佐野 誠
共生経済学を創発する
富裕層と大企業を優遇する新自由主義政策（自由化、規制緩和、小さな政府）の結果，所得・健康・教育格差の拡大，自殺や孤独死の高止まりなどに象徴されるように，いまの日本では人々の最低限の共生さえ不可能になっています。そこに3.11が襲い，状況はさらに悪化してしまいました。これまでの新自由主義政策の焼き直しにすぎない「維新八策」などが今また推進されてしまえば，もはや取り返しがつかなくなります。むしろ今後目指すべきなのは、内橋克人さんが提唱する「共生経済」の方向性ですが，その地域拠点を増やし，強化するだけでなく，これと整合するマクロ的な共生の仕組みも国内外に創り出していくことが必要です。「共生経済学」とは、その方法を規範的に研究する新しい試みです。ここでは、関連する論点について僕の考えを書き込み，議論の素材を提供していきたいと思います。
佐野 誠。アルゼンチン名Andrés（現地の友人がつけてくれたもの。僕のイメージに合う名前なのだそうです）。 経済学者。博士（経済学）。 1960年生まれ。1982年，早稲田大学政治経済学部卒業後，東北大学大学院経済学研究科，外務省専門調査員（在アルゼンチン日本大使館）などを経て1998年から新潟大学教授。2001年9月にはアルゼンチン国立ラ・プラタ大学国際関係研究所招聘教授として集中講義を行いました。 ラテン・アメリカやアジアを広く旅して，特権層に有利な経済自由化が庶民の生活に与える弊害をグローバルに観察してきました。近年は日本経済の「新自由主義サイクル」とそこからの離脱戦略，地域における循環型経済社会への転換，初級経済学教育の改革などへも関心を広げています。 日本語による主著：『99％のための経済学【教養編】』（新評論 2012年） ,『「もうひとつの失われた10年」を超えて―原点としてのラテン・アメリカ』（新評論 2009年），『開発のレギュラシオン―負の奇跡・クリオージョ資本主義』（新評論 1998年），『現代経済学』（岩波書店 2008年；共編著），『ラテン・アメリカは警告する―「構造改革」日本の未来』（新評論 2005年；共編著）など。
第１部
共生経済の構想
ー新自由主義のサイクルの罠からどう抜け出すかー 佐野 誠
はじめに
第１章 現状認識ー新自由主義サイクルの罠
第１節 新自由主義サイクルとは
第２節 日本の新自由主義サイクル
�機Ю�策・制度転換
�供Х从僂亮楕�的・金融的不安定化
＊図２ 需要項目別の実質GDP成長寄与度
�供椨后椨此С丙抗搬腓鳩从僂亮楕�的安定化
＊表１ 需要項目別の実質GDP成長寄与度：2010〜11年四半期
�掘椨検椨此�補整、対外的ショック、景気回復
�后С丙垢粒搬隋�共生の破壊、「経済テロリズム」
�此С暗�要因による不安定化
�察Ю�策・制度転換の対外的要因
第２章 共生の構想：マクロ篇
第１節 再確認：新自由主義サイクルという悪循環
第２節 自由貿易理論の問題点
第３節 輸出・投資主導型成長の問題点
第４節 内需主導型成長への転換の必要性
＊表２ 貿易改革・説明責任・開発・雇用法案の概要
第３章 共生経済の構想：ミクロ篇
第１節 地域の「共生経済」と「FEC自給圏」
第２節 足下の「共生経済」？
第３節 内需主導型経済と地域の「共生経済」の整合性
＊図３ 消費者の選好には序列がある
＊表３ 消費者の選好は所得階層によって異なる
おわりに
主な参考文献
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