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2019年10月07日00:23

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たったひとりのともだち

絵本は子供にもわかる数少ない言葉で人生において大事なものを教えてくれる。本当に大事なものは、たとえ言葉が少なくとも読んだ者の心を大きく動かしてくれるのだろう。


今まで読んだ絵本の中で私の心を大きく動かした絵本を1つ挙げるとするならば、この作品『たったひとりのともだち』を挙げている。以下、あらすじを示す。



主人公はひとりぼっちのカラスで、初めてできた友達は、病院にいる小さな男の子だった。友達ができたことが嬉しくて毎日男の子に会いにいく。


男の子は重い病気にかかっており、目も見えない。カラスに外の様子を尋ね、「カラスくん、学校に行く子供たちが見えたかい?」
「ぼくもいつかみんなと一緒に学校に行きたい」
としきりに訴えるのだった。



ある日、カラスは男の子から「カラスくんは空を飛べるのだろう、じゃあ…天使にあったことはあるかい?」と尋ねられる。カラスは思わず言葉を詰まらせる。



カラスは男の子に会う度に、男の子の身体が少しずつ小さくなっているような気がして胸騒ぎを覚えていた。



ある日、また男の子の元を訪ねると、男の子に
「カラスくん、今日は何だかとても疲れているんだ。帰ってもらっていいかい。」
と、か細い声で言われる。



カラスが了解して帰ろうとすると、男の子は「カラスくん、きみはぼくのたった1人のともだちだよ!」と呼びかけた。


今までひとりぼっちだったカラスは嬉しくて天にも登るような気持ちだった。そして男の子の元を去る。



それから幾日かたったある日、カラスは医者と母親か話している内容を聞いてしまう。

男の子は今まで、母親に「いつ退院できるのか」「早く学校に行きたい」と言っていたが、最近は「天使はいるのかな」と聞くようになったこと。もしかしたら病状の悪化を感じ取っているのかもしれないことを。



次の日、カラスが病院に様子を見にいくと、「がんばって!、がんばって!」と母親が男の子の手を握り叫んでいる姿を見る。



男の子は「お母さん、ぼく死ぬの?こわいよ!こわいよ!」と小さく掠れた声で、息も絶え絶えに喘ぐ。



もはや、男の子の声に誰も何も答えてあげられない。男の子の苦しみを静めてあげられる言葉などないからだ。



その時、カラスは自分の羽を一本抜き取り男の子の部屋に投げ入れた。



羽は男の子の手の中に落ちていき、男の子は羽をしっかりと掴んでこう叫ぶ。


『はねだ!てんしのはねだ!おかあさん、見て、見て、てんしがきたんだ。てんしがむかえにきてくれたんだ』と。



母親は男の子の体をしっかりと抱きながら「そうよ、そうよ、天使が迎えにきてくれたのよ」と叫ぶ。男の子は、その後天使の羽をしっかりと握りながら母親に抱かれながら息絶える。



カラスは「君は僕のたった1人の友達だった。いつまでもいつまでもぼくの友達だよ。」と声を枯らして泣きながら飛び去っていく、という話である。



カラスの一本の羽を通して、目の見えぬ男の子はそれに天使を見出した。そして救われていったのだ。文学作品として読めば、中心人物である少年が絶望の淵からカラスの羽に触れることで、安らかに天に召されていく、つまりハッピーエンドではないか。でも、この話はなぜこんなにも悲しいのだろう。



言葉は人を勇気付け、励まし、力を与えてくれることは間違いない。しかし、その言葉が届かないところにいる苦しみに喘ぐ人たちに対しては…そのことを深く考えさせるそんな絵本である。







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