竜の話
かわいそうな川のながれでありました
山の樹は伐られ 山は削られ やせ細り
山の水が そこ ここから生まれ
川は その行くえを 石灰と砂と小石とで 固められ
さあこれで 俺たちが住めるぞ と猿たちは笑いましたが
これでは ほかのけものも いきものもみな棲めません
そのとき 空には竜がいて 一部始終をみていました
春の田舎は夏になり 雨の季節になりましたが
どうなったかは 嫌だから書きません
かわいそうな森と林でありました
まじめな猿たちはせっせと働き
森や林をみな伐って 石灰と砂と小石とで 固めおえ
さて大きな街が できました
さあこれで 俺たちが住めるぞ と猿たちは笑いましたが
これでは ほかのけものも いきものもみな棲めません
誰のせいでこんなことになったのか
猿たちは 責任のなすりあい 何をやろうともしませんし
やるとしても 莫迦の一つ覚え
工事にむつかしい名前をつけ
やることといったら 石灰と砂と小石とで 固めるだけです
竜がみています
大地の悲鳴をきいているのです
竜の怒りは神鳴(かみなり)になり 竜巻になり
嵐となって 猿どもの街を襲います
竜と仲良くする方法はいくらでもあるのに
自分の利益ばかり考えているうちは
猿は莫迦だから気づきません
かわいそうな川のながれでありました
かわいそうな森と林でありました
結局川も森林も何にも悪いことをしていないのに
根絶やしにされ 石灰と砂と小石とで固められてしまいました
いまでも世界を征服したつもりでいる莫迦な猿どもなのです。
指田悠志
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