なぜコンプライアンスは根づかない？

私が田舎の取材を始めた３０数年前、飲酒運転を見かけたのは一度や二度ではない。当時から移動の手段は車に移行していたし、必要悪と思う人も多かった。しかし、飲酒運転による死亡事故が増えたこともあり、警察は取り締まりを強化。田舎でも飲酒運転は減っている。

日本で主に法令遵守を意味するコンプライアンスという言葉が定着したのは、損失補填が横行したバブル経済の崩壊からしばらく経ってからだと思う。しかし、現実にはなかなか根づかない。最近では知床の海難事故で、運航管理者も務める社長が運航中に事務所から外出していたことが判明。現場任せの実態が明らかになり、世間を唖然とさせた。

オートバックスはわが田村市にもあるが、それを展開する本社の社長が酒気帯び運転で逮捕、辞任するという出来事も起きた。同社はカー用品を扱う大手であり、リスクは充分に認識していたはず。そのくらいの重責を担う人間であれば、専任の運転手がいて当たり前。芸能人でもこの種の問題はあとを絶たないが、少しくらいの法律違反は大丈夫という心の隙が大きなトラブルを招いたのだろうか。もちろん、社長でなくても他山の石とせねばなるまい。