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2020年09月14日05:26

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勝手にふるえてろ

原作は5年くらい前(いや、もっと前か)に読んだことがあるのだが、主人公が処女を気にしていること以外のすべてを忘れてしまった。どうってことのない小説だった気がする。
自分の身の上話を、誰彼となく話す女性・良香(松岡茉優)が主人公。釣り人、バーガー・ショップの店員、駅員、整体師、バスの中で編み物しているごみ集めの小母さん、コンビニ店員、などなどの素性のわからない人々に、自分の恋話を話すこと自体、信じられないのだが、それには秘密がある。彼女は中学時代の想い人イチ(北村匠海)を、OLになった現在も倏鯒呂望茲辰寝子瓩世隼廚い弔鼎韻討い襦この女の子・良香の心理だけを徹底的に舐めるように描いている。気持ち悪いと言えば、気持ち悪いのだが、映画としては、こういう気持ち悪いのは、面白い。
自分だけの「物語の世界」に閉じこもるのが好きな女の子。この手の映画は、上手に作れば思春期の女の子たちの共感を呼ぶ。そういうニーズがあることを見込んでの、映画化であろうことはわかる。そういう意味で言えば、よくできた娯楽映画だ。
部屋の電気ストーブから出火する場面があるが、妄想の場面だらけで映画が出来ているせいで、この場面も現実味が薄く、彼女の夢のなかの情景なのではないかと思わせてしまう点は、この映画の欠点ではないか。この映画、どこまでが現実でどこからが妄想なのか。そういう現実認識のあやふやさに関して、かつてのアメリカ映画「ミスター・グッドバーを探して」との共通点を見い出した。あれは悪夢のような映画だが、この「勝手にふるえてろ」も、一つ間違えばああなる危うさを抱えていると言えそうな気がする。
現実と妄想の区別がつかない。統合失調症によくある症状だが、ありもしないこと、現実のさもない断片をたよりにして、自分に幸せを呼ぶ爐茲垢瓩砲靴討靴泙Δ△燭蝓△い犬蕕靴い箸い┐个い犬蕕靴い、それを失くしたらこの乙女はどうするのだろう。と、いらぬ心配をしてしまう。
イチとニの間でゆれうごく乙女心。繊細なイチとガサツなニ。繊細なのも考えようだが、ガサツな青年にもいいところがある。見た目はガサツでも、きめの細かい思いやりを見せたりすることがある。そういう現実を知っている乙女心は複雑だ。
「王子」だと思われているひとにも現実がある。あこがれの眼で見られても、言葉なしでは伝わらない。イチと良香のあいだで弾む絶滅した動物たちの話も、弾めば弾むほど、痛いのは、佳境でイチが良香の名前を記憶していなかったのが明らかになったこと。けれどもぼくもそうだ。高校時代、心から気が合うと思った女の子の名前を憶えていない。自分でも嘆かわしいが、憶えていないことは現実だ。
夢が醒めた。この現実としか思えない、「身の上話」をさせてくれていた聞き役たちとの犖充足瓩、すべて自分の妄想だと気づいた、その時、彼女が味わった深い幻滅。そしてニが自分のことを処女だと言った衝撃が追い打ちとなって、良香は心を閉ざしてしまう。
良香には友だちがいない。来留美(石橋杏奈)はいつも気にかけてくれるが、良香の心中では来留美を親友だとは思ってはいない。イチへの想いは幻想みたいなものなのに、それにすがるほかない心が儚い。
もとは単純な話が、どこをこじらせたらこうなるのか、こじれるだけこじれてこんな映画になってしまった。自分と絶滅した種族を重ね合わせて、自分の末路を思いえがく。自分との葛藤。死にたい。死にたいけれど、死ぬのは痛いから死ねない。痛くなかったらマジ死んでる。そうだな。死ぬのは痛いし、苦しい。ぼくも睡眠薬を飲みすぎたことがあるけれど、そのとき延々と地獄のような夢をみたことを覚えている。あれが地獄というものなのだろうか。だとしたら、ぼくは地獄の片鱗を味わった気がする。あんな気持ちには二度となりたくない。
妊娠話は嘘だったし、落ちは喜劇的だ。でもラストのニと良香の痴話げんかは見れば見るほど情愛に満ちていて、かわいい。真剣になればなるほど、かわいらしくいじらしく、ときどきうつくしい。そういうところを余すところなく描いた、大九明子の演出はかなり高い点をあげてもいい気がする。正直おもしろかった。Aマイナスをあげたい。
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