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2020年01月14日20:59

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2019年自動車販売台数トップ トヨタ勢の「共食い」を制したプリウスが進む道

 さる1月9日、日本自動車販売協会連合会=自販連から2019年の乗用車販売実績が発表された。巷でいうところの白ナンバーの普通車、その販売ランキングである。
1位 プリウス(トヨタ)
2位 ノート(日産)
3位 シエンタ(トヨタ)
4位 カローラ(トヨタ)
5位 アクア(トヨタ)
 まず踏まえておくべきは、約12万5000台を売った1位のプリウスでさえ、軽自動車の実績も含めてみれば5位ということだ。総合上位は軽自動車が独占しており、全体1位のN-BOXに比べればその年間販売台数はざっと半分と、今や日本の全新車販売の4割を占める軽自動車の底力を思い知る。言い換えればそれは、日本人がクルマに対して必要外の余剰的な出費を良しとしていないことを示しているのかもしれない。
ハイブリッドカーを当然のものと定着させたプリウスの功績

コピーライト 文春オンライン 4代目となる最新モデルのプリウス コピーライトgetty
 と、現在の国民車がN-BOXであるように、プリウスもかつて圧倒的国民車と認識されていた時期がある。それは3代目モデルが登場した2010年前後だ。販売台数は年間30万台を突破、ひと月に3万台以上を売ることも多く、路上に溢れたプリウスの売れっぷりは社会現象的にさえ捉えられた。
 世界初の量産型ハイブリッドカーとして初代が登場したのは1997年のこと。そして2003年に2代目へとスイッチし、プリウスはじわじわとその認知度を高めていった。干支ひと周りでようやく迎えたこの需要の爆発期が、すなわち日本においてハイブリッドシステムが特別ではなく当然のものとなった時期ということになるだろう。
 それからざっと10年近い月日が流れて、4代目となった現在のプリウス。その販売状況には往時の勢いはない。2019年は普通車販売1位だったものの、2018年はノートやアクアに次ぐ3位。台数的には往時の1/2〜1/3といった趣だ。
プリウスが売れなくなった理由
 なぜプリウスが売れなくなったのか。答えは明快で、3代目の時代に比べると競合するモデルが劇的に増えたからだ。たとえば2019年の普通車販売ベスト10をみても、そのうちの9つがハイブリッドシステム搭載グレードを持つモデルとなっている。今や国内自動車販売数の半分弱をハイブリッドが占めるという状況で、プリウスだけがぶっちぎりという話はやはり虫が良すぎるわけだ。
 何より、プリウスの最大のライバルは身内にある。ビジネススラングでは「カニバる」などとあまり美しくない言葉で表されるが、いわゆる共食い状態であることは疑いようがない。
 2011年に発売されたアクアはプリウスより小さく低価格なハイブリッド専用モデルで、一時はプリウスを上回るセールスを記録した。そしてシエンタはやはりプリウスより小さいものの、3列シートで6〜7人乗りのミニバン的パッケージを実現。取り回しやすさと積載力を両立しており、こちらは普通のエンジンモデルも選べるが、売れ筋はちょっと高額なハイブリッドモデルとなる。
 そして2019年、この間に割って入ったのがカローラだ。その名はもはや過去のものかと思いきや、今もグローバルスケールでみればカムリやRAV4と並び、トヨタの屋台骨を支える重要戦略車となっている。
劇的な進化を経て生まれ変わった新型カローラ
 そのカローラがフルモデルチェンジを果たしたのは2018年のこと。そして2019年にはハッチバックに次いで、プリウスよりひと回り小さい日本市場専用となる車格でセダンとワゴンが追加投入された。
 その基本メカニズムはプリウスと同じながら、設計年次が新しいこともあって、運動性能や静粛性はより洗練されているという印象だ。小さなセダンやワゴンでありさえすればいいという個人・法人のニーズを満たすのみだった前型に比べれば、クルマとしての出来は月とスッポンと言っても過言ではない。
 実際、セダンとワゴンが追加されて以降のカローラの販売は絶好調で、2019年の10〜12月の月毎販売ランキングではプリウスに大差をつけて1位を獲り続けている。カローラの販売が年々凹んでいくのは、その名前に古さや退屈さしか感じないから……と思っていたトヨタの関係筋にとって、この売れっぷりは様々な示唆に富むものだろう。
 それでも2019年、プリウスが販売ランキングで1位に返り咲いた大きな理由は、癖の強かったデザインにマイナーチェンジで手を加えたからだろう。主に前後の灯火周りのグラフィックがスッキリとしたものになり、多くの人から素直に受け入れられる方向に整えられた。これによって販売は再び活気づいたわけだが、前述の通りここ数ヶ月はカローラの絶好調が水を差してもいる。
トヨタが推し進める大再編でハイブリッド専用車はどうなるか
 トヨタは今、日本に5000ほど展開している販売店網の大再編を推し進めようとしている。トヨペットだネッツだという販売チャンネルを統合、全店全銘柄の取り扱いを基本として販売店舗数を縮小。それに伴い2025年までに販売車種数も約半分に削減して市場の成長鈍化に対応しながら、得られた土地や人的な余力はサブスクリプションやシェアリングといった新たなモビリティサービスに活用しようという思惑だ。たとえばアルファード&ヴェルファイアといった顔違いの兄弟車は、ひとつに束ねられることになるだろう。
 そうなった時、たとえばプリウスやアクアといったハイブリッド専用車は果たしてどうなるのかという点は悩ましい問題だ。たとえばアクアの役割はヴィッツ(この2月からはヤリスとして登場する)のハイブリッドが果たしてくれる。同様に、プリウスの役割はカローラのハイブリッドが担えるのではと検討されても不思議ではない。
2020年、プリウスの存在意義
 登場から20年以上の時が経ち、異端から売れ筋ど真ん中へとハイブリッドテクノロジーは進化した。そこに邁進する日本車を奇異な目でみていた外国勢も、今やそれを盾にしなければ環境規制はクリアできない状況だ。つまるところプリウスは人々や社会の意識を変え、ハイブリッドが当たり前のものとなるうえで大きな貢献を果たした。その名と功績は世界に浸透している。
 とあらばプリウスは、世界に現実的かつ圧倒的な環境性能を提示し続けるトヨタの看板として、台数維持がゆえの妥協を捨てて尖った精鋭に立ち戻るべきなのかもしれない。2020年はプリウスにとっても自らの存在意義を考え直す正念場になるのではないだろうか。
(渡辺 敏史)
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