あの人に似ている
貴女は僕の改まらない筆ぐせから
離れた誰かをコラージュして
僕は貴女の後ろ姿の佇まいに
失った誰かをモンタージュする
葉月の寝苦しい熱帯夜には
青白く浮かびあがる水槽があって
赤い金魚が泳ぐのを、僕ら
異空間に隔てられて鑑賞している
不意に貴女があの人だと思い込んで
水槽の向こう側に駆け出したい
衝動に見舞われるけれど
その顔にかかるベールを剥ぎ取りたい
欲望に乗っ取られてしまうけれど
所詮そんなはずはなくて
まさかそうできる術もなくて
淋しさは跳ね返ってくるだけだから
お互いにまた辛くなるだけだから
こんな風に支えるしかない僕らは
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