mixiユーザー(id:67206710)

2020年04月25日19:27

116 view

「コロナワクチン」日本が圧倒的に出遅れる事情 国家が民間に丸投げしたツケ、海外頼みの悲哀

笠井信輔アナ、退院報告で「これからが大変です」 新型コロナ感染を防ぐため自宅では“セルフロックダウン”も
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=128&from=diary&id=6061151
「コロナワクチン」日本が圧倒的に出遅れる事情 国家が民間に丸投げしたツケ、海外頼みの悲哀

           
フォト

   莫大な資金を投じて開発を加速する海外勢に比べて日本は存在感がない

  新型コロナウイルスの感染拡大で、実用化が期待されるワクチン。開発に成功すれば製薬企業は世界中で市場を手に入れることができる。それだけでなく、国の科学技術力の高さを示し、人類を救うことにもつながるため、各国政府や民間団体は製薬企業を巨額の資金で後押しする。いまや世界規模の開発レースが始まっている。

 しかし、日本の製薬企業は、「スタートライン」にすら立てていない。
 新型コロナウイルスのワクチン開発は、かつてないスピード感で進んでいる。通常、ワクチン開発には5年以上かかるといわれているが、今回のワクチン開発の多くは1〜2年以内の実用化をめざしている。

 欧米の巨大製薬企業が開発をリード

 アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソンは「今年9月までに臨床試験を開始し、来年初めには使用できるようにする」と表明。研究開発費は外部機関と共同で1000億円以上を投入し、アメリカの人口の3倍以上となる「10億回分を超えるワクチンを世界規模で供給する」と発表している。

 同じくアメリカのファイザーも4月中に臨床試験を始め、年末までに数百万回分、2021年中に数億回分の生産能力の確保に向けて動いている。ワクチン開発で提携するドイツのバイオベンチャーに対し、開発費とは別に契約金や開発進捗に応じて1000億円以上の支払い契約をしている。

  欧州では、ライバル同士が手を組むことになった。ワクチンの大手である仏サノフィと英グラクソ・スミスクライン(GSK)は、ワクチン開発で協業していくことを発表。今回の提携を「前例のないコラボレーション」と表現し、両社の技術を持ち寄って2021年下期までに開発を終わらせるとしている。

 一方、日本でもまったく動きがないわけではない。活発なのは大阪の企業や大学だ。大阪大学発のバイオベンチャーのアンジェスは阪大とワクチンを共同開発していくと発表。大阪の研究所やベンチャーも加わり、吉村洋文知事も「7月から大阪府内で治験を開始する」と意気込む。また、阪大は阪大微生物病研究会(BIKEN財団)とも共同研究していく。東京では、国立感染症研究所や東京大学医科学研究所が研究に乗り出した。

 ただ、いずれも中小や大学、研究所ばかりで、大手の製薬企業はあまり積極的ではない。

 かつて日本はワクチン開発の最前線に立っていた。「日本近代医学の父」とたたえられる北里柴三郎は、破傷風菌の培養に成功し、血清療法を確立。この研究からさまざまなワクチン開発につながった。1934年に大阪大学の敷地内に設置された現・BIKENグループは世界で初めての水痘ワクチンの開発に成功。東西で日本のワクチン界をリードしてきた。

 ところが、最近はほとんど成果らしきものがない。近年も肺炎球菌ワクチンや子宮頸がんワクチンなど、海外から輸入した「舶来もの」ばかりだ。日本でワクチン産業が落ち込んだ背景には、市場の不確実さがある。とくに難しいのが副反応問題だ。

 副反応はワクチン接種によって引き起こされる発熱や発疹などの生体反応で、ごくまれに重篤化する場合もある。ワクチンの歴史を振り返れば、患者に一定程度起きる副反応と、国全体の公衆衛生上のメリットとの綱引きがあった。副反応問題ばかり気にしてしまうと、ワクチンメーカーは開発に消極的になる。巨額の開発費を投じても、ひとたび副反応が起きれば、売上げは見込めなくなってしまう。「本当に定期接種に組み込まれるのか」「副反応のが社会的な理解が得られるのか」などメーカーはいくつもの変数を想定しなければならない。

 この状況を国が問題視し始めたのは2000年代のこと。海外で高病原性鳥インフルエンザウイルスが発生し、「新型インフルエンザウイルス」の脅威が日本でも叫ばれるようになったからだ。その頃、日本のワクチンメーカーを見渡せば中小企業や社団か財団法人ばかり。そこで厚生労働省は2006年に「ワクチン産業ビジョン」を策定し、ワクチンメーカーが発展していくための方向性を示した。

 形骸化した「産業ビジョン」

 産業ビジョンでは、ワクチンメーカーに大手の製薬企業の「一部」として、もしくは製薬企業と「連携」して、事業展開することを求めた。つまり、資金力のある製薬企業の傘下に入り、新しいワクチンを継続的に発売し、安定的に収益を得ることで「スパイラル発展させる」との目論見だ。これによって未知の感染症にも対応できる産業育成が狙いだったが、厚労省が主導していくというより、製薬企業に丸投げしたともいえる内容だった。

 産業ビジョンの効果もあってか、その後、大手の製薬企業がワクチンメーカーと連携するようになる。第一三共は北里研究所、アステラス製薬は国内ベンチャーのUMNファーマ、大日本住友製薬は日本ビーシージー製造と手を組んだ。しかしながら、いずれの企業もうまくいかず、最終的に提携を解消することになる。

 中でも苦戦を強いられたのが第一三共だろう。第一三共はワクチンの受託販売をしていたが、本格的に参入するために北里研究所と2011年に合弁会社「北里第一三共ワクチン」を設立し、さらに2012年にはワクチン大手の英GSKとも合弁会社「ジャパンワクチン」を立ち上げ、国内外の企業とタッグを組んだ。2017年度にはワクチン事業の売上高が420億円に達した。だが、それ以上に事業リスクに苦しめられた。

 まず、北里第一三共が国の承認規格に見合わないワクチンを製造したことから、自主回収に追われた。これが発端となり、219億円の減損を計上。400億円の増資で立て直しを図ったものの、思うようにいかず2019年4月には北里第一三共は解散に追い込まれた。
 さらに、ジャパンワクチンも子宮頸がんワクチン「サーバリックス」の定期接種が副反応問題が起きた。ほかにも新しいワクチンが定期接種にならないなどの誤算が続き、結局、2019年4月に解散した。

 中小ばかりに戻ってしまったワクチンメーカー

 大手製薬企業はワクチンメーカーをマネジメントできず、「産業ビジョン」がめざした産業育成は頓挫した。厚労省の「ワクチン産業ビジョン推進委員会」に委員として参加していた国立病院機構本部総合研究センター長の伊藤澄信氏はこう説明する。

 「ワクチン開発は産官学の英知を結集することが必要で、業界の意見も聞いてきたが、技術的な問題だったり、経済的なインセンティブが明確ではなかったりで、残念ながら進捗が思うにまかせていません」

 結果的に、中小ばかりに戻ってしまった今のワクチンメーカーに、今日の新型コロナウイルスに対応するだけの体力はあまりないようだ。ワクチンメーカーである旧化学及血清療法研究所から事業継承したKMバイオロジクスの広報は、ワクチン開発について、「技術的な面で検討はしているが、具体的に公表できるものはない。ただ、設備や資金が必要になるから、提携も含めて検討している」と話す。

 ワクチン製造部門を持つデンカも同様だ。「いまは新型コロナの検査キットに注力しており、経営資源は限られている」と広報が状況を説明した。

 ワクチン研究の歴史が長い北里大学は、ワクチンよりも治療薬の開発を優先している。北里生命科学研究所感染制御研究センターの花木秀明センター長は理由をこう明かす。

 「ワクチン開発には時間がかかる。北里はワクチンのことを知っているからこその判断。まずは治療薬を開発し、時間的余裕ができたうえで、第2段階がワクチンになる」

 そもそもこの非常事態の中、既存のワクチンの生産を止めるわけにもいかない。余裕のないなかで、新たなワクチンの開発に着手するのは難しい。産業ビジョンで描かれていた「スパイラル発展」どころか、悪循環に陥っているのが日本のワクチン産業の現状だ。

 国内支援の2倍以上の資金を海外のワクチン開発へ拠出

 「国際社会とともにワクチンの開発を急いでいます」

 3月28日、安倍晋三首相は記者会見でこう発言した。ワクチンの国際団体である「感染症流行対策イノベーション連合」(CEPI)や、「Gaviアライアンス」の名前を挙げ、協力していく方針を示したのだ。新型コロナウイルスの治療薬として注目される「アビガン」(富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザウイルス薬)とは対照的に、安倍首相の一連の発言からは日本発ワクチンの期待感はあまり伺えない。

 それは、国の予算付けでも浮き彫りになっている。4月7日に閣議決定された2020年度補正予算案では、「国内のワクチン開発の支援」は100億円。一方、「国際的なワクチンの研究開発等」には216億円だ。この国際的な研究開発とは、安倍首相も触れた国際団体への拠出を意味する。国内支援の2倍以上の資金を海外のワクチン開発に差し出すことになる。

 日本は2009年流行の新型インフルエンザウイルスで、ワクチンを海外に頼らざるをえなかったという過去がある。本来なら、自前でワクチンを用意するのが先進国としての責任だ。それに、新型コロナウイルスで世界規模のパンデミックを迎える中、仮に海外でワクチンが開発できたとしても、日本にそれがいつ届くのかはわからない。

 産業ビジョンでは、感染症防御は「国家の果たすべき役割」と明記し、危機管理の観点からも日本でワクチンを開発・生産する重要性を説いていた。だが、業界に丸投げしたつけが、いま回ってきている。


※記事元:東洋経済オンラインより


2 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する