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2019年12月15日11:30

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   アルコール依存症に関する12章 齋藤 学 編

   アルコール依存症に関する12章
    自立へステップ・バイ・ステップ 齋藤 学 編
                    有斐閣新書
 アルコール依存症は、回復はあっても治癒のない病気である。死亡率もきわめて高い。本人の社会生活はもちろん家族への影響も深刻だ。この病気に打ち克つには文字どおりサバイバル作戦が必要である。病気の理解、適切な薬の服用、自助グループへの参加ー回復に至る戦略・戦術が不可欠なのである。
 回復への全ポイントをを収めたこの本は、患者と家族の方々、ケアにあたる人々必読の書。
   はしがき

 この本を世に出すにあたって、私には三つの動機づけがあった。
 一九八三年四月から、東京都立松沢病院でアルコール依存症・入院治療プログラムが発足した。岩崎正人医師(現、日本医科大学精神科講師)が病棟担当となり、私もスーパーヴァイザーとして仕事の一画に参加した。アルコール依存症の入院プログラムでは、各種のミーティングや系統的な酒害教育が書かせないが、治療プログラムについては岩崎氏と私が交替で患者たちに話しかけた。そうした講義をくり返しているうちに「適当なテキストが必要」と思うようになって、岩崎氏に相談をもちかけた。これが本書をまとめることになった動機の一つである。
 同じ一九八三年10月には原宿相談室という民間の精神衛生カウンセリングの機関が発足した。これはアルコール依存症をはじめとする嗜癖(しへき)行動の初期介入を仕事とする日本ではじめての組織である。私は、この相談室の設立企画と運営方針の決定にも参画することができたのだが、ここでもまた、アルコール依存症・教育プログラムのためのテキストが必要になった。これが本書を作ったもう一つの動機である。
 原宿相談室の教育プログラムの主力は遠藤優子室長であるが、そうしたわけで彼女にもこの本の執筆者になるように求めた。彼女は精神科ソーシャル・ワーカーで、主として家族、とくにアルコホリックの妻たちを対象に教育の仕事をしている。もっぱらアルコホリック本人を対象にしている精神科医の岩崎氏と組めば、本人、家族双方に説得力を持つテキストができるのではないかと考えたのだ。そのうちに、いっそアルコール依存症の体験者の人にも執筆陣に入ってもらおうと考えるようになった。何といってもアルコール依存症からの回復については、それを体験している人の話が説得力を持っている。たまたま小山文平氏というしっかりとした文章の書ける体験者と知り合ったので、こんなふうに考えることができたわけだ。
 こうして岩崎、遠藤、小山氏らにこの本の執筆を預けた形になったのだが、実はこの本、六年ほど前に私自身で執筆を終えているべきだったものである。当時、久里浜病院でアルコール医療を担当していた私は、そこでの教育プログラムの経験から、未だ治療の機会のないアルコホリックとその家族たちのための小冊子を編む必要を感じていた。その意図を有斐閣の高嶋勇氏に伝えたところ、さっそく、出版の企画をたててくださったのだが、言い出した私の方が目前の仕事に追われてウヤムヤにしてしまっていた。もっとも、ウヤムヤと思っていたのは私だけで、高嶋氏の方は編集担当の満田康子氏との周到なチームワークのもとで仕事を進めてくださっていたわけで、だからこそ、こうした形でこの本が世に出ることになったわけである。これが冒頭にあげた三つの同期のうちの最大のものである。
 以上のようなわけで、この本は現にアルコール依存症に悩む患者と家族への働きかけの一つの手段として書かれている。手近にアルコール専門の治療施設がなかったり、あったとしても種々の理由で利用できない人たちが、これを読んで、入院や外来通院を「文章で体験」できるようにという意図のもとに書かれている。各章の前後には三組の夫婦の会話が入っているが、私たちの臨床現場を訪れた人たちは、同じような会話が診察室の内外で交わされているのを聞くだろう。
 何かのきっかけでこの本を読んだ人が、迷い悩んだすえにとうとう私たちと出会う。そんな日が早く来ればよいと思う。
   一九八六年一○月 東京都精神医学総合研究所・社会学病理研究室にて
齋藤 学
●執筆者紹介
齋藤 学(さいとう・さとる)・・・・構成、監修
一九六七年 慶応大学医学部卒業(精神医学)
現在    医療法人社団 学風会理事長、家族機能研究所代表
      国立久里浜病院、東京精神医学総合研究所を経て現職。家族問題へと研究者としての私の関心はアルコール問題を越えてひろがったのだが、アルコール臨床は私の原点でもあるので、時々ここに立ち返ることで仕事全体の軌道を修正したいと考えている。

岩崎正人(いわさき・まさんど)・・・・・1〜4,6,10章
一九七七年 日本医科大学卒業(精神医学)
現   在 岩崎メンタルクリニック院長
卒業後、国立療養所久里浜病院、都立松沢病院などに勤務。この間、松沢病院にてアルコール病棟開設の基礎を築き、あるkじょー留依存症の治療への動機づけや緊急時の対応についての研究を行う。現在の専門領域はアルコール精神疾患。

遠藤優子(えんどう・ゆうこ)・・・・・5,7〜9章
一九七六年 淑徳大学社会学部卒業(精神医学ソーシャル・ワーク)
現   在 遠藤嗜癖問題相談室長
卒業後、成増厚生病院に勤務。酒にアルコール依存症者とその家族のケース・ワーク、グループ・ワークを担当。併せて都立精神衛生センターで酒害相談チームのスタッフとして働く。かたわらシステム家族療法を学び、原宿相談室開設以来、アルコール依存症、薬物依存、摂食障害などの本人・家族のカウンセリングと家族療法に従事。

小山文平(こやま・ぶんぺい)・・・・・11,12章
一九八五年 早稲田大学文学部卒業
現   在 フリーランスの編集者・ライター
自分の飲酒・酒害体験を通して、アルコール問題の実態と本質に迫ろうと考えているが、複雑すぎてどこからアプローチするのが有効か、試行錯誤のくりかえしで、困難は深まるばかり。せめてこの問題に対する世の関心と認識が少しでも高まることに望みをかけている。
   も く じ

私がアルコール依存症だって?
   ●症候論/初期介入

 酒とはどういうものか
エチルアルコールの吸収と代謝
 アルコール依存とアルコール中毒
 アルコール依存症のサイン
 アルコール依存症の症状
 (1)アルコール離脱(退薬)症候群
 (2)慢性アルコール中毒
  (a)神経系の障害
  (b)肝臓の障害
  (c)消化器の障害
  (d)心臓の障害
  (e)骨の障害
  (f)皮膚の障害
  (g)その他の障害

●アルコール依存症と酒害
     ー用語をめぐって
 この本が対象にしているのは飲酒癖つまり飲酒習慣ですが、これを医学では「アルコール依存」と呼びます。アルコール依存が進行して、心身に害を及ぼすようになった状態が「アルコール依存症」です。
 一方、飲酒して顔が赤くなったり、信三がドキドキしたり、かったるくなったりすることを「急性アルコール中毒(酩酊)」と言います。この状態がひどくなると昏睡に陥ったり、呼吸麻痺がきて死んだりします。急性中毒をくり返した結果、肝臓や膵臓を傷めたり、脳神経系を傷めたりした状態が、「慢性アルコール中毒」です。
 以上のようにアルコール依存症とアルコール中毒とは、現在に医学では厳密に区別されています。俗にいうアルコール中毒はアルコール依存症をさしていることが多いのですが、この本ではそうした誤った言葉の使い方を避けています。
 俗にいう「アル中」はまた、「アルコール依存症に陥った人」という意味にも用いられますが、この本では、こうした人々を「アルコール依存症者」または「酒害者」と呼んでいます。酒害とか酒害者という言葉は断酒会員を中心に用いられてきたものですが、最近は酒害対策事業などという用語が、厚生省をはじめとする行政の文書の中にも見られるようになっています。

どうしても断酒しなければいけないの?
   ●薬物依存の不可逆性/節酒の不可能性

どうすれば断酒を続けられるの?
   ●治療の三本柱

 抗酒剤を使う
 通院の意味
 (1)断酒後の情緒障害や不眠の管理
 (2)交通整理
 自助団体への参加


ぅ▲襯魁璽覦預絃匹辰銅るの?
   ●回復はあっても治癒はない 

どうしてあんなに飲んだのだろう!
   ●酔いにおぼれる心の動き

 (1)がんばりタイプ
 しらふになって沈みこんだ気持ちになる抑うつ感や空虚感を否認しようとするところから生じる過剰適応的態度です。つまり、必要以上にがんばるわけです。しらふのときには腰が低くて働き者という人が多いのはこのためです。休みを返上したり残業をしたりして仕事に打ち込みます。しらふのアルコール依存症者は、仕事中毒ともいえます。
 (2)つっぱりタイプ
 自分の依存症を否認しようとするところから生じる、過度な独立性の強調と力の誇示です。つまり、「自分のことは自分でカタをつけるから口を出さないでくれ」というかたくなな態度です。自分の弱さを自分で見まいとし、認めないようにします。そのため、周囲の人に対しても、上手に弱さを見せたり甘えたりすることができず、つっぱることになるのです。
 (3)高望みタイプ
 現実の自分の力不足を否認するところから生じます。しらふの自分のみじめさを認めたくないので、「本当は自分はもっとすごいことができるはずだ。こんなはずではない」と幻想します。その結果、実際の力以上に高望みし、挑戦しては挫折することになってしまいがちです。
 (4)わりきりタイプ
 脅迫的に二者択一的態度です。つまり、何ごとに対しても白か黒か、善玉か悪玉かに分けて考えてしまう、中庸がないのです。ところが、人間は神様ではありませんから、必ず良いところ、悪いところがまじりあっています。それを、両面を見ることをせずに、必ず白か黒かに分けて見るのですから、無理が生じてきます。それが、しらふのアルコール依存症者の対人関係のぎこちなさを作ることにもなります。
 (5)ほれこみタイプ
 「わりきり」タイプでまっ白と感じた人がなりがちです。あいてがすべてにおいて良い人というふうにとらえて、傾倒していきます。ところが、ひとたびその人の中に黒い部分を見ると、とたんにその人がまっ黒になってしまい、拒否敵で攻撃的な態度に転じることになってしまいます。ですから、昨日まで傾倒していた人が今日は突然嫌いになるようなものですので、周囲の人はとてもとまどってしまいます。

私の父もノンベエだった
   ●アルコール依存症の遺伝・世代伝播

妻には苦労をかけた
   ●アルコール問題に悩む家族
 「ジャクソンの七段階説」ー酒害の進行にともなって妻や家族の態度が次第に変化していく家庭に共通の特徴
 第一段階ー家族の否認といわれる段階。
 第二段階ー問題を家庭内にとどめることができず、社会から孤立していく時期。
 第三段階ー解体期。家族は疲れ切って諦めてしまう。
 第四段階ー再構成開始時期。第三段階で解体したあと、酒害者を除外して、家族が運営されるようになっていく。
 第五段階ーできる限り問題をさけようとすることに努力の集中する時期。
 第六段階ー第四段階から続いてきた家族の再構成が完成する時期。
 第七段階ー家族の再々構成の時期。アルコール依存症から回復し、しらふになると共に、第四段階から第六段階にかけて作られた妻と子どもだけの構成を、もう一度くずしていきます。しらふになった夫との交流が復活し、あらためて、夫をまじえた家族の新しい関係が作られます。


妻や子どもも変わらなければ!
   ●家族がやるべきこと、してはいけないこと

 家族は酒害者の言動に忙殺されます。
第一には、家族は世間体を気にしてしまいます。
第二には、家族は酒害者をコントロールしようとしてしまいます。
第三には、家族は酒害者の約束に対して期待をもってしまいます。
第四には、家族は酒害者を子ども扱いにしてしまいます。
第五には、家族は常に酒害者の言動に気をつかい、酒害者を刺激しないような生活をするようになります。
 悪循環から抜け出すためには!
第一に、家族は、飲むことにかかわるのをやめましょう。
第二に、家族は、酔うことにかかわるのをやめましょう。
第三に、家族は、酔いの後始末をするのをやめましょう。
第四に、家族は、暴力からは逃げましょう。
 第五に、家族全員が、酒害者と深いかかわりをもっている人びとをも含めて協調していけるように、意見の調整をしましょう。
第六に、家族は、情緒や感情を率直に表現して相手に伝えていくことができるように練習しましょう。
第七に、家族の中で酒害者に直言する機会をもちましょう。
第八に、家族は、自分自身が常に安定した精神状態でいられるように、自分の支えとしての相談機関につながりをもちましょう。
第九に、家族の一人ひとりが自分自身のための自助グループに参加しましょう。


アルコール家族の中の子どもたち
   ●家族関係を変える
子どもたちの特徴的な態度ー大きくは四つの型
(1)子供は王様 ここでいう子どもは、とても良い子で、飲んでいない親を助けて、他の家族メンバーを支配します。
(2)子供はピエロ この子供は、いくつになっても、家族の中の道化者の役割をとります。とくに飲んでいない親にとっては、自分をなぐさめてくれるかわいいやんちゃ坊主です。常に親の感情を敏感に感じとって、なぐさめ、はげまし、力づける子供です。
(4)子供は能面 この子供は、家族の中でもあまり発言せず、感情を表そうとしません。親にしてみれば、これという心配をかけることもない子供で、何を考えているのかつかみどころがありません。学校から帰ってもスッと自室に入り、他の家族との交流をさけて自分だけの世界を保とうとします。それを家族がこわそうとしたり、入り込もうとしたときにだけは、拒否という自己表現をします。
*家族関係の中のトライアングル
*家族関係野中のパウンダリー=境界
(1)世代境界ー親世代と子供世代の間の境界
(2)家族境界ー家族と社会を区切る境界
◎気づいた人から変わっていく
(1)飲んでいない親は、子供グチを言うのをやめましょう。そのためには、自分の不安を受けとめてもらえる相談者をもつことです。相談者としては、アルコール依存症についての知識をもった専門家を訪ねるのがいいでしょう。
(2)飲んでいない親は、自分が相談を受け始めたことやその中で学んできたことを子供に伝えましょう。子供にとっては、自分の家族の問題がアルコール問題であり、回復する病気であることを知ることは、不安を取り除く大事なことです。
(3)飲んでいない親は、自分をまず精神的に安定させて、のびのびと生活しましょう。子供は、親が安心して生活している姿を見せていくことで、自分が飲んでいない親を助けなければならないと言う強迫的な思いを捨てることができます。子供は、そうなってはじめて、自分自身のことをおちついて考えられるようになります。
(4)子供が自分の考えていることや感情を自由に話せるような雰囲気を作っていきましょう。そのためには親は、まず自分の意見をいうのでなく、子供に気持ちを問いかけるという話しかけをしていくことです。
(5)飲んでいない親は、子供と飲んでいる親とが直接ぶつかりあう場面では介入するのをやめましょう。ただし、これはあくまでもしらふのときです。子供にも、酔っているときに話をしても意味がないことを伝え、しらふのぶつかりあいは二人に任せていくことです。こうした人間関係の中でコミュニケーションのパターンも変化していくのです。
 飲んでいない親が、「子供のために自分だけががまんしましょう」と考えがちなことが、かえって子供を不幸にしていきます。子供たちの中から第二の酒害者を出さないためにも、より積極的に家族全体のコミュニケーションやシステムを変えていく家族治療の視点が必要なのです。



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