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2019年01月22日07:06

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その街の今は

オススメ387。"もらった写真のあの家と、違うのはわかっていた。路地との位置も違うし、玄関も窓も屋根も違う形だった。だけどこの薔薇の色があの写真の薔薇の色だと思った。こんなに深く鮮やかな赤い薔薇を、わたしは初めて見た。"2006年発刊の本書は淡々とした大阪の日常と変化の描写が素晴らしい。

個人的には賛否を巻き起こしている【地下鉄メトロの改造案】(https://www.google.com.tw/amp/s/www.asahi.com/amp/articles/ASLDW5SF9LDWPLFA00G.html)の様子を眺めていた時に作中の、とある登場人物の『だいたいな、もともと大阪は芸術とか文化で発展している街なんやって。(中略)御堂筋線のホームかって、あんなドーム天井に飾り照明なんか東京メトロにないで。』というセリフを思い出して本書を久々に再読したのですが。

私自身が丁度、本書の舞台である大阪ミナミ、難波〜心斎橋辺りを2007年くらいによくウロついていた事、そして著者と同年代である事から、性別の差こそあれ容易く感情移入することが出来、今は無きソニータワーを含めて、現在も大量に訪れるインバウンド需要により、より急激に建物が入れ替わる【変化し続ける街、ミナミ】をしばし想ってはやはり懐かしい気持ちになりました。

また同時に、本書は物語としては著者らしく【特別な事は特に起こらない】(言わば街自体が主役なので)し、私と違って大阪ミナミに縁が全くなければ、描写され、あるいは語られる新旧の街の歴史は【特に響かないのでは?】と割と人を選ぶ本だと思われるのですが。個人的には"ああ、確かにこれは(同じく大阪弁でミナミに生きる人たちを美しく描いた)織田作之助賞大賞に確かに相応しいな"と【伝えていきたいミナミ】が本書には確かに在って嬉しく思いました。

かっての大阪ミナミを想い出したい誰かに、また大阪弁のやわらかさ、優しさを感じたい誰かにオススメ。
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