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2019年06月25日07:26

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高い城の男

オススメ540。"『彼は前からそうやって住んでたらしいのよ。そこでこの本を書いたんだもの。その屋敷の名前はね(中略)〈高い城〉ーそれが彼のつけた愛称なの』"1963年ヒューゴー賞受賞作であり、amazonドラマ化された本書は、複数視点、同時進行する物語が虚実が混在する不思議な読後感を与えてくれる。

個人的には、話題になったドラマを観る前の予習として、また『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(映画ブレードランナー原作)の著者が、第二次大戦で枢軸国側が史実と違って勝利した世界をどのように描いているかに興味をもって本書を手にとりました。

さて、本書ではドイツと日本により【冷戦的な分割支配を受けているアメリカ】を舞台に、アメリカ人、日本人、ドイツ人といった様々な登場人物がナチスの後継者をめぐる争いに、それぞれの事情で巻き込まれつつ【物語世界とはさらに逆(つまり史実的な)の世界】を描いた禁書扱いの小説『イナゴ身重く横たわる』も読みふけっている。という二重構造あるいは最近流行りの【並行世界もの】となっているわけですが。アメリカ人美術商から見た日本人の描写にはやはり、多用される易経なども含めて【偏りや混乱が感じられて】何とも複雑な気持ちにさせられました。

また登場人物の1人、ジュリアナが『イナゴ身重く横たわる』の作者に会うために刹那的なロードムービーよろしく旅に出かけるシーンには、私にはどこかナボコフによる『ロリータ』(1955年)による復讐の為に小説家を訪れるシーンが思い出され、『オンザロード』ではありませんが、アメリカ文学らしい【どこまでも続く道路】の雄大な光景が頭から離れませんでした。

著者のファンはもちろん、架空歴史や並行世界小説が好きな人にオススメ。
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