シュークリームから考える未来

　シュークリームを作ろうと思った。
　オーブンに水蒸気をなんやかんやしながらいい感じに焼き上げる便利なシュークリーム専用のダイヤルを発見したからだ。シュークリームが膨らまない家系の出身の私でもこの機能さえ使えば綺麗なシュークリムがつくれるだろう。
　そう考え付属のレシピを熟読し、材料をそろえた。オーブン付属のレシピによればこのシュークリームはレンジ機能で生地が作れるそうだ。
　科学は日々進歩し、人間の努力など届かぬ高みに到達しようとしている。このまま科学が進歩し続ければ機械がすべてを料理する日が来るのだ。リュバン状やきつね色、適量など主観に頼る曖昧なレシピ本は資料館や大きな図書館の片隅にのみ存在する。献立を考えたり、材料をそろえたり、食材を加工することも必要ない。コンピュータがすべてを計算し、必要な栄養素を必要なだけ盛り込んだメニューを最も美味しく調理してくれる。そもそも、目の前に並ぶ料理が何という名前なのか、どんな材料が使われどのように加工されたものなのか私にはわからないのだから。
　そんな未来に思いを馳せながら焼き上がりを待った。膨らんでいなかった。なので人間は明日の献立を考え、材料を加工する必要がある。簡単お弁当とか言いながら下味をつけたり一度焼いた肉をフライパンからどかしたりするレシピ本も見る。お弁当を作らないといけなし、作り置きもしないといけない。仕事にもいかないといけない。