのである。　二流の愉しみ

食いものの怨みは忘れ、旗や歌の怨みだけおぼえているのは不自然というより、うそである。二流の愉しみ

百年前も千年前も、昨日の友は今日の敵であった。　二流の愉しみ

無名の人もその名をとどめたがる。　ダメの人

「告白」というものは多くまゆつばである。自慢話の一種ではないかと私はみている。
ダメの人

すぐ忘れる部分は、記憶するに値しない部分である。　ダメの人

自信はしばしば暗愚に立脚している。　ダメの人

神と仏は時々ないものである。　ダメの人

ーとかくこの世はダメとムダ。　ダメの人

ーダメの人はなさず語らず。　ダメの人

ーダメだダメだと言う奴なおダメだ。　ダメの人

私はもういつ死んでもいいのである。それは覚悟なんてものではない。いっそ自然なのである。その日まで私のすることといえば、死ぬまでのひまつぶしである。　ダメの人

以前は会社を去っても家庭がありましたが、いまはありません。　つかぬことを言う

いくら非難されても改まらないことには、改まらないわけがある。　つかぬことを言う

男（の言葉）が丁寧であるのは耳にこころよいものである。　つかぬことを言う

思う人には思われず、思わぬ人に思われるのが人の世で、この世は「おあいにく様」に満ちているところなのに、この言葉が用いられること少ないのは移管である。つかぬことを言う

よくおぼえさせるには、分からないことを一つ二つころがしておくほうがいい。
つかぬことを言う

子犬は親犬に孝行しない。それが自然で、ひとり人間だけが孝行したのは二千年来教えたからで、それが僅々三十年教えなくなったらこのていたらくである。　つかぬことを言う

隠居とはむかしの人はうまいことを考えたものです。親は未練を断ち切って、家督を子に譲って以後いっさい口出しをしません。こうして十年たてば子は三十代になって、親が口出ししたくても今度は出せなくなって、自分は全き過去の人になったと知って安心して死ねるのです。つかぬことを言う

話は短いにかぎる。短くてよく分かると、聞くものは自分の頭がいいと思って喜んでくれる。恋に似たもの

言論の自由は大ぜいと同じことを言う自由であり、大ぜいと共に罵る自由であり、罵らないものを「村八分」にする自由である。これが言論の自由なら、これまでもあったしこれからもあるだろう。　恋に似たもの

あらゆる論争は、第三者が軍配をあげたところで終わるべきだ。それ以上の説得はどうしたら可能か。ここにおいて暴力の出る幕だと私は思うのである。　恋に似たもの

税はくれてやるものだと私は心得ている。だから血税の行方なんかせんさくしない。
恋に似たもの

金持ちがいて、中くらいがいて、貧乏人がいて、かっぱらい巾着切ドロボーのたぐいがいて、そして橋の下には乞食がいて、はじめて世の中である。　恋に似たもの

私は他人の子を見て、それが似たというより全く親と同じものであることに失笑することがある。　恋に似たもの

なんだ、ただ若いだけじゃないカーとあとで罵ってみるが、その若いということが何よりなのである。　恋に似たもの

私は職人の上手というものが、いかにがんこであるかを知っている。だからさからわない。
恋に似たもの

人の一生はせいぜい手帳五十冊で、それは高く積んでも一メートル、平に並べても一坪にならない。　恋に似たもの

いいとか悪いとか言っているのではない。映画の時代去る。もう二度と来ないだろう。
恋に似たもの

お歳暮を虚礼だというものがあるが、とんでもないことである。「徒然草」の昔から物くれる人はいい人にきまっている。　やぶから棒

汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼす。　やぶから棒

古人は「まことはウソの皮ウソはまことの骨」と言った。　やぶから棒

どんなに難しいことを書く人でも、手紙はちゃんと分かるんですよ。何回きわまる文章家も、手紙だけは分かるように書くからフシギです。　夏彦・七平の十八番づくし

いま生きている人、必ずしも生きてるわけじゃない。すでに死んだ人のほうがまざまざと生きていることがありますからね。生きてるつもりで、実は死んでる人でこの世はみちみちています。　夏彦・七平の十八番づくし

正義を振り回すひとは断じて怪しいひとですよ。　夏彦・七平の十八番づくし

わらべ歌はただの歌ではない。これを聞くと若きは十年二十年、老いたるは五十年六十年むかしの路地をこつねんと思いだす。　美しければすべてよし

やっぱり正月は年に一度がいい。相撲は晴天十日がいい。何事にも季節感が失われたのが、おしまいの証拠の一つである。美しければすべてよし

かいつまんで言え。　美しければすべてよし

そもそも学びかたを知らない子はあっても、遊びかたを知らない子はない。それが続々あらわれたとは、前代未聞の椿事である。　美しければすべてよし

広告われを欺かず。　美しければすべてよし

離婚の時代だという。その原因にひとは性生活ばかりあげるが、食生活であることもまたあるのである。これからふえるだろう。インスタント育ちとおふくろ育ちの割合は、今は四分六かも知れないが、近くインスタントの時代になる。　美しければすべてよし

実業家と芸術家を一身に兼ねるのは至難のことである。　おじゃま虫

私は手ぐすね引いて待ちかまえているサギ師がいて、それにやみやみだまされる「成金」がいる世の中を、治まる御代だと思っている。　おじゃま虫

提案のすべては何気ないもので、ただそれらをつなぎあわせると恐ろしい決定であることが分かるのはずっとあとである。　おじゃま虫

衣食足ると偽善を欲する。　おじゃま虫

人はどこまで偽善を欲するか、またはどこまで偽善は許されるか、私たちは今問われているように思われる。　おじゃま虫

古往今来税金をとりすぎる国家はつぶれます。　おじゃま虫

私は自分に親切がないときは迷わないが、あるときは迷う。　おじゃま虫

意地悪は正義と結託する。　意地悪は死なず

先生ぐらい意地悪なものはありません。真面目な先生ほど意地悪だね。そして意地悪の自覚がないんだから困る。意地悪っていうものはそもそも自覚を欠くものなんですね、あれ。
意地悪は死なず

意地悪は天に通ずる。　意地悪は死なず

申し分のないことを言うひとたちはうろんですよ。　意地悪は死なず

恥を知れ、なんていうひとには気をつけたほうがいい。　意地悪は死なず

正邪美醜、その双方を兼ねて初めてひとなんだと思うんです。　意地悪は死なず

大抵の病院は、病気でない人が行っても病気になるようなあんばいにできている。
冷暖房ナシ

医者と薬は信じなければ効かない。　冷暖房ナシ

健康なものには死んで行くものの気持ちは分からない。　冷暖房ナシ

この世の中にニュースはない。　冷暖房ナシ

新しいものは新しくあることが不安で、古いもののまねをする。　不意のことば

人は本に金を惜しむ。　不意のことば

同類は何百人集まっても一人である。　不意のことば

まねができれば一人前だというが本当である。　不意のことば

床屋もすなる苦心談。　不意のことば

私は「言論の自由」と聞くとカッとなるくせがある。それは危険なときには黙っていて、安全とみてとると我がちにいう自由のことかと思うからである。　不意のことば

私は同時代というのもをほぼ百年だと思っている。　「戦前」という時代

私たちが明治の人といっているのは実は封建時代の人なのである。「戦前」という時代

私は私の語彙が母親ゆずりだと今にして思うのである。　「戦前」という時代

出来てしまったものは出来ない昔には戻れない。　「戦前」という時代

教育というものは過去の財産を現代に伝えることだから本来伝統的なものであり保守的なものである。洋の東西を問わず教育は古典を教えることに尽きる。西洋ではギリシャラテンわが国では四書五経、老荘儒仏に人間の知恵は出つくしている。　「戦前」という時代

私たちが何を考え何を言っても、古人を出ることはできない。それらのことごとくを学んだ上でさらに考えたことが考えであり、さらに発見したことが発見である。尋常の人にそんなことはできないから、「学ブニ如カザルナリ」また「述ベテ作ラズ」と古人は言ったのである。
「戦前」という時代

こうして生きているのは死ぬまでのひまつぶしだ。　「戦前」という時代

親切というのもはむずかしいという自覚を、親切な人は忘れがちである。世はいかさま

風は生きものだからなまじ治そうとしないほうがいい。むしろ促進剤を開発して早くクライマックス達しさせ退散させるにしくはない。売り出せ風の増長薬。　世はいかさま

それがどうしたと言われても困る。神は細部にやどり給う。　世はいかさま

夜はねむるものである。　世はいかさま

核家族は言葉を減らす。今後とも言葉は減るばかりである。　生きてる人と死んだ人

戦後あるものはすべて戦前からあった。電気掃除機も電気冷蔵庫も昭和五年からあった。ただ売れなかっただけである。親不孝も恋愛もあった。大正デモクラシーをひと言で言えといわれたら私は親不孝と答えたい。　生きてる人と死んだ人

「ダメの人」というのは十七八になってから思いついた言葉ではあるが、早くすでに私はこの世はダメだと見ていた。「とにかくこの世はダメとムダ」だと思っていたが、それを言うべき友もなく終日無言でむっとしていた。　夢想庵物語

なさざればくはずといふか　あなかしこ　何をなしてか我はくらへるー右は夢想庵が五十になって請われれば必ず書いた詩である。私は武林が失敗した芸術家だから言うのではない。およそ詩人にしてこの嘆きを嘆かないものがあろうか。　夢想庵物語

いきは着物と密接な仲にある。着物が滅びたからいきは亡びたのである。ついでながら裁縫も、少し遅れて料理も亡びた。　最後のひと

私たちの父祖は東洋の古典を捨て、西洋の古典を得ればいいと思って、その双方を失って骨のない男になってもう六、七十年になる。ついでに女は針と糸を持たなくなった。料理をつくらなくなった。衣装はブティックで総菜はパックで買うようになった。　最後のひと

どんな組織も十年たてば腐敗する。百年続いた国鉄を見よ、全逓を見よ。　良心的

私は人生に対して「当人」であるより「他人」である。見物人である。だから当人には見えないものが、時々見えることがある。　良心的

ヤングは常に老人のパロディで、瓜二つである。うらやむには及ばない。それでもううらやむのはホルモンのせいである。　良心的

はじめ驚いたことは次なるひと驚く。やがて慣れて当たりまえになって言わなくなる。それを常にはじめのつもりで言うのがジャーナリストなのである。　良心的

日本人とは何か、ひと口で言ってみる。それは「にせ毛唐」だ。西洋人になりたくてなりそこなったものだ。　良心的

明治以前の日本人はシナ崇拝で、シナ人になりたくて賴山陽だの菅茶山だの名前まで三字にするのがあった。孔子を大将にして孟子を軍師にしてわが国に攻めてきたら、弟子よどうすると問うたら一人として答えるものがなかったという。そのシナ人が西洋人になっただけである。
良心的

人は四十になったら自分の顔に責任があるというが、それは一人が多くを兼ねた時代の話で、現代のように分業の極に達した時代のことではない。今は三十年会社員を勤めて定年になってもそれらしい風格は生じない。今後とも生じないだろう。　良心的

人は一人で多くを兼ねるとしぜん風貌に威厳を生じる。　良心的

われらみな家なき子。　良心的

教育は十年で人間を変える。ヒットラーユーゲントは十年である。（わが軍国少年も）釭衛兵も十年である。共に目は澄んでいたといわれる。　良心的

老人はむかし自分は戦争の渦中にあったから、戦争を経験したというが怪しい。その渦中にあっても人は多く経験しない。経験はついに才能の一種か。　良心的

限りなく本当に近い作り話。　良心的

私は誘われても旅をしない。その代わりに小さな情報を拾って察する。「豆朝日新聞」始末

古人はいわず、戸をいでずして天下を知る、と。　「豆朝日新聞」始末

いくら苦労しても人はついに本当の告白は出来ないのではないか、自慢話しかできないのではないか。　「豆朝日新聞」始末

世間には盛んなときに思いださないで、衰えたときに思いだす人があって、私はそのひとりである。それは私がいくら盛んなときでも満れば欠けるという目で見ているからで、はたして欠けても見る目が変わらないからである。　「豆朝日新聞」始末

世の中はさがる溜飲とさがらぬ溜飲がある。　「豆朝日新聞」始末

正義はソンでもソンのほうをとってはじめて正義であることがある。　「豆朝日新聞」始末

戦争がないことは何よりだが以前戦争で解決してきたことが解決できなくなった。大量の破壊がなくて大量の生産だけがある。　「豆朝日新聞」始末

本には著者の魂の全部ではないまでも片鱗がこもっている。それが並の商品とちがうところで、どんな本にも見るべきものは一つはある。　「豆朝日新聞」始末

私は断言する。新聞はこの次の一大事の時にも国をあやまるだろう。　「豆朝日新聞」始末

メーカーは技術者にマニュアルを書かしてはいけない。最も知る人は最も知らない人に訴える方法を知らない。　「豆朝日新聞」始末

今も昔も私は私のコラムを「猫またぎ」と称している。活字というものには強い力があって、読まないでそこに何が書いてあるか、きっと気に入らないことが書いてあるにちがいないと分かるのである。分かるからまたいで行くのである。　「豆朝日新聞」始末

私は人間というものはいやなもので醜いものだと見ています。美しいもの結構なものが万一あるとすれば、そのなかにほんの少しあると思っています。そう思わないと危険です。
「豆朝日新聞」始末

「年寄りのバカほどバカなものはない」ということわざ、大好きです。「豆朝日新聞」始末

およそ天下に五枚で書けないことはない。　「豆朝日新聞」始末

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