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2020年03月12日08:13

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コタキ兄弟と四苦八苦（とりあえず、第五話まで）

「第二話・求不得苦」
第一話は見ていないので、第二話から話させてもらう。あらかじめ申し上げるが、ＴＶの受信状態が甚だ悪く、特に深夜の民放は画面が止まったり音声が止まったり、ひどいときは両方止まったりする。それを承知いただいたうえで感想を書かせていただく。
コタキ兄弟はシャバダバという喫茶店を、キーステーション代わりにして、ここでレンタル兄弟オヤジという商売を始めた。仲介、斡旋をしてくれるのはムラタ（宮藤官九郎）というひと。店にはいつも寝ているお爺さんと、さっちゃん（芳根京子）が常時いるだけで、さほど客も来ず、暇そうな店である。二路（滝藤賢一）は水だけで店に何時間も居座る。はっきり言って迷惑行為だ。店で珈琲を飲みながら読書をしている兄の一路（古舘寛治）が注意するが、二路は話をさっちゃんに振る。さっちゃんはいま暇だから構わないという。こういうところさっちゃんがさばけた女の子で救われている。しかし水だけで居座るとは凄い神経である。昔からの馴染みでないとこういう真似はできないと思う。さっちゃんは二路の妻有花（中村優子）からの離婚届の用紙を預かっている。これは二路の〝腫れ物〟で彼は見せられただけで震え上がる。不仲の原因。これがわからない。少なくとも浮気ではない。二路は無職。主夫をしていた。妻が教員をしていて一家を支えている屋台骨。二路の見かけが遊び人にしか見えないところがいけないのだろうか。今は別居を言い渡されて一路のところに転がり込んでいる。その一路も予備校の講師を首になり、自称「休職中」。そういう兄弟である。そこへムラタがやってきた。仕事を持ってきたと言う。結婚披露宴にふたりで３時間出てほしい。時給１０００円。しめて６０００円の仕事である。
会場に来てビビる一路。ばれたらどうする。ばれないようにしなくては。そんなことを言っているうちに二路は構わず宴の扉を開けてしまう。席に座るふたり。新婦はおめでたである。沖縄出身。だが酒を飲み、話しているうちに、新郎の親族も関係者もすべてレンタル、かくいう新郎まで雇われた人で本業は俳優であることが分かった。新婦側も友人もレンタル。本物は新婦の親族だけという。本物の新郎に式場の予約直後に逃げられ、こんなことを思いついたのだ。それがわかって悪乗りする二路は新婦の両親にばれかかるが何とか持ち直した。新婦と話した。新婦はこどもを生んだらさっさと沖縄に帰るそうだ。離婚したと言って。世も末だと思ったが、このあっけらかんとした沖縄娘の姿も現代ならではなのだろうかと考えさせられた。会場は盛り上がり、いま三線を伴奏に踊りのさなかである。私、沖縄でしあわせになります。両親も、この子もしあわせにします。そう言うと、一路は「しあわせの掛け算だね」と言った。いいことをおっしゃいますね。花嫁はブーケトスをやめブーケを一路に贈った。今日は仏滅。何もない日という意味なんだけれど、何かを始める日でもあるんだと一路は言った。ありがと。花嫁は踊りの輪に帰っていった。
翌日、二路は街で有花が一路と待ち合わせして逢うところを見てしまう（第三話に続く）。「求不得苦（ぐふとっく）もとめるものが手に入らない苦しみ」。
野木亜紀子は仏教哲学のようなものから、ドラマを作り出そうとしている。基本的にドラマティックな起伏があるわけではないが、現実の面白さ・奇異さに驚かされる。会話の面白さで持たせなければいけないので、緊張感のある脚本でないといけないが、今回はそれができていなかった。役者は頑張っていた（殊に退屈な会話がつづく序盤の滝藤・古舘・芳根の演技は面白い。台詞・表情どちらもきめの細かい起伏が感じられ、それなりに見せたが、いかんせん脚本がつまらない）。演出も工夫が感じられない。最近山下敦弘の「リンダリンダリンダ」と本広克行の「幕が上がる」を続けて観たが、前者は後者に比べて迫力、メリハリ不足、淡々としていて、はじけるようなものが感じられないのが残念であった。

「第三話・曠夫受苦」
その夜有花と親密に語らう一路。有花は仕事とこどもだけを張りあいに生きてきたけれど、最近それがすとーんと抜けて無くなって、空虚な思いに沈んでいるという。一路に話題を振る有花。一路は応えず、有花を見つめている。応えないから有花もみつめる。知らずして見つめあう二人。遠くからそれを見ている二路。二路の心中は穏やかではない。（それにしても、タイトルバックの主演者三者三様のダンス。いちばんまともなのは滝藤賢一で、どこかで見たようなダンスである。キメの、サングラスで歯を剝き出しにするポーズも、アメリカン・コミックによく出てくる、ちょい悪おやじがやりそうな笑顔の作り方だ。一方の古舘寛治のダンスは見たことがない奇妙な振りに終始している。ただ、これもぼくの地元コンコルドのＣＭで、こういうダンスをするひとだというのは、知らない人がいないくらい知れ渡っているから、特に驚くようなものではない。面白いのは芳根京子で、ヒップホップの踊り方がわからないから、とりあえず跳ねてりゃいいか、みたいなダンスだ。だがその髪を振り乱して踊るそのさまは、とてもキュートであり無邪気そのものである。NewDaysのＣＭでも思ったが、芳根京子の表情には、ほんのかすかに「人見知りの女の子」が見せる〝怯え〟のようなものが見て取れる。観ていて男であるぼくが、たまらなく保護本能をくすぐられるのは、それが垣間見られた時だ。だがその怯えの感情を乗り越え、演じようとする、ある種のとてつもない〝勇気〟が彼女を強くしていることは間違いない。だからこそあの「64」で、あれほど大胆な演技ができたのだし、「チャンネルはそのまま！」でのあの、爆発的名演技にもなったのだと思う。）
シャバダバで例のごとく兄弟が入り浸っている。二路が腐っている。一路が有花を「さん」付けで呼んだから気に入らないとか、さっちゃんにも「さん」をつけたから、女なら誰でもいいのかとか、ひどい言いがかりなのだが、まあ無理もない。出て行こうとする二路を引きとめようとするさっちゃん。依頼人が来るんです。
と、言っていたら来た。坂井栄太くん（望月歩）。女の子のことで相談だという。いいなと思っている子がいて、多田さんていうんだけれど、初デートが決まった。どこへ行けばいいか。お兄さんはどこへ行ったんですか。うーん、よし、吉野家。大学の時。えっ、いきなり牛丼ですか。よく聞けば、フレンチの店を予約していたのに、相手の子に彼氏ができたからデートはキャンセル。それで吉野家。二路の横槍。おい、それってデートって言わないんじゃねえの？　で、坂井くんは女の子に２つのデートのどっちかを選ぶように頼まれたという。しかし何でもかんでも女性主導で、男の側の主体性はどこにあるのか。ともかくＡは水族館。Ｂは「耳をすませば」。スタジオジブリの名作アニメを坂井くんのアパートで観る。いや、それは。いきなり二人きりになるのはマズいんじゃ？と一路。紛糾するから、兄弟でプレゼンをやることになった。だが、一路の論理はくどくどと重複が多く、時間切れ。５回のデートを経て初心者マーク。そうですか？　恋愛にセオリーなんかあるんだろうか。ぼくはそんなものはないと思う。一方、二路は、「お魚を観るより、部屋で彼女といちゃいちゃしたい。以上」。要は相手をどのくらい大切に思っているか否か。自宅デートではそれが試されるのだと思いますが？　自分の自制心が試される時、もちこたえられる自信がないなら、水族館デートにすればいいし、彼女を大切に思うのであれば「耳をすませば」にすればいい。言っておきますが、「耳をすませば」は、宮崎駿の右腕だった近藤喜文の監督デビュー作であり最後の監督作品。主人公をみつめるあたたかい視線を感ずる大変ハートフルな映画です。こんな映画は宮崎駿にも作れなかった。
デートってもんは彼女とするもんだろ。一路というひとは根本から間違えている。お互いのことを知らないからデートするわけですよ。デートを重ねてゆくうちに親密になり、将来のことを考えはじめたりする。恋愛ってそういうもんでしょ？　そういうことだと思っていなかったのかな。
化けの皮が剝れましたね。一路は恋愛経験がほとんどないために、デートをそういうもんだと履き違えている。
坂井くんが兄弟の意見の紛糾を見て言いだした。デートやめます。ぼくはもういい。女なんか相手にせずに生きてゆきます。
そこでさっちゃんがひと言。この兄弟たちに意見を左右されちゃだめ、安易に結論を出しちゃダメ。多田さんは？　傷つけることにならない？　水族館でも、自分の部屋でも、楽しく過ごせればいいんじゃないかな？　最後にさっちゃんが握手しようと手を出すと、多田さんに悪いからといって、さっちゃんの手を握らなかった坂井くん。いいとこある。
兄弟差し向かいで話し出す二人。いつから有花と逢ってんだよ、と二路。すると一路は言う。二路。お前は昔俺があとで食べようととっておいた、「さがや」のもも焼きを食べやがった。それでさっちゃんが訊いた。もしかしてそれが、勘当の理由？　そうですよ。
いやしかし、ちっちゃい。何という了見の狭さだ。男って言うのはもっとでっかく構えるもんだ。多少のことは気にしない。一路は自分の顔が悪いの、冗談が言えないので、モテないと思っているのではないかと思うが、実際には全然違う。その、男としての度量の小ささ、器の小ささが問題なのだ。
有花に逢う二路。有花が一路に逢っていたのは、お金を借りていて、毎月それを返していたせいだとわかった。二路は口ばかりで実行が伴わない。なんとかなるといって、いつも何とかするのは私の方だった。六花が留学するのに、どのくらい家計に負担がかかっているのか何も知らないくせに、極楽とんぼ然としている。顔も見たくないと思うのは当たり前だ。
「曠夫受苦（こうふじゅく）伴侶のいない苦しみ。」

「第四話・死苦」
終末論者の話だと思ったら、違っていた。
３ヶ月後に世界が終ると信じて疑わない島須弥子という女性。ふたりでいるとすぐに喧嘩を始める兄弟に喝を入れる須弥子。未だろくに依頼が回って来ず、閑そうなコタキ兄弟を月金の週２回、３ヶ月の長期レンタルで借りることにした。自分でやるのは疲れるといって、カーディガンを買いに行かせる須弥子。次はジグソーパズル。そのように行動を共にしているうちに、一路まで洗脳されてしまう（この場面。古舘寛治の演技が真に迫っていて、何か、物の怪にとりつかれたような、一種異様なムードにそまった。深夜ドラマ特有の展開に、思わず「おおっ」と驚かされた）。一路は何とか終末論を覆すべく、ネットで調べものをし、ひらいてはいけない終末論詐欺のサイトをひらいて入会しようとしてしまう。アニキそれ、詐欺だぜ。なぜ終末論を覆すために高い入会金が必要なんだよ？　意味わかんねえ。
終末論。実はぼくも独自の終末論を胸に抱えています。ぼくの終末論は、他の生きものはたぶんかなりの可能性で生き残るし、新種の生きものも登場し繁栄しますが、人類だけが種が絶えてほろぶと言うもの。いつごろかというと１０００年ほど先。１０００年先の地球には人類は残っていません。絶滅危惧種と化して、地球上から消えてゆきます。代りに新しい種族が突然変異のように出現し、かつての人類と同じように繁栄を極めるでしょう。歴史は繰り返すのです。
次の用件は、意外なものだった。末期がんの患者が最期を迎えるための別荘？（ホスピスではないようだ）「世界が終る」って須弥子だけの話であった。須弥子は財産をすべて処分し、余命２ヶ月の日々をここで過ごす。金を湯水のように惜しみなく使ったのも、人生を達観する思いがあったからだろう。死に対して後ろ向きなんかじゃない。むしろ前向きだ。後ろ向きなひととは、余命を宣告されて自殺してしまうような、小心者の短絡的思考しかできないひとのことだ。
海を見ながら一路が、卓子の前の椅子に座る須弥子にお茶を淹れた。茶柱が立った。ここ、ちょっと違和感がある。須弥子が飲むとしたらまず煎茶だろう。番茶は庶民の飲むお茶。お金のある人はまず飲まない。けれども煎茶は丁寧に葉を選んで精製するので、茶柱が混じることはまずない。混じったら消費者からクレームがつく。高価なお茶なのだから当たり前だ。番茶や棒茶なら軸の部分もつかうから、茶柱立ちまくりである。つまり煎茶で茶柱というのは、よほど運が良くないと起こりえないこと。相当にラッキーなことと考えていい。ここは野木亜紀子が意図的に作ったシーンと考えられる。
小学校の卒業式の日、理科室にあった小さな水晶玉を盗んだことを告白する須弥子。夕日にかざしたら綺麗だろうな。そう思って海まで走り、夕焼けにかざした。けれども罪悪感に駆られたのは、その水晶玉が綺麗じゃなかったこと。盗んだことの露見をおそれたあどけない須弥子は、水晶玉を海へ投げた。完全犯罪成立。けれども今になって思えば、こんな病気に罹ったのは、あの時のことが元なんじゃないか。罰が当たったんじゃないか。そんなわけはないけれどそう思いたい自分がいる。だって誰かを心ないひと言で傷つけた因果で、報いを受けたとしたらやりきれないもの。私だけがこの世から消えてしまうのね。海はうつくしい夕焼けに包まれていた。
夜。人類がおわる予言をつげる○○族（字幕が無いし、聞き取り不能）の言い伝えを須弥子に告げる兄弟（この場面。たびたび画面も音声も飛び、聞き取り不可能でよくわからない）。思わず笑いがとまらなくなる須弥子。
須弥子が死んだ。葬儀らしきものも行われず、香典も拒否。彼女らしい死に方と言えばそうだ。最期の１ヶ月。須弥子は兄弟にも逢おうとしなかったという。遺言に、遺灰を海へ撒いてくれと告げた須弥子。ムラタは意味が解らなかったようだが、兄弟には思い当たるふしがあった。間違いない。
人間を見つめる目。言葉にはつくせぬ思い。それを感じた。人生の果てには必ず死がやってくる。生きて笑っている人の死に顔を想像したことがある。そういうことをしてみると、どんな人の人生も、哀れで悲しいものとなって目に映る。にんげんとは何という哀しい生きものなのだろう。
「死苦（しく）死んでゆく苦しみ。」
「第五話・愚慮弄苦」
一路の家。二路は電話中。彼の蒲団の周りやダイニングには、ジャンク・フードやカップ麺の類の食べ散らかしが散乱している。一路はそれを苦々しそうに見、トイレに行って用を足そうとするが、トイレットペーパーがない。二路の電話はまだ続いている。話を聞くと相手は海外に留学中の六花（二路の愛娘）だ。電話が終って兄弟げんかのさなか、仕事の依頼の電話が来た。シャバダバに集合。依頼人は苗字が後藤ということしかわかっていない。まだ来ていないことをいいことに、一路はさっきのお説教の続きを始める。自分ちではきちっと生活のできるお前が、なぜ俺の家ではああもだらしなくなれるんだ。少しは俺の気持ちを慮（おもんばか）ってはどうだ。そんなことを言いあっていたら、店でいつも寝ているお爺ちゃんが勝手にレジのところへきて、レジスターを開けた。あぶない、あぶない。そんなことしたら後ろに手が廻っちゃうよ。やっとのことでなだめすかし、もとの席に座らせる兄弟。二路が子守唄のかわりに、まど・みちおの「ふしぎなポケット」の歌を歌いはじめる。この歌が、きょうのコタキ兄弟が巻き込まれる珍事のキーワードになっていることに、まだ誰も気がついてはいない。
そこへふたりの中年の女性客がやってきた。レンチンピラフを頼んだ。水を出すお爺ちゃん。あの、まだ店の人が帰ってきていないんで、と、兄弟が説明するが、二人連れはお爺ちゃんを指さして、店の人よ、このひと。と、平然としている。さっちゃんのことも初めて聞いた。もともとここにいた人ではなく募集の張り紙を見てやってきたという。鮮烈デビューだったらしい。そこへさっちゃんが帰ってきた。タイム・セールの買いものに行ってきたのだという。買いものを付き合ってくれた青年に、デートの御飯を誘われるが、友だち御飯なら付き合うけれど、それ以上の関係は無理です。そう言われてひきさがる若者。さっちゃん。強者である。問題はそのあとだ。さっちゃん、誰もレジを見ていないのをいいことに、レジの小銭の箱の下にしまってある一万円札を３枚、気づかれぬよう自分のエプロンのポケットに入れた。えっ？　さっちゃんが泥棒？　そんなバカな。わが目を疑う一路。
後藤は未だ来ない。依頼人の来ないのをよそに、展開する心理劇。さっちゃんの犯罪をどうやって諫（いさ）めればいいのか。苦慮する一路。三河屋が集金に来たが、レジにあるはずの３万円がなくて支払えない。お爺ちゃんのひと言で事件発覚である。だが、ドラマとしての見ものはこの後だ。一路、二路、そしてさっちゃんの誤解が、乱麻のように絡み合い、もつれあう。誰一人として真相にたどりつけない可笑しさ、真実を知っているのは、観客である視聴者だけなのだから、このアホらしい演技バトルの可笑しさは、真に迫れば迫るほど、可笑しさが方々で爆発を始める。一路は帳尻をなんとか合わせようと、わざわざ銀行に駆け込んで、お金を全財産（７万くらい？）おろし、シャバダバに戻ると、コーヒーカップを故意に割り、弁償すると言って、１万円出した。コーヒーカップを仮に３０００円ということにして、７０００円のお釣り。そこで一万円札をレジの底に入れようとするが、さっちゃんは仰天。さっき引き出したはずの３万円があるではないか。これ、すべて一路のしわざなのだが、さっちゃんはそんなこととは露知らず。私、タイムスリップした？　そんなはずは。と、さっちゃん、エプロンのポケットを触る。あれ？　時をかけたなら、あるはずの無い３万円がある。じゃあ何？　こっちの３万円は。わからない、いくら考えてもわからないよ。考えてもわからないなら、考えるのはやめよう。とりあえず、回～収っ。と、またポケットに入れてしまうさっちゃん。それを見て、嘆かわしい視線をさっちゃんに投げる一路だが、だったら最後の手段、残りの４万円をレジに入れようと財布を見ると、あるはずの４万円が消えている。愕然とする一路。二路が一路の〝犯罪〟を食い止めようと、兄の財布から４万抜き取ったのだ。
あることを思いついてやってみるさっちゃん。「ふしぎなポケット」のようにポケットを上から叩けば、レジのお金が増える仕組みなのでは？　そこで、３回叩いてみると、レジのお金は３万円どころではなくなっていた。半端なお札までレジに入っていたのだ。さっちゃんはなおも叩くが、それ以上は叩いても撫でても、増えなかった。？？？
日が暮れてから銀行のＡＴＭに売上金を入れに行くさっちゃん。入金は10万円。そのあとで例の「さがや」のやきとりを買いに行ったところ（〝もも焼〟って600円もするんですね、高っ）、さっちゃんがあんな真似をした〝真相〟が明らかに。三河屋が方々で、要らないものを老人たちに売りつけているのだ。シャバダバもその標的になっているから、店になるだけお金を置かないようにその都度回収している。賢いさっちゃんである。さっちゃんにはある〝野望〟があった。ゆくゆくは自分がシャバダバのオーナーになって、店を切り盛りしてゆくというのが、彼女の将来設計である。それを「さがや」のおばさんに初めてカミングアウト。おばさん、さすがに開いた口が塞がらないといった顔である。
あ、後藤さん。話が紛れに紛れ、〝本筋〟になるはずの話に行かなかった。くだんの後藤さんはまだシャバダバでくすぶっていた。広告のポスターではサングラスをしていたため、レンタル兄弟オヤジが一路と二路だとは思わなかったらしい。後藤米吉さん。シャバダバでいつも寝ているお爺ちゃん。オーナーである(笑)。
今回のお話で、やっと物語が軌道に乗ってきた気がした。脚本もいわゆる〝乗ってきた〟感にあふれている。こんな言い方はおかしいが、野木亜紀子も書いていて、指がしなったのではないだろうか。今回の心理劇。心理劇の面白さを、とことん堪能した。最高の出来栄えと言えるのではないだろうか。
「愚慮弄苦（ぐりょろうく）・愚慮に翻弄される苦しみ」。

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