mixiユーザー(id:6645522)

2019年02月27日14:57

190 view

堀川弘通 「白と黒」(1963) (ラピュタ阿佐ヶ谷)

 ラピュタ阿佐ヶ谷。「演技者・小林桂樹」特集。

 Movie Walker https://movie.walkerplus.com/mv20853/

 またしても、Movie Walker のあらすじの記載があちこちで、映画と
異なるので、あらすじを忠実に掲載してくださっているサイトをリンクして
おきます。

 http://www.ne.jp/asahi/gensou/kan/eigahyou56/shirotokuro.html

 脚本、橋本忍のオリジナルシナリオ。ミステリとして一級品である。

 冒頭が、仲代達矢による淡島千景の迫力あふれる絞殺シーンではじまるので、
てっきり、これは仲代達矢が犯人で、それを捜査陣が追いつめる展開の
サスペンスかな、と思ってみていると、警察の捜査はあっさり、別人を星とし
て捕らえる。

 そこで、「白と黒」という題名だから、「これは逮捕された容疑者が実は
無罪で、冤罪を扱うサスペンスなのかな」と思ってみていくと、案の定、
逮捕された脇田(井川比佐志)は、最初の取り調べでは、強盗は認めたもの
の殺人は否認。ところが取り調べを進めるうちに殺人も認める供述をはじ
め、小林桂樹演ずる検事、落合は、疑問を抱く。

 送検後も補充捜査を続けていた落合(小林桂樹)は、宗方夫人(淡島千景)
と宗方弁護士の書生といっていい浜野(仲代達矢)との関係をあばきだし、
ついに、ある旅館で浜野と対決。良心にかけて真実を言ってください、と
迫る。

 ついに、「私がやりました」と「自供」する浜野。

 仲代達矢は、脇役にまわったほうがいい演技をする、といつも思うのだが、
ここも素晴らしい。「男妾」とののしられ、激情で、宗方夫人を絞殺する
冒頭もいいが、脇田の逮捕後、無実の男を死刑にしてしまうのでは、と、
良心の呵責に苛まれ、公判中に、男が絞首刑にされる幻影をみて怯える
ところ、そしてこの自供シーン。懸命に積み上げてまもって来た砂の城が
ほかならぬ自らの良心の呵責によって崩れ落ちてしまう。仲代達矢が、
エリート弁護士の脆さをいかんなく表現している。

 で、これで映画が終わったらよくあるミステリで終わったのだが、
さらに続きがある。ここから先はネタバレ、それも、知っていると、
映画の楽しみが半減するというネタバレなので、ネタバレ余白を設けます。

(以下ねたばれ)







 いいですか?






 落合は、「あやうく冤罪を防いだ正義の検事」としてマスコミに持ち上げ
られるが、1本の電話からさらなる真相が明らかになる。
 なんと、浜野が宗方夫人を絞殺後、知人から宗方家に1本の電話があり、
話し中が続くことを不審に思ったその知人が電話局に連絡。
 電話局は警告音をだし、あらためて、宗方邸に電話したところ、なんと、
女が電話にでた、というのだ。とすると宗方夫人は死んでいなかったことに
なる。

 その事実を脇田に突きつけると、脇田は、「だから始めから言ってたで
しょう。自分がやったんです」と開き直った。

 事件は二転三転したが、宗方夫人を殺した真犯人は脇田だったのである。

 落合は責任をとらされるかたちで、釧路へ左遷。渋っていた痔の手術を
ようやくうけた落合がベッドでうなっているところへ、浜野が訪ねてくる。
 浜野は多くを語らず、映画のラストシーンは、浜野の自殺を報じる新聞記事
で終わる。無常観さえ漂うラスト。

 「冤罪と思ったら真犯人」というのには私はころっとだまされました。
もともと倒叙型のミステリが好きで、犯人がわかっていて、探偵役が
追いつめていくというタイプの作品はわりと多く読んでいるほうだと思うの
ですが、ここはまずその定型を利用してさらに上をいった橋本忍に脱帽です。

 痔になやまされる「おじさん検事」の小林桂樹と、「堕ちたエリート」仲代
達矢の対照の妙、若き大空真弓の凛とした美しさ。

 フィルムの状態があまりよくなく、3分ほど切れている旨、映画館から
ことわりがありましたが、そんなことはまったく気になりませんでした。

 暗めの白黒画面は、終始、運命に翻弄される仲代達矢の不安な心中を
表して効果的で、武満徹の音楽も素晴らしかったです。

 本当に、いい映画はまだまだ埋もれていますねえ。
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する