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2020年02月18日21:53

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幸せて何?

仕事柄、今までたくさんの死に直面して来たが、その中でも忘れなれない家族がある。

ある土砂降りの日の夕方であった、病院の救急室に救急隊員から一報が入る 。
「車が土手から川に転落し、乗車していた女性1名、男の子(6歳)は自力で脱出するが車に取り残された3歳の男の子を今、救出中であるが搬送したい」

その後、第二報!が入る。

母親が運転して父親の入院している病院に向かう途中、誤って川に転落。母親、男の子(6歳)は自力で車から脱出でき異常なしと思われるが、3歳の男の子、救出完了したが心肺停止状態である。これから搬送しますのでよろしく。

騒然となった救急室では搬送されるまでの間、万全の準備にかかる。
医師もあらゆる科の医師が救急室に集結し搬送される前から緊張がみなぎっていた。

間もなく、ビショ濡れになった3歳の男の子が搬送された。
看護師は全身ずぶ濡れ状態の衣類を脱がせ、我々スタッフはあらゆる救命に力を注いだ。
しかし、どんな救命処置も虚しく心電図モニターはフラット状態のままであった。それぞれ医師も看護師も交代で、どの位の時間、心臓マッサージを続けたことだろう。誰も辞めようとしなかった。

そこへ入院している父親が病院からかけつけた。
やっと父親と対面できた男の子。
父親は駆け寄ると
「寒かったね!冷たかったね!怖かったね!お父さんさんが来たから、もう大丈夫だよ!」と、冷たくなった男の子の身体をしっかりと抱きしめた。
6歳のお兄ちゃんは、グシャグシャに濡れたうさぎのぬいぐるみを、男の子の顔のそばに、そっと置いた。

ここで医師は「残念ながらご臨終です」と、家族に伝えた。

たくさんの死に直面して来た我々スタッフも、生涯忘れられないできごととなった。

何も変わらなぬ日常がどんなに幸せなことなのか、時々思い出しては自分を戒める。


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