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mixiユーザー(id:66528125)

2019年09月10日21:35

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殴ってくれて、ありがとう

とある芸を極めた身。

時にはその芸でボランティアもやる。
一時期、とある児童施設でボランティアをやっていた。

親に捨てられたり、育児放棄の果てに辿り着いたり、虐待から保護された子供達が寝食を共にする施設。

芸を披露したり、時には教えたりしていた。
そこの所長さんと知人同士と言う縁で呼ばれた。

かく言う俺も虐待家庭育ち。
この施設にいる子供達の気持ちは職員よりも痛いほど伝わってくる。

だからこそ子供達に伝えねばならない。
どんな地獄で生きようと、どんな暗闇の中で生きようと光は掴めると!

真っ直ぐ生きる事の大切さを伝え続けねばならない。

そしていつしか職員よりも子供達と仲が良くなった。
ここの子供達、笑う事が多くなって良かった。

しかしある日、殴り合いの騒動が発生。

15歳の男の子と、21歳の男性が正面切っての殴り合い。
事の発端は男性が男の子の心の傷を抉るような発言をして、更にその傷に塩を塗るかの如く罵ったのが原因。

その男性とは、俺だ。

その日、施設に男の子の親が来ていた。
男の子を虐待した挙句に育児放棄したクズ親。

あろう事か既に再婚して別の人生歩んでるとか。
それで新たな人生に元妻の子供は不要と言いやがって、ここか別の施設に預けると言い出したのだ。

ちょうど休暇で施設に遊びに来ていた俺はその現場を目撃してしまった。
あの子の受けた痛みを、あの子が負ってる傷の半分でもこのクズに味あわせてやりたいと…殴り飛ばしてやりたかった。

でも、それよりも先にやらねばならぬ事があった。

あの男の子は自分が捨てられたのだと察した。
15歳だと気付いてしまうか。

男の子は泣いて泣いて、世界を恨んで憎んで…
自殺まで本気で考えていた。

そんな男の子にかけてやる言葉は…
「おいおい、何泣いてんの?男なんだから見っともない事すんなよ。それにあんなクズ親、願い下げだろ。消えてくれて清々するってもんだろ?最初から親なんていなかった事にして生きれば気も楽になるってもんだ」


それで殴り合いに発展。
これで良い。
これで良いんだ。

子供の頃、友達の家庭を羨んだ事がある。
そして友達を妬んで憎んでいた。
俺の家はあんなに地獄なのに、友達の家は笑いと光に満ち溢れている。

何で俺だけ地獄で生きなきゃいけないんだ。
何で俺だけ…何で…。

優しい世界でのうのうと生きる友達が妬ましくて、憎い。
でも、そこで友達に暴力を振るうと…友達との関係だけでなく大切な何かを失ってしまう気がする。



この男の子もあの頃の俺と同じ気持ちだろう。
何で自分だけ不幸な目に遭わなくてはいけないんだと。
世界を恨んで憎んで、他者が妬ましくて…
そしていつか、こんな暗闇に産まれてしまった自分自身を憎むようになる。

もっと怒れ、もっと憎め、もっと恨め…
その全てを傷口に塩を塗って罵る目の前の男にぶつけていけ。

全部、受け止めてやる。


数分の激しい殴り合いの末、職員達がために入って騒動は沈静化した。

俺は警察には突き出されず、施設を出禁になった。

騒動の種火を作ったのは俺と言う事になって、その俺が消える事で全て丸く収まった。
子供達には幻滅され「そんな酷い事言う人とは思いませんでした」と後ろ指さされながら施設から去った。


数年後。
所長が真実を語った。
所長は全てを分かっていた。
だから殴り合いを止めろと職員に言わなかったし、警察にも通報せずに穏便にと事を片付けようとしてくれた。

あの男の子は年齢的に施設を出る事になった。
その時、所長が職員と子供達に真実を語ったのだ。




「これから先、辛い事も苦しい事もあるでしょう。その時は、あの人の事を思い出しなさい。」


職員や子供達、あの男の子は意味が分からなかった。


「あの人と一緒に色んな事をしてきたでしょう。あの人がペンを持つ手は?ご飯を食べる時、箸を持つ手は?あの人が右利きなのは思い出せば分かるはずです。そんな人が◯◯君と殴り合いになった時、◯◯君を殴るのに使ってた腕はどちらでしたか?あの人、ずっと左腕で◯◯君と殴り合ってました。右腕は防ぐだけに使ってました。それにあの人は元不良なんです。あの殴り合い全体が喧嘩慣れしてる元不良の動きだと思いますか?◯◯君が絶望感や憎しみや怒りに囚われないように、悪役を演じてたんです。それにあの人は◯◯君に殴られ続ける事も出来たでしょう。◯◯君をそれでも…左腕でも殴ったのは◯◯君の為です。殴り合いの原因をあえて作ったのはあの人でも、◯◯君が一方的に殴っていたら罪悪感でいつか◯◯君が押し潰されてしまうのではないか?との優しさだと思います。あの人の事だから、自分も殴ったからお互い様と言うでしょう。そして施設を去る時、あなた達はあの人を非難する言葉を言いましたよね?あの人は黙って去る事も出来た。それでも、あなた達に大人気なく罵るような悪口で言い返してましたよね。それも、いつかあなた達が罪悪感で苦しまないようにって優しさからです。あの人なら自分も酷い事言ったのだから、お互い様と言うでしょう。それがあの時の真実です」



数ヶ月後。
当時の子供達と再会。

子供達は泣きながら感謝と謝罪をしていた。
感謝される謂れは無い。
俺はあの子の傷口をえぐるような事をしたのだから。
非難された時、子供達の傷口に塩を塗るような悪口も言った。

だから感謝も謝罪も必要ない。

むしろ大人気ない事やった俺に非がある。
あんなやり方しかできなかった。
それでも子供達は笑って俺を迎えてくれた。






今となっては施設を出て散り散りになってしまっているが。
あの子達に大切な事が何かを伝えられただろうか。

あの子達は真っ直ぐ生きられているだろうか。
日の当たる場所で人並みの幸せを掴めているだろうか。
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