主人公は人呼んで�狹效転譴涼じ渭梱瓠粉飮確簡拭法�かつては無敵とも言われた博徒だが、言ってみれば賭け事に身をやつすバカ男である。多額の借金をつくってしまった彼が、ひょんなことからお伊勢講の当たり籤を引いてしまい、途上出逢った三吉（斎藤汰鷹）というこどもと、翁丸という犬と共に旅をすることになる。品川を過ぎたところで入水自殺をはかった女、沙夜（芳根京子）を助けたところから彼女も旅の道連れとなる（第一話）。川崎の宿に泊まる一行。夕餉の膳の前でうつむいている沙夜の気分をほぐそうと、酒を飲ますが、それがあだとなった。沙夜は酒乱だったのである。
先立つものがない一行。三吉と沙夜は旅のひとびとに柄杓でもって喜捨の銭を恵んでもらう。辰五郎は唯一の彼の得意芸であるガマの油売りで稼ぐ。けっこうな人気で、そこからまた一騒動起きてしまう。
例によってぼくは原作を知らない。このドラマの時代考証、史実に忠実なようでいて、大胆な飛躍を感ずる設定になっている。脚本も原作者が書いているが、ところどころ役者間の空気・間合いがおかしくなるところがある。編集が甘いのだろうか。それは特に主演の丸山隆平の演技のはしばしに感ずる（三吉が「おれを旅の道連れにしてくれよ」と辰五郎に申し込むくだり、いったん断るものの、一呼吸あった後、受け入れるという場面の演技などにそれを感じた。確かにゆるめの演技でいいところだが、ムードはゆるめでも最低限のテンションの張りは必要である。ここ。演技自体良くないし演技指導も良くない）。連続する緊張感のない、間延びした�犂岫瓩亮茲衒�。彼は演技を何だと思っているのだろう。
全体のドラマの出来栄えにむらがある。よく出来ている演技・場面のあとに、雑な演出・演技が続くこともあり、この演出の起伏はどういう過程を経てこんなありさまになったのかわからない。演技が煮詰まる前にディレクターがＯＫを出してしまっているように感ずる場面が多い。撮影時期から考えて、収録に時間があまりなかったのだろうか。
音楽がところどころいい。大半はブルースやブギであって、この泥臭い音楽が時代の猥雑さに似合っているが、シリアスな場面にかかるムード音楽のようなＢＧＭとのギャップがひどく、統一感がない。音楽の使い方のむつかしさを痛感。
宿屋ごとに食べる膳が豪華なのが腑に落ちない。江戸期の貧しい旅。食べものなどはワーキング・ホリディのように、その土地その土地で働いたり、自炊したりして食費を浮かせたと聞いている。どうやらここらあたりは辰五郎の、渡世人らしい「宵越しの銭は持たねえ」主義を反映させた金遣いのようだ。
蕎麦について。吉原の宿で一行は蕎麦を食べるが、確かに江戸前の蕎麦は、麺を十分につゆに浸けずに啜り込むのが正しい食べ方だとされたけれど、それは江戸前の蕎麦が濃口醤油の比率の強い、塩辛く濃いつゆだったからでもある。西へ行けば行くほど、そばつゆの醤油と味醂の割合は、味醂の方が多くなってゆき、醤油をあまり濃くせぬつゆになっていったという。落語の落ちにもあるということを聞いたことがある。長屋のご隠居が今わの際に、「一度でいいから蕎麦をつゆにたっぷり浸して食べてみたかった」と言い残したという話を。
翁丸の名演？に助けられている場面が目に付く。猛犬と言われているが、自分の役目を承知しているように見える。展開が強引な場面もあるが、総じて面白いストーリィであり、起伏に富んでいて味わい深い。単純に楽しめる股旅物と言える。
最終回がもっとも面白く、一転二転どころでは済まない起伏を見た。同性愛について語る場面があり、描写がある。加藤諒の眼付きのあやしい演技と山本耕史の冷徹な演技の温度差の対比がおもしろい。
将軍のお伊勢参りの行列の前に立ちふさがって、岡崎から後を追ってきた三吉が、翁丸ともろともに無礼打ちされそうになったり、そこで辰五郎の、口八丁手八丁の大ぼらが飛び出したりするあたりの展開は奇想天外で、脚本・演出ともに、苦しまぎれのようにも思えたが、逆にこういうところが無類の可笑しさを生んでいる。将軍家斉が刺客に襲われる場面で、時を同じうして菊佐が現れるとか、伏線なしのものがたりの進行の仕方は、ご都合主義の誹りを受けそうだが、翁丸の素性が明らかになる場面に至ると、第一話でかの犬が葵の紋所の札を落とす場面を作っていることが、伏線だとわかり、刺客や菊佐の登場する不可解さもうやむやになってしまう。この奇想天外さが�倏笋雖瓩覆里如△修海縫疋薀泙梁減澎婬舛�あるのかも知れない。
演技者に関して。出演者のなかでいちばん出来のいい演技をしているのは、菊佐を演ずる山本耕史だが、このひとはほかのドラマでも似たような演技をしている。ただ、演技の抽斗が多いだけの人。小手先の技だけで演技しているこういう人を、芝居好きは芸達者と呼びこそすれ、名優とも名演とも言わない。それに反して、決して観客を心酔させるほど上手くはないが、主役を食いかねない強烈な演技を披露している、芳根京子のような演者が一方にいる。彼女は作品ごとに別人のような演技をしており、多少芸が粗削りであるが、観ていて面白く小気味よさを感ずる。
ＳＮＳでの評判に芳根京子の豹変の演技について書かれていたが、彼女の泥酔の演技は〈正気〉と、酩酊の末の（狂気）のあいだを綱渡りするような危うさがあって、〈殺気〉すら感じられ、その演技が生むスリルが見ものだと言える。素面のときの沙夜が仏のように物静かなので、いっそうそれが強調される。落差が面白みなのだ。
酔いどれの演技は簡単なようでいて、案外一筋縄ではいかない。三吉の姉・お静の祝言に飛び込んだ、泥酔の沙夜。この何とも言えぬ�犂屬琉�さ�瓩髻�意図的に描いたあたり、演出家と芳根の〈技〉の真骨頂とも言える。
旅をするにつれて、辰五郎の�狎�長�瓩魎兇困觚斉阿�、目に付きはじめる。旅は道連れ、世は情け。自分自身と博打のことしか考えたことがない馬鹿者が、この物語の進んでゆくなかで、人情に目覚める過程を描いているようにも思える。原作・脚本：土橋章宏。演出：本木克英・井上昌典。
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