先日、NHKで「みんなのうた」の60周年特番をやっていました。私の生まれる前からやっていたのですからすごいものです。子どものころに見た懐かしい歌も出てきて楽しめましたが、特に、「山口さんちのツトムくん」は、ちょうど私が小学校三年生のころ大好きだった歌なので、感激しました。幼稚園くらいのユミちゃんが、仲良しのツトムくんが、突然変わってしまった戸惑いを歌った歌です。番組で、誰が歌ってくれたか忘れましたが、何人かがステージにあがり、スクリーンのユミちゃんと同じ動きで歩いていたのが楽しかったです。
山口さんちのツトムくん
このごろ少し変よ どうしたのかな
広場で遊ぼって言っても
絵本を見せるて言っても
いつも答えは同じ
「あとで」
つまんないな
「みんなのうた」が始まって以来の大ヒット曲だそうなので、ご存知の方もきっと多いことでしょう。結局、ツトムくんが、元気がなかった原因は、お母さんが田舎へ行っていて、家にしばらくいなかったことが原因でありました（笑）。田舎のおみやげの「摘んだばかりのイチゴ」を二人で仲良く食べてハッピーエンド。ほのぼのとした歌ですね。
ところで、この歌に続編があるのを、みなさん、ご存知でしょうか？「山口さんちのツトムくん」だけなら、ほのぼのとした良い歌だなで終わってしまったかもしれませんが、この歌の続編が出て、セットになったことから、これらの歌は私の中に、一生忘れられない名曲として心に刻まれたのです。
今日はユミちゃんがね
遠い町へ 引っ越しだよ
僕は ママと二人で見送りにきたんだ
おてんばのくせにね
ユミちゃんの目は涙色
僕は 男の子だからね
ママ 泣かないんだよね
むこうへついたらね
きっと 手紙を書いてよね
ぜんぶひらがなで書けば
僕も読めるからね
お正月になったら
ユミちゃんの うちにいくんだ
僕は こづかいをためてね
ママ 会いにいくんだよ。
続編「ユミちゃんのひっこし」です。私は、この二曲を続けて聴くと、今でも甘酸っぱい切なさが胸の中に湧いてきて、目頭が熱くなります。私の少ないお小遣いをさらけだしてでも、ユミちゃんの家に行く旅費を全額出してあげたい。そんな気持ちにかられます。
私も、小学四年生のころ、竹馬の友との別れがありました。年は相手が一つ上でしたが、同じ町に住み、毎日同じスクールバスで学校に行き、近所の空き地で毎日遅くなるまで野球をやった仲でした。野球といっても、草深い田舎のことですので人数がいません。せいぜい3対3の三角ベースです。
今はサッカーが人気ですが、私が子供のころ、将来の夢はみんな野球選手でした。憧れの選手は、巨人軍の一本足打法の王貞治であり、阪神タイガースの田渕幸一でありました。
ついでに言いますと、巨人のピッチャーは堀内。キャッチャーは吉田。リリーフは新浦でありました。
一つ上の彼はサウスポーのピッチャーで、私はキャッチャー。親が呼びにくるまで、夕陽を浴びて白球を追ったものでした。
そんな竹馬の友が、お父さんの都合で突如転校ということになりました。私はただ「えっ」というだけで何もでてきませんでした。今まで、毎日いるのが当たり前であった友達が、明日からずっといなくなる。この状況をすぐ納得できるほど、私は大人ではありませんでした。
「お金では決して買えないものを一つあげろ」と言われたら、私は文句なく「友だち、親友」をあげます。子供にとっては、なおさらでありましょう。
大人と違い、あまり世間の広くない子供にとって、一人の友達ほど大切なものはありません。そんな仲の良い友達との別れは、何よりも辛いものです。だからこそ、去っていった友だちの記憶は、どんな思い出よりも美しく、本人の心の中でキラキラと輝いているものです。
いわんや、「山口さんちのツトムくん」では、去っていくのは女の子。初恋というには、あまりに幼い、異性への憧れの芽生え。いっそう、心にやきついたでありましょう。
久しぶりに懐かしい曲をたくさん聞いて、思わず童心に帰りました。昔の歌を聴いて思い出すのは、決して、そのメロディーだけではありません。その曲が流れていた時代の、あの日、あの時、あの友よ。そのすべてが懐かしい思い出となって甦ってくるような。だから、人々は「なつメロ」が好きなのでしょうね。
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