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2021年04月28日13:47

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伊丹十三 マルサの女(1987) (国立映画アーカイブ)

国立映画アーカイブ、特集、1980年代日本映画ー試行と新生、12本目。

Movie Walker https://moviewalker.jp/mv17607/

 久々に映画らしい映画、しかも痛快な映画を観た。

 「映画らしさ」は、まず、キャストをご覧いただきたい。山崎努をはじめ、
昭和の名優、個性派俳優がずらりと並ぶ。その男優陣を向こうに回して、
奮闘する宮本信子。その生き生きとした個性は、映画自体に強い生命感と
躍動感を与えてくれている。

 脚本が極めて緻密に構成されているので、個々の場面についての印象は
むしろ薄い。どこを取っても名シーン、または、役柄を膨らませるために必要
不可欠なシーンなのだ。それでいながら、息苦しさはなく、遊び心のバランス
が絶妙。

 板倉亮子が、査察権のない税務署員から、査察部に抜擢され、大声で笑い
ながら走るシーンは特に印象的。それまでの、小さな脱税をも見逃さず、
鋭く追及する地道な演技が積み重ねられた後であるだけに、観客も亮子の
栄転を素直に喜べる。

 それに対する権藤英樹は、亮子が徴税のプロとすれば、脱税のプロ。
足が不自由だが、暴力団や政治家との付き合いもあり、女性関係も派手。
しかし、脱税して貯めた巨額の金を、息子に全部残すことができたら、死んでも
いい、というあたり、どこかに純粋な少年らしいところを残している。

 亮子が、権藤のラブホテルの部屋を見学したあと、権藤に向かって「夢を売る
人だ」というのは象徴的だ。

 そしてやはり、この二人の奇妙に純粋な友情を語ってくれるラストシーン。
半年間、粘りに粘った、権藤は、最後の裏金を隠している隠し金庫の情報を、
以前、亮子が忘れていったハンカチーフに、血文字で描いて、亮子に渡すので
あった。この時の宮本信子の表情が母性的で素晴らしい。

 税金は「血税」とも言われる。どんな小さな不正も見逃さない亮子。
どうせなら、こういう人に税金は扱っていただきたいものである。とはいえ、
それを使う側の政治家が論外だ、というのが今の日本の現状であろう。
 
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