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2020年06月05日19:05

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Blank Reparation

No.0639

『Unclear』
Written by : MARL

 夢を見た。今考えても厭な夢だ。
 私は現実世界に疲れを感じ、時折見る夢の中でも魘され苦しんで目覚める。現実との狭間で私は何を想うのか。今夜もまた夢が私に違う世界を見せてくる。

     ◇

 私は真夏の街中でプールへ行こうとしている。勿論、これは夢の世界での話だ。照り付ける太陽が夢の中とは言え、私の肌を容赦無く焼いていく。真っ黒に焼ける前に今はもう廃業となった温水プールの受付まで避難する。料金を支払い、涼しい館内へと入ると先程の暑さが少しずつ和らいでいく。ボクサーパンツタイプの水着に着替えた私は、他に遊びに来ている親子連れを傍目に、少し足早にシャワーを浴びてから大人用のプールへ向かおうとした。
「おい! あれあの有名な○○じゃないか?」
「どこ? 私も見たい!」
「バカ押すなって!」
 人混みで中の様子が全く分からない。仕方なく私は上の階から見学をする人がプール全域を見渡せる席へと移動し、上から眺めてみる。すると、そこには現実世界では絶対にあり得ない光景があった。かの有名な一流アニメ会社『京都アニメーション』が手掛ける『Free!』シリーズの水泳部のキャラ達がお忍びでここのプールで練習をしていたのだ。それ見る為に全国各地から集まったファン達でプールは使えないとの事。一瞬だけ主人公のキャラと目が合って、こっちに手を振ってくれたが、先程から見えている七色に輝く輪に飛び込んだら、キャラ達に急接近出来るのではないのか。
 そう考え、どうせ夢だからいいだろう、という軽いノリで七色の輪へ飛び込んだ。すると、京アニのキャラ達が消え、辺りは普通の客達で賑わっていた。訳が分からず、プールに入る気分では無くなった為、私は無駄金だと分かっていても、プールを出た。

 プールを出て少し歩くと、大きな交差点へと出る。私が幼い頃は向こう側にミスタードーナツがあったが、今は和食さとに変わってしまっている。陽炎が出るほどの猛暑の中、意識が虚ろになりかけるが、黙って交差点の信号が青に変わるのを待つ。すると、横断歩道の向こうから赤いワンピースに、白い帽子を被った女性が歩いてきた。女性は若いのか年配なのか分からないような風貌をしており、あまりにもそのスレンダーな体型に思わず見入ってしまった。顔は残念ながら見えなかったが、口元が汚れているのが分かった。
(何だろ、血のようにも見えるけど)
 女性が見えなくなると、信号が青に変わり私はそのまま歩いて帰宅した。帰宅後、いつも通り夕食を取り風呂で疲れも取り、布団に入って眠り、この夢から覚めて現実世界で目覚めた。
 現実は夢とは真逆の真冬だったせいか、先程まで暑く感じていた感覚とは一転、凄く寒く感じるので上着を羽織り、朝食を取る。いつもと変わらない静かな朝。私は有休も碌に無い中、今日も前日の疲れが抜けない中、仕事へと出向く。
 仕事中は完全に脳を仕事モードに切り替え、居眠りなどしないように注意深く一日を過ごす。しかし、頭の中ではあの夢の事が離れず、何だかあの七色の輪を潜った後から見たあの赤いワンピースの女性が気になる。時折虚ろな表情の私を見た同僚が、
「どうしたのですか? いつもはこんなにボーっとしていないのに」
「あぁ、すいません。昨夜、少ししんどい夢で魘されまして」
「仕事の時はもう少し気を引き締めて下さいよ」
 この時から私はいつもの日常には無い、不穏な空気を感じ取っていた。

 帰宅後、誰に出迎えてくれるでも無く、一人暮らしの私は帰り際に買った夕食の弁当を取り出して、レンジで温め始める。やはり何か視線を感じる。弁当を早めに平らげた私は、“何か”を警戒しながらシャワーを浴びてから就寝した。この日は夢は見なかった。
 翌日、昨夜の視線は気のせいだと思い込み、玄関の扉を開けてから職場へと向かう道中、遠くの方であの夢で見た赤いワンピースの女性によく似た女性の影が見えたような気がした。職場に着いて自分の席へ鞄を下ろし、始業前にトイレへ向かう。“男性専用”扉を開けると、目の前に突然あの赤いワンピースの女性が立っているではないか!
(!!!)
 あまりにも突然だったので、私は慌てて扉を閉めた。それを見た同僚が、
「何しているのですか? 突然扉なんて閉めて」
「い、いや何でも無い」
「すっごい脂汗ですけど、何か嫌なものでも見えたとか?」
 気まずくなって私はトイレすらも忘れて自分の席へと戻る途中、同僚がトイレの扉へと手をかけ扉が開いた……が、そこにはあの赤いワンピースの女性の姿は無かった。
 でも、確かにあの夢の通り、あいつの口元には血のようなものがべっとりと付いていた。その日から私は昨日以上に“何かの視線”に怯えながら眠りに就いた。

     ◇

 その夜に見た夢の中で、私はあの赤いワンピースの女性の事等忘れたかのように、この世の幸せを独り占めしたかのような裕福な思いに陶酔し切っていた。頭の中で願えば何でも願いが叶う、まさに理想通りの苦労知らずの夢。これが現実でも起きたら現状を打破出来るのに……。
 翌日、目覚めた後に先日買った宝くじの当選通知を何気に確認。やはり現実はそう甘くは無く、かすりもしていなかった。仕方無く私は時間を置いてから“何かの視線”に怯えながら、今日も仕事へと出向く。
 帰宅前にまた宝くじを数枚単位で買ってから、夕食用の弁当を買ってから帰路へ。自宅の扉前に立った時、あの日の朝のトイレの事を思い出す。
(もし、またあいつが出てきたらどうしよう……)
恐る恐る鍵を回し、そっと扉を開ける。そこにはいつも通りの真っ暗な我が家だった。ホッと胸を撫で下ろし、夕食の弁当を平らげた後、早めのシャワーで頭を洗っていると、突然風呂場の扉がガラガラと開いたかと思うと、私の目の前にあの赤いワンピースの女性の姿が! 口元の血はそのままべっとりと付いており、にやぁ〜とした薄ら笑いと共に、スーッと私に近付いてきたので、シャワーのノズルを放り出し、風呂場の扉を固く閉めて急いで服を着て自宅から逃げ出した。あまりにも唐突過ぎたので、道行く人達の視線が痛かったが(ずぶ濡れの私を見て)、少し頭の中を冷静に変えてから怖々自宅へと戻る。風呂場からは出しっ放しのシャワーの音だけが虚しく響き渡る。そーっと風呂場の扉を開けると、そこには誰も居なかった。

 翌日、買って来た宝くじの当選結果を見る前に、心の中で少しだけ「高額当選! どうせなら最高額!」と、念じながら確認すると、何と! 考えた通り億単位の当選が叶ったのだ! あまりの出来事に昨夜までの出来事などすっかり忘れた私は急いで現金に変えた。目の前の数億円の重みは、これまで汗水垂らして働いてきた私の年収を超える凄い額だ。
(これで良い嫁さんでも来てくれれば言う事無いけどなぁ)
 突然、実家の母から電話がかかってきた。電話の要件は、私とお見合いしたい綺麗な女性の紹介だった。早速、実家まで向かうとまさに私好みの綺麗な女性が可愛く座っていた。母に礼を言った後、私は相手方と意気投合し、その後何度かお付き合いさせて頂いた。仕事の合間の休日には必ずと言っていいほど、その人と会っては仕事のストレスを和らげる。
 あるデートの日、気持ち良く晴れた午後の昼下がり、デート先の洒落た喫茶店で小休止を挟もうと、私は相手方をエスコートする。相手方も私の事を気に入ってくれたみたいで、このままいけば結婚も夢ではない。席に着き、飲み物を注文した後、暫し雑談を交わす。飲み物が運ばれてきた瞬間、私は突然席を立ち、その場から一目散に逃げ出した。あいつだ、あいつが店員に扮して私を狙っていたのだ。相手方は何が起こったのか分からないような表情で逃げ出した私を呆然と見つめている。
 後日、私は相手方に事情を説明。ギリギリセーフで相手方は理解を示してくれたが、まさかあんな不意打ちがあるとは思わなかった。その後、何度か交際を重ねた私はついにその人と結婚した。あの日から赤いワンピースの女性は、私の前に姿を現さない。

     †

 結婚後、何不自由無く暮らしている私はあの時と同じ夢を見た。
 真夏の日、あの時と同じプールへと行く私は先に上の階の七色の輪を確認しに向かう。しかし、京アニのキャラ達は居るのに、あの輪だけはどこを探しても見つからない。そのまま夢は終わり目覚めた。すると、妻が心配そうな顔で、
「あなた、凄く魘されていたけど大丈夫?」
「え? そんなに?」
 今も玄関の扉を開けると、突然赤いワンピースの女性が襲って来るような気がする。これ以上心配をかけまいと、妻の方を振り向くと、私は一目散にその場から命からがら逃げ出せた。

 ――何で? 何でここであいつが!?
 ――妻があいつ? いや、それは絶対にあり得ない。あの喫茶店では妻とあいつの姿があったから……。

 私に急接近してキスしようとしてきたのか?
 あの口元の血は、これまでの犠牲者達の血なのか?
 いや、これ以上あいつの事は考えたくはない。頭を切り替えなくては。

 ふとした時に私は過去に見たプールの夢と、何でも願いが叶う夢の法則性を割り出してみた。願い事の夢は、現実世界でも頭の中で願えばそれが即叶う、それならばあいつを回避出来るのではないか。早速、頭の中で願ってみる。

 ――あいつ(赤いワンピースの女性)から逃れたい!

 これで一安心だ。念の為、他の願い事も試しておくか。
(仕事で出世出来ますように)
「おい、上司が呼んでるぞ」
 上司から私の普段の仕事振りが評価され、私は重役に就き給与も跳ね上がった。という事は、赤いワンピースの女性の件も叶っている筈だ。用を足そうとトイレの扉を開け! ても、あいつは居なかった。やはりもう目の前には現れない! 今度こそ勝った! もういつ襲われるか分からない不安からは解消されたわけだ。この日の仕事を終え、職場の玄関先の扉を開けて外へ出ようとした時、
(え、え? な、何で!?)
 赤いワンピースの女性がにやぁ〜と笑いながら、私の唇目掛けて襲い掛かる。私は急いで職場の扉を閉め、すぐに扉を開けるとあいつは消えていた。ようするに視界から一旦消すと、その場は取り敢えず回避出来るようだ。ただ、あいつから逃れたい願いだけは叶わないらしい事も分かった。
 帰り道、高額当選したにも関わらず、再び高額当選を願いながら宝くじを購入。結果、その宝くじも数億円当選して、悠々自適に暮らしているが、宝くじ売り場から待ち伏せていたあいつから走って逃げ、視界から消した後帰路へ。
 その日の夜、電気を消して就寝しようとした矢先、突然部屋の襖が開き、あいつが襲い掛かってきたので、急いで隣の部屋に逃げ込み一旦閉めた襖を再び開き、もう一度あいつがにやぁ〜と(即襖を閉めてから開ける)あいつの姿は消えていた。
 流石に神経を擦り減らし疲弊し切った私を労う妻、毎日が幸せなのは良いのだが、どうしてもあいつからは逃げられない。
 その日から数年間はあいつとは遭わなかった。

     †

 定年退職直前のある日、子宝にも恵まれた私はすっかり成人した二人の息子と娘から早めの退職祝いの花束を受け取った。長年私を助けてくれた妻も一緒に。数日間の旅行もプレゼントされ、まさに余所の者が羨むほどの贅沢三昧。そして、数日後には退職をし、余りあるほどの財産でゆっくりとした老後を送る。あいつはずっと私の前に姿を見せない。
 ある日の夜、私は実に数十年振りにあの夢を見た。

 真夏の日のプール、私は上の階へ向かい七色の輪を探すが、やはり輪は見つからない。そう言えば、京アニのあの水泳のアニメ、当時は流行っていたっけか。帰り道、交差点の信号待ちで赤いワンピースの女性が横切った。当時と同じ格好で。
 目覚めると、そこには優しい妻の顔……では無く、あいつがこれまでに無いほどの急接近でにやぁ〜と微笑み、私にキスという名の噛み付きで襲って来る! 実に数十年振りだったので、回避が間に合わず少しだけあいつの唇から出た異形の牙が私の唇を捕えた!
「痛っ!」
 私は下唇を切ってしまい、命からがら隣の部屋へと逃げ込んだかと思うと、あいつが待ち構えるようにして再び遅いかかっ(襖を即閉める)
(た、助かった……)
 本当にいつ襲って来るのか分からない恐怖、不安……。数秒後かと思いきや、数十年もブランクを空けてからのケースも考えられるし、心が休まった試しが無い。やはりあの七色の輪が原因なのか?
 願い事も寿命を延ばすとか、そういった類の願いも却下されるみたいだ。

 ――こ、怖い。た、助けてくれ。
 ――あの赤いワンピースの女性から逃がしてくれ、お願いだから!
 ――こ、こっちへ来るな!

「お父さん、もう精神がやられているね」
「お母さん、お父さん助からないの?」
「(泣きながら)もうあの人の精神は二度と戻らないって……」
 どうやらこの物語の男は、頭がいかれたのか愛する家族を残して重度の障碍者として生きる事になったが、辛うじて相手の言っている事は理解出来るらしく、毎日本を読み聞かせている妻の背中が重く哀しく見える。大好きだった漫画を愛する妻が絵を見せながら読み聞かせをしているが、男はページを捲る音に敏感に反応し、何かに怯えているような表情を浮かべている。
 この日読み聞かせている漫画は、増田こうすけ先生の『ギャグマンガ日和』。セリフが多い事でも知られる名作だが、男は楽しみながらもやはりどこか恐怖感は拭えない感覚に囚われながら聞いている。
 妻がマンガ本をアップにして、最後の見開きを男に見せる。すると、先程までの増田先生の絵が消え、真っ暗な見開きが現れた。男は真っ暗な見開きから微かに聞こえてくるノイズ音のようなものの向こう側に掠れた何かの音を拾う。一瞬の間の後、

 ――見てしまったのね。

 男のすぐ耳元で囁くように聞こえてくる妻とは違う女性の声。
 真っ暗な見開きのページ越しに妻の顔を恐る恐る見ると、…………見慣れた年老いた妻の顔だった。男の精神は完全に狂ってしまい、ついに男はその日の真夜中に、自力で布団から這い出て屋根の一番上に攀じ登り、飛び降り自殺を実行しようとする。
 男には迷いは無かった。もう十分人生を楽しんだ。しかし、その人生の中にある不安要素はもう一生消えてはくれない。身を投げ出し、この世に別れを告げる。男の身体は重力に逆らう事無く堕ちていく――

 その身体が地面に激突する瞬間、男は見てしまった。そう、赤いワンピースの女性を。
 赤いワンピースの女性は、不敵な笑みで男を待ち構えている。
 男が逃げようとしても、女の血塗れの口が男の舌を捕える。男が観念したその時、幻覚を見てしまったのかあの女の姿は無く、男はそのまま地面に激突した。
 男の死後、辺り一帯真っ暗闇の中で、男は視界に映るその女の死の接吻を“永遠に”受け続け、痛みも感じ続ける。自ら自殺を図った代償なのか。死後“永遠に”その女に殺され続け、男は夢の中で七色の輪を興味本位で潜った事を後悔するも、そこから後はもう何も考えられない――

 決して覗いてはいけない世界、“Unclear”――


It's also a problem in time that spirit will soon collapse.
If saying to what to see before breaking through the limit, nothing would be seen.
I'm already disgusted by seized thought.
Resigning (surrender) does this game for me, surprisingly, who shoots a word?

Only the trap which causes death exists ahead of the beautiful and light lip.

 〜対訳〜

 もう精神が崩壊するのも時間の問題だ
 限界突破した先には何が見えるのか、いや何も見えはしねぇだろ
 囚われた思考にはもううんざりだ
 俺はこのゲームをリザイン(降伏)するぜ、誰が何と言おうとな

 美しく光る唇の先には死を招く罠しか存在しない
 さぁ、次は誰がこの饗宴の餌食になるんだろうな

 茫乎たる時が迫り、永遠に俺を蝕んでいく






















































































































 次の標的はここを御覧の、そう……貴方なのよ。

  『Unclear』完

 ◇Explanation◇→ 『Unclear』

 従来の私の短編の常識を覆す最強の物語が誕生。
 人間心理の中で、我々が最も恐怖を感じる瞬間とは何かを追求した結果、この物語の赤いワンピースの女性との接点に終着する。物語の主人公は私をモデルとしているが、この世のどんな拷問も死刑でもこの苦しみに勝るものは存在しない。例え、それと引き換えに思い描く幸せを手にしても。

 何気ない平凡がどれだけ幸せなことか。
 夢であっても目覚めれば必ず助かると分かってさえいても、もう二度とあんな苦しみは味わいたくはない。
(注釈:この物語は、敢えて日記連載に起こさなかった私の夢を題材としている。)

2020/06/05 MARL
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コメント

  • mixiユーザー

    mixiユーザー2020年06月06日 09:15
    赤いワンピースの女が、不気味ですね。
    しかし、ラストが、、、です。
    注釈に、夢を、題材にと、ありましたが、怖い長い夢だったのですね。

mixiユーザー

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