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2018年06月28日18:43

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リベラルと保守の「不都合な真実」 ―― 橘玲『朝日嫌い よりよき世界のためのリベラル進化論』

とても興味深い本だ。
リベラルにもリベラル嫌いの保守やネトウヨにも、ぜひ読んでほしい。日本のリベラルの偽善性がこき下ろされ、他方ネトウヨの「不都合な真実」も科学的に語られていて、どちらが読んでも面白い。私は著者の割切り方が好きではないが、否定はできない。

私がこの著者を好まないのは、遺伝形質に関する実験を重視するそのリアリズムで「これが(あなた方が避けて通る、不都合な)真実だ」とやりたがるところ。わかりやすい例で言えば、犯罪者的性格は遺伝するといった実験結果を持ち出したがるところだ。

たしかに犯罪向きの性格は遺伝する。例えば、短気などだ。しかし、この事実の扱いはデリケートでなければならないが、著者の場合、こうした現実から目をそらして綺麗事の建前ばかり語りたがる人たちへの反発が前面に出るため、どうしても表現が刺激的でデリケートさに欠けるところがあるのだ。

このような著者だから、リベラルへの批判も辛辣だ。その趣旨は、日本のリベラルは、今や自由や平等を推し進めるのではなく、権力から高齢者などの既得権益を守る側に立っており、結果として真の弱者たる若者から見放されている、といったところだ。たしかに、痛いところを突いていると思う。

しかし、著者の本領が発揮されるのは、こういうところではない。リベラルと反リベラルの保守という二極は、どのようにして生み出されるのか。この問題について、著者は生得性を持ち出し、保守の知的劣性をあっさりと指摘して見せるのである。つまり、頭の良い者がリベラルになり、そうでない者が保守になると。

どういうことか。頭が良い者は、思考に柔軟性があり、新しいものを好み、学習する。他方、頭が硬い者は、世界を敵対的なものと感じがちで、他者への共感を欠き、保守的な考え方になりがちだと。

人間社会は、元来後者(新奇嫌い)の方が多いが、生き残りのためには前者(新奇好き)も必要。ところが、現代の知識化社会では、前者(リベラル)のアドバンテージが大きく、それで妬まれもする。大雑把に言えば、こういうことだが、実験データの紹介があると説得力が違う。

私の正直な実感としても、この実験結果は正しいと思える。ただ、これは全体としての傾向であって、個人全員がそうだという話ではないので、そこが誤解されてはならない。つまり、個別に馬鹿は馬鹿だと評価しなければならないということだ。

だが、いずれにしろ保守主義者やネトウヨとしてはうれしくない話なのは明白だ。しかしまた、これに対しネトウヨなどが「差別をするな」とは言い難いところが皮肉。もっとも、頭が悪いので、きっと言うだろうが、何はともあれ、本書を読み、知識を得ることに積極的になって欲しい。遺伝的に苦手でないのであれば、だが。

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