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2020年10月30日13:01

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黒澤明 蜘蛛巣城 (1957) (国立映画アーカイブ)

 生誕100年、映画俳優 三船敏郎。8本目。

 「蜘蛛巣城」、シェークスピアの原作よりも、ヴェルディのオペラよりも
この映画は素晴らしいと思う。

 Movie walker https://movie.walkerplus.com/mv24853/

 映画館での鑑賞は2回目で、DVDでも見ているので、内容についてはこちら。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1755489341&owner_id=6645522
https://mixi.jp/view_diary.pl?owner_id=6645522&id=1432627382

 この作品は、三船の最期も凄まじいが、やはり山田五十鈴の浅茅の
演技が凄すぎる。

 前にも書いているが、一番ぞくっとするのは、発狂するシーンよりも、
夫の武時に主君殺しを実行させるため、自ら、しびれ薬の入った酒を用意
するところである。

 真っ黒なバックに、シュッ、シュッと静かな衣擦れの音をさせながら
山田五十鈴が消えていき、しばらくの沈黙。その後、酒壺を持って、
黒いバックから正面の観客の方へ、またも衣擦れの音をさせながら、
ゆっくり山田五十鈴が迫ってくる…

 静かなシーンであるだけに、あの迫力は、やはりスクリーンでこそ。

 これも、以前に書いているが、浅茅が「身ごもりました」と告げる
シーンも素晴らしい。後継がないからこそ、武時も予言に従って、
一時は親友で盟友でもある三木の息子を養子に、と考えたのだったが、
その武時の思惑を一気にひっくり返す一言である。自分の実の子供が
できるなら、やはりその子に自分の後を継がせたいというのは人情だろう。
それにつけ込んで夫を親友殺しに唆かす妻。
 浅茅の妊娠と死産は、原作にもオペラにもないが、この設定を付け加えた
のは本当に慧眼である。

 最初と最後で、霧の中に立っている「蜘蛛巣城址」という碑。謡曲の
謡のような佐藤勝の音楽。人間の野心も業も全て飲み込んで、時は
流れていく。映画ならではの始まり方、終わり方だと思う。
  
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