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2019年11月13日21:33

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虚無

倉庫で仕事をしていると、職場のアルバイトの大学生が携帯の画面を見せてくる。「これって高橋さんみたいですね」と言う。スクリーンには黄色いでぶのキャラクターが写っていて、キャプションに「虚無虚無プリン」と書いてある。

「なんで生きてんだろ」

と、その吹き出しに書いてある台詞を読んで、画面から顔を上げると彼女と目が合った。彼女は変な笑い顔で「こないだ高橋さん、独り言で、誰か殺してくれ、とかなんとか、って」と言った。それから他にも似たような変なキャラクターの絵を見せてくれた。教育テレビのニャンちゅうが、君が欲しい、と叫んでおり、ウォンちゅうと名前が変えられていた。私も、変な笑い顔をして、その後どうしたのだったか、何か適当に二言三言いって、たしか倉庫を出たのだと思うが、思い出せない。
俺は、本当に殺してくれなどと言ったのだろうか。面白いやりとりのような気もしたが、内心ぞっとした。かわいいキャラクターが、シニカルなセリフを言うのも、諧謔の妙があると言えないことはないけれど、それにしても何かとても不吉な感じがあった。ただの冗談が絵になったものだと思おうとした。だが、その嫌な感じは、薄い皮膜のように心に張り付いて、容易に剥がれなかった。そうして、自分が本当にそんなことを言ったのか、言わなかったのか、いつまでも思い出せなかった。
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