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2019年11月13日09:13

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「2dk,Gペン,目覚まし時計」が挑んたもの

ヲタク界のみならず、いわゆるマニア、ものごとを突き詰める系の人たちにとって「ジャンル分け」ってのは大切だってのはわかってるつもりです。

だってそこを厳密にしておかないと、「この道一本を選び突き進む」というのが難しくなっちゃいますもんね。

「ハードSFの傑作」なら、科学的厳密性が先行して、結果的に「小説的・文学的」に読みづらい部分が出たとしても、そこは厳密性を優先しましょう、てな話はよくあった。

だからマンガにおいても「このジャンルにおける傑作」という話し方をしないと通じないことは多くて、ビジネス上のマッチングという意味だけでなく、読み手側から積極的に細かく分けていくこともある。ってか多い。

それもまたよし。


ただ、あんまり厳密に分けられてしまうと、逆に門外漢は入りづらい。
「いかにもヲタク・マニアの世界」「なんか怖い」「一見さんお断り」
良かれと思ってやったジャンル化が、かえってドツボに入ってしまうことも多々ある。

これって、創作者側からすると痛し痒しなんでしょうねえ。


もちろん、「分かる人だけに分かってもらえばいい」という人もいるでしょうが、「もっとたくさんの人に読んでほしい、良さをわかってほしい」という人もいるから。


後者のようなひとが、現状ニッチでマイナーなジャンルを選んでしまうと、なんとか大きな挑戦をしないといけない。
軸にしているニッチでマイナーなものの良さを失うことなく、もっと一般的で普遍的なテーマに取り組むこと。


しかしこれがねえ、口でいうほどたやすいもんじゃないと思うんですよ。


だって、その一般的かつ普遍的なテーマは、もう千年単位で先行ジャンルで語り尽くされたりするから、求められる完成度etcが半端ない。


でも、それに挑戦したのが標記の作品、というわけです。
(女性同士の同性愛を基軸に置いたいわゆる「百合」というジャンルで、それをやってみようとした作品、というのはもはや基礎知識の範疇なのかな?
作者の大沢先生がインタビューでそもそもの企画意図として明確に述べられているし。)


この作品の「一般的かつ普遍的なテーマ」は、「夢(理想)を追う人とそれを補佐(現実的対応)する人のドラマ」だと、私は思っています。

これがまた歴史が古くて、それこそ、神話・伝承時代から様々な形で物語として作品化されている。
下手に焼き直すと、見る人が見れば、「あ、これはアレの焼き直し」とわかってしまう。
ほんとうにゼロから作ってみて、完成してみたら「一般的かつ普遍的なテーマにたどり着いていた」が理想である世界。

つまり、話の骨格は同じでも、読む人の心を動かし、注目に値して評価を受けるために求められるレベルの高さ、ハンパないんじゃないかと思うんですよね。



けれど、見事にやってのけられました。素晴らしい。



このマンガのエンディング近くを読んでいると、the pillowsの名曲、「Funny Bunny」の一節を思い出します。


前世紀末発表のオルタナティブ・ロックの名曲ですが、アニメファンとしては伝説的なアニメ、「フリクリ」やマンガ好きなら「SKET DANCE」から入った人も多いのでは?

https://www.youtube.com/watch?v=f92VWkYl8CI


その後幾度も様々なアーティストにカバーされ、CMソングとしても一般的認知度が高い曲で、聞いてみたら「ああ、あれか」と思うかもしれません。

https://realsound.jp/2019/10/post-430808.html


上の記事にあるように特にCMカバーで顕著ですが、



「キミの夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ 風の強い日を選んで 走ってきた」


と、戦ってきた(いる)誰かを称えるフレーズが心に残ります。


そして、聴く方としてはこのフレーズ、当然、

「では、この応援している人のことを、”キミ”はどんな風に思っているんだろう?」
という連想がわく。


これを明確にせず、しかし二人の間にはなんらかの愛情があることが曲を通して伝わるからこそ、数十年の時を越えて名曲とされているのでしょう。



「2dk,Gペン,目覚まし時計」が”マンガとして傑作”なのは、この永遠のテーマと言えるやりとりが、緻密な構成のうえ、最後の最後で、美しくも鋭く、二人のヒロインの間で交わされるところだと思っています。


最初は単なるルームメイトで同性愛者ではなく、しかもマンガ家になるという夢に突き進んでいく”まったく恋愛対象外”だった藤村かえでに、いつしか恋をしてしまった香月奈々美は、夢を追うためには恋愛感情は邪魔だとするかえでに、悩みながらも正面から恋愛感情をぶつけてみて、しかし自分なりの結果の予兆が見えた時点で、あえてこれ以上藤村に負担をおわせぬよう、自ら潔く、

「完全にふられた、という形で終わらせることを選択」する。


マンガばかり描いている藤村は生活力ゼロで、生活面では香月に頼り切りなのですが、そんなことは決して持ち出さない。おくびにも出さない。
夢を叶え、マンガ家としての確固とした地位を築いた藤村に対する香月の態度はまさに、

「キミの夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ 風の強い日を選んで 走ってきた」


と言わんばかりでした。

例えば上のアクエリアスのCMでは、このフレーズは子供の部活動を応援する親の気持ちに立ってこれが使われているのですが、香月のそれもまさに無私の境地ですよね。

純粋に恋したからこそ到達できる真剣さ。



この話はカラーそのままで単行本化されているのですが、藤村に自らの思いを切り出す香月の姿は、本当に凛々しく美しい。
マンガの絵画表現としてこれほどの絵にはめったにお目にかかれない、出色のもの。
というか、正直目を奪われましたもの。
女性同士の同性愛において「完全に外野」のポジションである、ストレートの男性である私ですが、もはやそんなの関係ないですね。

単に「美しい」だったんですよ。
思わずあの名曲、「Funny Bunny」が脳内に流れるほどに。


だから、この時点でこの作品の企画意図であった、「今はニッチなジャンルだけれども、誰が読んでも素晴らしいと思ってもらえるマンガを作ること」が達成されたことにも、何の関係もない立場である私も、なぜか嬉しく思えてしまう。

良かったですね、関係者の皆様。


もちろん、その後の香月に対する藤村の「答え」も素晴らしい。

幾度となく繰り返され、作品化されてきたテーマに、またひとつ名作が加わった瞬間でした。

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