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2020年02月24日06:11

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こんな夜更けにバナナかよ

ひと言でいうと、身体を動かせない病気、「筋ジストロフィー症」に罹ったひとりの毒舌の青年の、明るい闘病生活を描いた物語である。
北海道、札幌。鹿野くん(大泉洋)という障がい者のもとに美咲ちゃん(高畑充希)という女子大生がやってきた。田中くん(三浦春馬)という北大医学部の医師の卵の恋人なのだが、鹿野くんはこの二人に深夜まで付き合わせ、おまけにバナナ買ってきてなどと言う。午前2時である。大都会札幌とはいえ、売っているかどうか。それでも買ってきてくれた美咲ちゃんに、鹿野くんは一目惚れしてしまったようだ。
しかし、わがままである。しかも毒舌。なんでこんなに自分本位なことを平気でベラベラしゃべれるのか。目に余る言動に、美咲ちゃんはキレた。
「あのさ、鹿野さんは何様? 障がい者なら何言ってもいいの?」
美咲ちゃんは怒って出て行ってしまった。そのときは平然としていたが、鹿野くんも気になって、手紙を書こうと田中くんに代筆を頼んだが、これが赤裸々なラヴレター。デートのお誘いである。美咲ちゃんは田中くんのキスを条件にOKを出した。
その日は田中くんも同伴でBBQである。バンドの演奏を聴いていたら急に催し、便を漏らしてしまう。けれども、これがきっかけになって美咲ちゃんと親密になってゆく。
拡張型心筋症。鹿野くんが患っているもうひとつの病である。明日にも入院をという担当医師(原田美枝子)だが鹿野くんは納得しない。鹿野くんには夢がある。自立した障がい者、エディ・ヤングに逢いに行きたいのだ。そのため、毎日英会話を練習している。
この鹿野くんの言動で感心させられるのは、そのスーパーポジティブな生き方である。障がい者は前を向いて生きるんだ。そうでないと、病の重さに押しつぶされてしまう。それともうひとつ。普通障がい者というものは、周りの人に気を遣って、言いたいことも言えなくなってしまうものなのに、「言わなくては伝わらない」と、言いにくいことも言える、物怖じしないその生活態度である。鹿野くんは障がい者だが、大人だ。田中くんと違って、美咲ちゃんがほんとうは女子大生ではないことを白状した時、ちゃんと受け止めてくれた。つまり立場の違いはあるが、人間が見た目以上にできている。この映画に奥行きを感ずるのは、そういった鹿野くんの人間像を、しっかり掘り下げて描いているところにある。
大泉洋。熱演である。というか、こういうパワフルな人間を演ずる時の彼は無敵である。高畑充希の美咲ちゃんも、年頃の女性の心境の変化、心もようをヴィヴィッドに演じて素晴らしいものがあった。感服した。この物語。実話だというが、事実は小説より奇なり、とはこのことだ。思っていた以上に見ごたえのある、いい映画だった。
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