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2020年01月26日07:38

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今、幸せかい?

マサオは、止まったままの電車を恨めしそうに見た。
ホームに駅員の案内の声が響いている。
たった今、人身事故があったため、
この電車は動かないという。

「迷惑な話だ。」

マサオは舌打ちしながら混んでいるホームのあたりを見た。
そこに見覚えのある顔があった。
高校時代同じクラスで、よく遊んだマナミが立っていた。
マナミもマサオの視線に気が付いて、
手を振って走り寄ってきた。

「久しぶりぃ」
「元気だった?」
「卒業以来、だよね?」

高校を卒業して、大学が別々になってから、
何度か連絡はとったけど、
二人は合うチャンスがないまま、
月日が過ぎ、いつしか諦めるように、
忘れてしまっていたのだ。
マサオが聞いた「どうしてた?」
でもマナミはそれには答えずに
深刻そうな顔になってマサオを見た。

「ねぇ、トオル、覚えてる?」
「トオル?」
「高校の時、よくつるんでたじゃん」

マサオは遠い記憶をたどるように目を細めた
そして、アッという感じで思い出して
「トオルかぁ!」覚えてるよ。
思い出したところで半笑いになって
「トオルね」と二ヤニヤしながら言った。
そして聞いた「トオルがどうしたの?」
マナミは目を電車にまっすぐ向けって言った。
「トオル、高校卒業して直ぐ、自殺したんだよ」
マサオの顔が固まった。

「え、自殺って、なんで?」
「聞いて無いの?」
「聞いてない。今初めて知った。」

マナミは少し間をあけて
「私は葬式に呼ばれたよ」
「そ、そうなんだ…」
「棺の中のトオルを見た」

マサオは何と返したら良いかわからなかった。
マサオは振り絞るように言った。

「でも今、なんでその話を?」

マナミの顔が青くなっていくのが分かった。

「さっき、トオルに合ったの…」

マサオはマナミが
何を言っているのかわからなかった。

「いやでもさっき、トオルは死んだって」
「高校の時のままのトオルだった」
「私に聞いたの。今、幸せかい?って」
マナミは続けた
「トオルを見たとき、怖かったけど、
聞かれたことには、幸せよって答えた…」

止まっている電車の事故現場を
見たらしい客の声が聞こえてきた。
「どうやら、飛び込みらしい。」
「若い女性だってよ。」
マサオは自分の前ですっと消えていくマナミを見た。
何が起こっている? 俺は気でも狂ったのか?
横から声がした。

「マサオ君…」

マサオが顔を横に向けたら、
高校当時の制服を着たトオルが立っていた。
トオルが聞いてきた。

「今、幸せかい?…」


暖冬で冬なのにそんな寒くないので寒くしてみましたw
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