mixiユーザー(id:66133414)

2020年05月25日08:44

73 view

山伏尾根

御神楽岳湯沢流域は、水晶尾根、山伏尾根、という二つの顕著な岩稜に囲まれる、水晶尾根は二回登攀しているが易しい。慣れていればザイルは不要である。
一方の山伏尾根は、急峻な下部の藪から主稜線に上がると、山伏のドームと言われる岩壁が行く手を阻むように聳える。水晶よりは難易度が高い。
御神楽はその豪雪と標高の低さゆえの夏の酷暑と藪により、登攀可能なのは5月末の晩春か、9月末から10月(胸まで浸かっても遡行できる気候)に著しく限られる。首都圏からも遠く日程に余裕も必要になる。登攀のチャンスは非常に少ない。
なので、御神楽に憑りつかれている私にとって5月は、はっきり言って緊急事態宣言どころの騒ぎではないのだ。御神楽に行かねばならぬ。何としても。そして、私は、今年はどうしても山伏尾根を登りたかった。トライしない、という選択肢は、取り得なかった。行けなかったら死んでしまう。

要は事故らないことで(あの山が三密になったら仰天である)、無理せず引き返すこと、天候を良く見極めルートを良く見極めることだ。それでも、仕事と天候の関係で、なかなか御神楽に赴くことができず、とうとう、これでもう、春季の御神楽は時間切れだろうという先日、ぎりぎりのタイミングで山伏尾根にチャレンジした。
結果としては、登ることができた。下部の易しい岩場で一度ザイルを出してドーム基部、核心の1ピッチ目(リード)させていただく。岩が滑って厳しい。連打されたハーケンに助けられ、最後に一か所カムを決めて登り切る。2ピッチ目(フォロー)はルーファイに難があるが、ほぼ正しくドーム頂上へ。あとは易しい岩稜を経て、湯沢の頭で装備を解除し、登攀は終わった。

初めて水晶尾根から山伏のドームを見て以来、ずっと、ずっと、ずっと、山伏尾根のことを考えていた。文字通り片時も、山伏が私の心から離れたことはなかった。それは、願望とか情熱というより、心に深く刺さった棘だった。棘を抜いて心を癒すためにはどうしても登らなくてはならなかった。

それでも、以前は山伏に本当に登れるとは思わなかったのだ。この数年間の山行、培われた経験と、遅々としてではあれ、技術の向上の賜物であった。岩登りを著しく不得手とする私に根気よく付き合ってくれた多々の先輩たち友人たち、すべての岩と沢、そして登られせてくれた山伏尾根に、心から感謝したい。



1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する