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2020年02月24日15:32

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15の夏。雲を突き抜け星になる話

クレイは天体が好きだ。
神秘的で広大で、見上げるといつも自分たちの傍にいてくれる。せせこましくて、目まぐるしく過ぎていく日常のすぐ傍にはいつも、自分たちを見つめていてくれる星たちがいる…星空って素晴らしいな…夜空を見上げるとそんなことを考えてしまうんだ…

ガキの頃からそうだったんだ。福岡の田舎で育った自分にとっては子供の頃から大切なもの…
そう、あの日もそうだった…
高校3年生のあの夏の日…その日も夜空に思いをはせていた。少し遅くなった部活の自主練終わりに夜空を見上げて自転車で帰ったあの日…
夜空を見上げながら自転車で…

えぇ…もちろん…(ニコッ)

落っこちましたよ。側溝にね、まっ逆さま。最初は前輪から行ったよ。側溝の中に落ちたというか、刺さった。厳密に言うと前輪が下、後輪が上で一瞬地面に向かってチャリ漕いでるみたいな形になって、本体(クレイ)だけ、前にずしゃあぁぁ!って滑りながらこけたよね。

フォト


もう一瞬の出来事だったね。もし、その時近くに目撃者がいたなら、インタビューでこう言ってたに違いない…

目撃した男性(82)「あぁ!オラ、目を疑っただ!でもまちげーねぇ!天狗の仕業じゃ!男の子が一瞬にして消えてしまっただよ!」
それぐらい一瞬でクレイが闇に消えたわけ。もうブラックホールかって。当たり前じゃん。上見ながら運転してたんだから(笑)

地面に向かってるときは頭の中がスローモーションになって、色んな事を考えた…重力なのかな?(なぜか疑問系)とか、ブラジル?(なぜか疑問系)とか…

「夜空って素晴らし…なうっ!めっしゃあぁぁ…」っつって前に滑りこけた(側溝の中)

振り向いた時に目に飛び込んできたのは、キレーに逆さまに着地したママチャリ。あ、こいつ半回転したんだなと。こいつぁー一本取られたな。ペシッ。っつってね…

サドルが地面の方についてるから地球がママチャリに乗ってるのかと思ったもん。もう壮大。その昔、ガガーリン空軍大佐が「地球は青かった…」っていう名言を残した。って話があるけど、もうそんなこと言ってる場合じゃないから。「あ、地球がチャリに乗った…」 byクレイ

これはwikipediaには載ってない。うん、調べてみたけど載ってなかった。一人だけだったからね。人知れず成し遂げた偉業だったから。あの日地球の中の日本の中の、福岡の田舎の片隅で人知れず偉業を成し遂げた男子高校生(バスケ部)がいたことをみんなは忘れないで欲しい。

逆さになったママチャリを見たときは、あれ?もしかして宇宙空間なのか…?って一瞬思ったほど重力を完全に無視してたよね。もう完全にアポロサーティーン。

時間的にはね、夜の9時過ぎくらいだったし、めちゃくちゃ田舎の田んぼ道だったからホントに誰もいなかったんだ.何かそれが逆にむなしいわけ。おもむろにむくりと起き上がって周りを見渡した時の、リーンリーン…て響く鈴虫の音色…広がる闇。世界には俺一人だけなのか…?ぐらいのドタバタコメディからの静寂のギャップね。笑いもなければ感動もないし、感想もない。

そのあとクレイはね、静かに立ち上がってママチャリをひっくり返して…そして…漕ぎ始めたよね!おもむろにね。大人への第一歩だったよね。で、なんか強がって「ふー。」みたいな事言ってるわけ。照れ隠しでやれやれ…みたいな感を出しながら帰ったんだけど、心臓はどっきんどっきんしてるわけ。全然余裕じゃない!側溝の下、少し水が張ってたからドロドロだし。

宇宙って素晴らしいな…すぽーん!って一瞬で側溝に吸い込まれた時は、ブラックホールかと思ったよね。福岡のブラックホールはクレイの実家の近所にあるから。そして別の次元に迷い込んでおうちのお風呂に出てきたかった。ってくらいのヘドロ臭を漂わせながら余裕の表情(でも心臓バクバク)でおうちに帰って。お風呂で泣きながらYシャツを洗ったよ。母ちゃん俺、馬鹿でごめんよぉ…っつってね。ワイシャツには2匹のボウフラが付いていたよ…悲惨だよね。

ここで一つ名曲の歌詞を紹介しようね。
「空を飛ぶ 街が飛ぶ雲を突きぬけ星になる火を吹いて 闇を裂きスーパーシティが舞いあがる。」沢田研二 TOKIO より

これはクレイのあの日の出来事を歌にしてるのかと思ったよね。スーパーシティは言い過ぎでしょ。クレイの実家は爺と婆しかいないから。でも火を吹きながら雲を突き抜けて星にならなくて良かったわ。

150億年前に起こった大爆発で、世の中の全てが生まれたんだ。世の中の始まりは宇宙にある。だからやっぱり星空って、人間に何か人生にとっての大切なことを教えてくれるわけ。

よそ見運転はダメだよ。とかね。

それから、クレイは少しずつ大きくなって、大人になって、空を見上げて歩いていたら自販機にぶつかって「あ、いて!」いう地味な偉業を成し遂げるんだけど、
それはまた、数年後のおはなし…

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