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2020年12月16日16:13

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稲垣浩 忠臣蔵 花の巻 雪の巻(1962) (国立映画アーカイブ)

 生誕100年、映画女優 原節子。6本目。

 Movie Walker https://movie.walkerplus.com/mv20684/

 なんとも美しい、「映画」らしい「映画」だった。東宝創立30周年
記念作で、昭和37年芸術祭参加作品。

 昔から庶民に親しまれてきた、「忠臣蔵」の物語を、稲垣浩がなんの衒い
も小細工もなく、真正面から、一大叙事詩として扱った大作。当時全盛期と
言っていい、東宝のオールスターキャストに、時代劇としての厚みを加える、
梨園からの多くの参加。
 極めて豪華で、しかも時代劇の美に徹底的にこだわった美術。

 そしてこの国民的叙事詩の討ち入りシーンを盛り上げる伊福部昭の音楽。
このサントラ盤があったらぜひ欲しい。伊福部先生の音楽は、かなり、
聴いているつもりだが、またしても予想を超える素晴らしい出来栄え。

 オールスターキャストだけあって、どの俳優さんにも短いながらも
見せ場が用意されていて、いずれも名演なのだけれど、この叙事詩を統一
しているのは、初代松本白鸚演じる、大石内蔵助。

 「討ち入り」という前例のない大事を実行しようとする、策士として、
リーダーとしての厳しさと懐の深さ、そして人間故の迷い。それらをバランス
よく一人の「大石内蔵助」という人物に造形したのは紛れもなく、松本白鸚
の演技の力である。

 特に、感動したのは、萱野三平(中村万之助)のエピソード。三平は、
主君内匠頭に起きた大事を赤穂に伝えるために早駕籠を飛ばすのだが、
その道中で一人の老婆を駕籠の事故で死なせてしまう。その敵討ちに
自分を狙ってきた、老婆の息子や娘に「討たれてやる」と約束し、
そのために、盟約から離脱する許しを内蔵助に請い、約束の時刻に、
自害する。その夜、内蔵助は、曲輪遊びの真っ最中。「今夜は三平雀の
お通夜だ」と言いながら、流れる涙を水を顔にかけて誤魔化す。
この時の白鴎の涙と表情が素晴らしかった。

 原節子は、その妻りく。大事を心に秘める夫を信じ、あくまで控えめ
に、夫と息子を支える母。お歯黒がこんなに綺麗に見える女優さんは
珍しい。

 主君の夫妻。若々しい加山雄三の内匠頭と、その妻、後の瑤泉院の司葉子
の冴えた美貌はまさに「眼福」

 そしてもちろん、吉良上野亮。八代目市川中車の掛け替えのない存在感。
年老いてもなお、自分の欲望に正直な姿は、どことなくユーモラスで、
悪辣さ、意地悪さ、だけでは割り切れない人間的な敵役を見せてくれる。

 豪傑というよりは、誠を重んじる実直な堀部安兵衛像を作った三橋達也。
豪傑の部分は、安兵衛と友情を結ぶ設定に変更された俵星玄蕃、三船敏郎
が担っている。

 登場時間は短いものの、吉良の家老、千坂兵部には志村喬。ついでに、
あんまり登場シーンはないが私的には絶対忘れられない潮田又之丞
にはハート達(複数ハート)土屋嘉男。

 花を添える女優陣。岡野と恋仲になり、吉良邸の絵図面を浪士たちに
渡すことになる大工の妹、お艶が星由里子。高田と恋仲になり、討ち入り
当日にどうしても別れられず、心中する水茶屋の女、お文が池内淳子。
司葉子さんもそうだが、女優さんたちはみな、とても美しい。

 さらに脇役陣リストは長々と続いてしまうので、ここらでやめておく
が、様々な異なる設定がある「忠臣蔵」の物語。それをまとめ上げた、
八住利雄のオリジナル・シナリオと、小さなエピソードを淡々と大きな
「赤穂浪士討ち入り」に向けて積み重ねていく稲垣浩の演出は、忠臣蔵
映画の決定版にふさわしい。

 赤穂浪士討ち入りの日には、ヘンテコなテレビスペシャルなど、
製作せず、この映画を地上波で放映するべきだろうわーい(嬉しい顔)

 
 

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