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2020年05月26日07:49

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安倍首相が電話会談で沈黙した「トランプ大統領の要求」

各国が新型コロナウイルス問題に関心を集中した、世界保健機関(WHO)の年次総会(WHA)が5月18、19の両日、テレビ会議の形式で行われた。今年のWHAの特徴は、米国による激しい「WHO・中国叩き」だった。欧州など、米国の友好国は軒並み、米中の覇権争いに巻き込まれることを嫌がり、どちらとも距離を置く姿勢を取った。米国を最大の友好国とする日本はどうしていたのだろうか。
今月8日、トランプ米大統領と安倍晋三首相は電話会談を行った。外務省はホームページで「両首脳は,新型コロナウイルス感染症に関し,両国内の状況や感染拡大防止策,治療薬やワクチン開発,経済の再開に向けた取組等における日米協力や情報共有について意見交換を行い,引き続き日米間で緊密に連携していくことで一致しました」と説明した。
ただ、日米関係筋によれば、トランプ氏はWHAへの台湾参加やWHO改革に強い意欲を示していたという。台湾のオブザーバー参加などに向け、日米で共同戦線を張ろうという呼びかけだった。安倍首相は、トランプ氏の考えを否定することはしなかった。同時に、トランプ氏と共同行動を取るという言質も与えなかった。関係筋の1人は「トランプ氏は、安倍氏の発言の正確な意味を理解していなかったかもしれない」と語る。

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トランプ氏は4月14日、ホワイトハウスでの会見で、WHOへの拠出金の停止に言及した。すでにこのときから、日本政府内ではトランプ氏の戦略を危ぶむ声が出始めていた。米国はWHOへの最大の拠出国だ。昨年はWHO年間予算の約15%にあたる4億ドルを拠出している。外務省は非公式に、米側に対して「米国が拠出を停止すれば、隙間が生まれる。そこに中国が進出してくるのではないか」と懸念を伝えていた。
案の定、WHAで演説した習近平中国国家主席は新型コロナ対策のため、約20億ドルを拠出すると表明した。日本もWHOなどに2.7億ドルを拠出する考えを明らかにしたが、中国に太刀打ちできる金額ではなかった。
日本にしてみれば、国際機関への中国の進出を嫌がってきたのは、誰を隠そう米国その人だ。今年3月、特許権などを扱う国際機関、世界知的所有権機関(WIPO)の次期事務局長の選挙があり、中国が擁立した現事務次長が大差で敗れ、米国が支持したシンガポール特許庁長官が当選した。日本は昨年10月、特許庁出身のWIPO上級部長の擁立を決めていたが、今年2月になって撤退を表明した。
別の日米関係筋によれば、米国が当初から、日本に候補者擁立を諦め、シンガポールの候補に一本化するよう迫っていた。米国は「日本とシンガポールが候補をそれぞれ立てれば、中国が漁夫の利を得る」「知的所有権を侵害している国の出身者が、知的所有権を守る国際機関のトップに就くなんてブラックジョークだ」などとして、強い圧力をかけていたという。米政府内には、国際機関で中国出身者がトップを占めるケースが増えていることへの危機感が強まっていたという。
日本にしてみれば、トランプ氏のWHOへの拠出金停止発言は、従来の「中国の国際機関への影響力を弱める」という米国の戦略と明らかに矛盾していた。戦略が間違っている以上、安倍首相も簡単に、トランプ氏の考えに同調できなかった。
安倍首相は、トランプ氏にとって最大のお友達との評価を得てきた指導者だった。だが、安倍首相が8日の電話会談で、戦略の誤りについて指摘したり、拠出金停止を思いとどまるよう説得したりすることはなかった。関係筋の1人は「安倍首相はトランプ大統領の気性もよく知っている。トランプ氏は人からの説得に耳を傾けるような人物ではない」と話す。
なにしろ、トランプ氏の手足となるべき米国の外交官たちが苦しんでいる。過去、私は米国外交官たちが似たように苦しむ姿を見たことがある。第1次ジョージ・W・ブッシュ政権(2001〜2005年)の時の北朝鮮外交だ。ブッシュ大統領は、大勢の国民を餓死させた金正日総書記を忌み嫌った。米外交官たちに北朝鮮との対話を極力しないよう仕向けた。中国との断交までちらつかせるトランプ氏の姿と重なる。
02年10月、当時のケリー米国務次官補らが北朝鮮のウラン濃縮疑惑を暴くために訪朝したときも、ホワイトハウスの強硬派は「北朝鮮の奴らにトースト1枚食わせるな」と騒ぎ、ケリー氏主催の答礼晩餐会を開くことを認めなかった。北朝鮮はこのとき、ウラン濃縮を暗示したが、ブッシュ政権は対話ではなく、核開発を巡る米朝枠組み合意の破棄という道を選んだ。ケリー氏と一緒に訪朝した当時のストラウブ米国務省朝鮮部長は後日、私に「愚かな行為だった」とこぼしたことがある。
また、かつて米国務省の知人は「私たちは超大国の外交官だ。だから、発言や態度には細心の注意を払う」と話してくれたことがある。この知人は先輩の米外交官たちから繰り返し、「小国の外交官は強い言葉を吐いても許される。しかし、自分たちの場合は影響力がある以上、いい加減な態度は許されない」という教えを受けたという。WHOに拠出金停止や脱退をちらつかせるトランプ氏の手法は、米外交の伝統とは真逆のものだろう。
結局、安倍首相はWHAで演説を行わなかった。同様に演説を拒んだトランプ氏への最大の配慮だったのだろう。欧州諸国も、メルケル独首相のように演説はしたものの、ごく手短に済ませて、米国とも中国とも距離を置こうとする国が目立った。加藤勝信厚労相はWHAで、台湾のコロナ対策を評価したが、中国を直接批判しなかった。延期になっている習近平主席の訪日を含め、日中関係をこれ以上悪化させることは得策ではないという安倍政権の判断があったのだろう。
米国とも中国とも距離を置いて、とりあえず11月の米大統領選まではやり過ごす。今の日本にはこの方法しか残されていないのかもしれない。
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