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2020年01月29日17:40

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積雪5センチでダイヤ混乱、首都圏鉄道が雪に強くなれない理由

今年は暖冬といわれているが、今後まとまった降雪がないとは限らない。そこで考えておきたいのが、雪に弱い首都圏の鉄道事情。過密ダイヤで運行されているため、雪国の鉄道のような除雪もあまり意味がなく、降雪時には、間引き運転が行われて駅は大混乱となる。台風時と同様に、休業や始業時間の繰り下げなどが柔軟に行われるようになってもいいのではないだろうか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
5センチの積雪で
首都圏の鉄道ダイヤは乱れる
 1月18日、東京は今年2度目の雪を観測した。前回の降雪は1月4日深夜に観測されたみぞれで、これが東京の今年の初雪だったが、実質的に18日の降雪が今年の「初雪」となった印象だ。都心では積雪は記録されず、交通に影響は出なかったものの、大学入試センター試験の初日だったということで、気をもんだ受験生も多かったことだろう。
 今年の冬は、全国的に平年よりも気温の高い日が多い「暖冬」だ。冬型の気圧配置が続かず、日本海側では記録的に雪が少ない状況で、営業を開始できないスキー場も多いという。ただ南岸低気圧に左右される関東地方の降雪は気まぐれなので、今後、まとまった降雪がある可能性は否定できない。
 関東甲信地方では2018年、1月22日から23日未明にかけて大雪があり、東京でも23センチの積雪を記録した。この影響で鉄道各線は、23日の午後から通常より運転本数を減らして運行したため、帰宅時間は激しい混雑とダイヤの乱れが発生したことは記憶に新しい。東京ではおおむね5センチ以上の積雪があると鉄道が乱れ始め、10センチ以上で一部の路線はマヒ状態となる。
 ちなみに平成以降の記録を振り返ると、1989年から2019年まで31年間のうち、東京で雪が降らなかった年はないが、積雪を記録した年は19年で、5センチ以上の積雪は10年、10センチ以上は6年だ。つまり、3年のうち2年は雪が積もり、そのうち1年は鉄道の運行に影響を及ぼす5センチ以上の積雪になる計算だが、実際にはそこまで均等に降るわけではなく、2006年の冬から2011年の冬まで6年間、5センチ以上の積雪がなかった空白期間もある。
 2012年以降は、7年のうち5年で5センチ以上の積雪を記録しており、そのうち2014年と2018年は20センチ以上の記録的な大雪となった。結局、降ってみなければ分からないのが東京の雪なのだ。
除雪体制を構築しても
首都圏では大して意味がない
 その東京を支える交通機関である鉄道は、残念ながら雪に弱い。鉄のレールと鉄の車輪で走る特性上、雪がレールや車輪に付着すると摩擦が低下し、加速や制動距離への影響が避けられないからだ。
 実際、2014年2月の大雪では、東急東横線の列車が滑って止まり切れず、元住吉駅に停車中の列車に追突するという事故も起きている。制動距離に余裕を持たせるためには速度を抑えるしかなく、減速運転すれば通常のダイヤを維持することはできない。そのため、通常よりも本数を減らした「間引き運転」を強いられることになる。
 こうした状況に対し、雪国の鉄道のような除雪装置を整備できないのかと指摘されることがある。道路や空港が閉鎖されても運行を継続する雪国の鉄道が雪に強い乗り物として認知されているように、車両側と地上側の両方で万全の除雪体制を敷くことで、雪の影響を最小限にすることは不可能ではない。ただそれは、列車本数の少ないローカル線だから成り立つのであって、仮に莫大な資金を投じて東京圏で除雪体制を構築したとしても、過密ダイヤに対応することは不可能である。
 具体的な運行本数で考えてみよう。ラッシュ時間帯、2分間隔で運行する路線の場合、5割の運行といっても4分間隔で、通常の2割の運行でも10分間隔だ。雪国の路線とは比較にならない本数であることが分かるだろう。一方で朝ラッシュ輸送は、輸送力が1割欠けただけでも大混乱に陥ってしまうのだから、除雪設備を整えたところで解決はしない問題なのである。
 ここで思い出してほしいのが台風接近時の「計画運休」だ。JR西日本が2014年から行っている計画運休は、風速や雨量が規制値を超えて運転が継続できなくなった場合の駅間停車などの混乱を防ぐために、台風接近前から運転を休止する措置である。東京圏でも昨年の2度の台風上陸で一気に定着した。
 実は降雪時の間引き運転も、1998年の大雪で東京の鉄道がマヒ状態になり、各所で駅間停車が発生した混乱を教訓に、積極的に行われるようになった経緯がある。間引き運転とは一部の列車を計画的に運休させることに他ならず、5割の間引き運転は2本に1本の計画運休であり、台風における計画運休は10割の間引き運転ということになる。間引き運転と計画運休は本質的に同じものである。
たとえ空振りしても
間引き運転を受け入れよう
 ただ、進路の予想がある程度可能な台風に対して、雪の予想は非常に難しい。例えばJR東日本は2013年2月6日、東京都心で最大10センチの積雪という予報を受けて間引き運転を決定した。しかし、実際には運行に影響が出るほどの積雪にはならず、列車が混雑するだけの結果に終わり、批判の対象にもなった。
 しかも台風による計画運休は、おおむね毎年1回以上行われているが、雪の間引き運転は数年に1度であり、毎度、前回の大雪を忘れたかのような混乱が繰り返されることになる。
 だが、頻度が低いからこそ、確率の低さに目をつぶるという考え方もできるはずだ。台風の計画運休ですら、空振りになることはある。それでも私たちの社会は、安全確保と混乱を防ぐための計画運休を支持することにした。
 そうであれば同様に、大雪が予想され、間引き運転が予告されている場合には、休業や始業時間の繰り下げなど、計画運休に準じた対応を行うことも検討されてしかるべきだろう。どのみち東京という都市は、大雪に対応できるようにはできていないのだ。今年は大雪にならないかもしれないが、雪の備えについては考えておく必要があるのではないだろうか。
【お詫びと訂正】 記事初出時、2ページ目の2段落目、「東急東横線の回送列車が滑って止まり切れず、」とありましたが、回送列車ではありませんでした。お詫びして訂正いたします(2020年1月27日 14:40 ダイヤモンド編集部)
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