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2019年08月20日00:23

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「議論をすり替える輩」にダマされる人の盲点 ツイッター上でも散見する「詭弁」の見破り方

古典や名著、哲学を題材にとり、独自の視点で執筆活動を続ける高橋健太郎氏による連載「欧米エリートが使っている人類最強の伝える技術」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボにより一部をお届けする
ベテランの行う営業トーク、イケイケの人物が行うスピーチやプレゼン、インフルエンサーのネットでの発言。その言葉にその場では同意し納得しながらも後で、
 「今、考えるとどうもヘンだ」
 と、感じたことはないでしょうか? それは、もしかしたら「詭弁(きべん)」を使ってだまされたのかもしれません。「詭弁」とは、言い方・話し方の工夫で正しくない内容を正しいように見せかける、いわば「フェイク議論」を組み立てるためのテクニックのこと。
 この「詭弁」は、古代ギリシャにまでさかのぼるほど歴史の古いものですが、現代でもさまざまな場面で、気づかないうちにわれわれを扇動し説得し、動かしています。
 そこで今回は「詭弁」について解説します。騙されないために、そして自分で知らず知らずに使わないためにです。
「詭弁」は古代ギリシャからあった
 そもそも、本連載が参照している弁論術という技術。弁論術の祖・アリストテレスがこの技術を説いた大きな動機の1つが、詭弁への対抗策を示すということでした。
 というのも、当時のギリシャには、「徳を身に付けさせる」「知識を教授する」という触れ込みで、人を集めて金をとるソフィストという人々が跋扈(ばっこ)しており、彼らのほとんどは、適当な内容を「詭弁」で正しそうに見せかけるだけの悪質なエセ知識人だったからです。
 アリストテレスは、彼らソフィストを「知恵に見えるが本当はそうでないもので金銭を稼ぐもの」(『ソフィスト的論駁』第1章)と呼んで軽蔑していましたが、ハッキリ言えば、この手のソフィストは今でもたくさんいます。
 役に立たない考え方を成功への近道のように宣伝する人、しょうもないデマを画期的な新知識であるかのように拡散する人、自分の利益のために奇妙な論理で他人をだます人は、今でもそこら中にいるのです。
 では、現代のソフィストたちが用いているのはどんな詭弁なのか?
 おそらく、最もよく使われているものの1つが、原因と結果についての詭弁でしょう。これは、さまざまなメディアの記事やSNSの投稿などで、うんざりするほど見られます。
詭弁には4つのパターンがある
 原因と結果についての詭弁については、さしあたり主な4つのパターンを押さえておくことが大事。これだけでかなり、詭弁にだまされたり、あるいは自分で気がつかないうちに詭弁を用いてしまうケースも減るでしょう。
1. 数ある原因の1つを唯一の原因のように語る
 まず1つ目が、数ある原因の1つを唯一の原因であるかのように語る詭弁。これは他人を操ったり扇動しようとする人間の常套手段です。例えば、次のような。
 「彼が事業に成功したのは、英語が堪能だったからです。英語の勉強をしましょう!」
 まず絶対に知っておいてほしいのが、現実は複雑で、物事の原因は複数あることのほうが多いということです。例で言えば、彼が事業に成功したのは「英語」のおかげだけではないはずですし、トランプ大統領は、
 「アメリカ中西部や南部が貧困化したのは、不法移民が仕事を奪ったせいだ。追い出そう!」
 と言いますが、アメリカ中西部や南部の貧困化は、工場などの働き口が海外に移転したことや、若者が都会に流出したこと、それまでの歴史的な経緯なども強い原因だと言われていて、それをすべて「不法移民のせいだ!」ですますのは、どう考えても詭弁なのです。
 良識ある人間は、複雑な出来事について安易に「全部アレのせいだ!」などとは断言しません。それが誠実な態度ではないことがわかっているからです。
 そして、そんな状況だからこそ、ソフィストは「全部アレのせいだ!」と断言します。多くの人間が、複雑な事実より単純な詭弁を好むことを知っているからです。
 誰もが原因を断言できないモヤモヤした雰囲気の中で、簡単に理解できる「全部アレのせいだ!」が出たとたん、「わかりやすい!」「それがホントにちがいない!」と諸手を挙げて歓迎してしまうのが、大衆というものなのです。
 しかし、この記事を時間を割いて読んでくださる皆さんは、そんな大衆ではないはずです。
 ならば、複雑な出来事の原因を、ただ1つの何かに帰するような主張を目にしたら、それに飛びつく前に「原因がそれだけって本当か?」と反射的に疑うクセをつけましょう。
2. まったくの偶然を原因だと語る
 2つ目は、原因でないものを原因とする詭弁です。これは、アリストテレスも『弁論術』で取り上げている古い詭弁です。例えば次のような、 
 「今日悪いことが起きたのは、朝、玄関を出るときに右足から歩き始めたからだ」
 世の中には、このように「偶然」という言葉で処理すべき事柄を、必然のように語る詭弁が確かに存在します。
「政治の世界に顕著」な詭弁
 言うまでもありませんが、「Aの後にBが起こった」からと言って「AのせいでBが起こった」とは限らないのです。もちろん、大の大人がまじめな議論をするときにこういう話し方をするのはナシですし、これにだまされるのはもっとナシ。
 ちなみに、アリストテレスはこの詭弁について「政治の世界に顕著」(『弁論術』第2巻第24章)だと言っています。
 彼によれば、ギリシャでデモステネスという人物がある政策を行った後に、たまたま戦争が起きた際、当時の敵対する政治家はその政策と戦争に関連がなかろうが、すかさずこう言ったそうです。
 「戦争が起きたのは、デモステネスの行った政策が原因だ!」
 この手の詭弁は、現代の政治の世界でも頻繁に耳にするものです。
 繰り返しになりますが、「Aの後にBが起こった」からと言って「AのせいでBが起こった」とは限りません。大事なのは、AがどんなメカニズムでBの原因になったといえるのか? なのです。
 ここがハッキリしない限り、その意見を信用してはいけません。
3. おまけの要素を原因だと言い張る
 本当の原因とたまたま一緒にあった、おまけの要素のほうを原因だと言い張る詭弁もあります。
 「3食トマトだけを食べ続けた結果、1週間で5キロやせた。これはトマトに含まれる栄養成分が原因だ」
 3食トマトだけを食べてやせたのは、トマトのカロリーが低いというのが主たる原因でしょう。カロリーさえ低ければ、キュウリでもセロリでもよかったはずです。つまり、トマトの「栄養成分」は、本当の原因とたまたま一緒にあった、おまけの要素なのです。
 このタイプの詭弁も、かなりよく使われます。例えば雑誌などで、成功した起業家がたまたま着ていたファッションを「成功者のファッション」だと言って特集したりしているのは、結構目にするのではないでしょうか。
 しかし、本当に成功者になりたければ、ファッションなんかより、彼らの努力や実際の経営手法などの本質的な強い原因に注目すべきなのです。 
4.「第3の要素」を無視して語る
 最後に「第3の要素」を無視する詭弁。「第3の要素(第3の因子とも)」とは、クリティカルシンキングや論理思考などと銘打った教科書などでは必ず扱われるテーマで、ある意味では必須教養です。
 とは言っても、文字面だけでは、なんのこっちゃわからないでしょうから、例で見ましょう。これは実際に著者が聞いたことのある「第3の要素」を無視した詭弁です。
 「不思議なことに、売り上げが減るほど、クレームは増えるんだよ」
 不思議でもなんでもないのです。これは「商品の質が悪くなる」という、「第3の要素」を見失っているから不思議に思えるだけ。本当の原因と結果の関係はこうです。
 
「商品の質が悪くなる」(原因)
→「売り上げが減る」(結果1)
→「クレームが増える」(結果2)

 この「商品の質が悪くなる」という原因を無視して、結果1と結果2を原因と結果のように語っているから不思議な結論が成り立っているのです。ついでに、もう1つ例を挙げておきましょう。
 「アイスの売り上げが伸びると、熱中症が増える。アイスの食べすぎが熱中症の原因だ」
 隠された「第3の要素」はなんでしょうか?
 答えは、「夏は暑い」です。
 アイスの売り上げが伸びるのは夏ですし、熱中症が増えるのも夏です。そして、「夏は暑い」からアイスの売り上げが伸び(結果1)、「夏は暑い」から熱中症が増えるのです(結果2)。そんな別口の結果1と2を因果関係でつなげているのが、この詭弁です。
 上記の2つの例文は、「売り上げ」と「クレーム」、「アイス」と「熱中症」といった身近な言葉なので、まだなんとなく気がつけますが、これが聞きなじみのない単語で、
 「マルキストロールの摂取量の多いA地域では、有意に寿命が短いことがわかった」
 などと言われるとなかなか手ごわいもの。
 こうした主張を目にしたときも、「マルキストロールの摂取量が多くなることが、寿命が短くなることの直接の原因だろうか?」「マルキストロールの摂取量が多くなることと、寿命が短くなることの共通の原因(第3の要素)があるのではないだろうか?」などと考えることが大事です(ちなみにマルキストロールという物質は架空です)。
自信満々の言い分こそ疑え
 以上、今回は原因と結果についての詭弁について見てきました。最後に付け加えれば、詭弁にだまされないために最も大事なのは、「疑う」という姿勢そのものです。
 ソフィストというのは、今も昔も、言い分がチェックされないために心血を注ぎます。詭弁のほとんどはチェックされればすぐにバレるからです。彼らが必死に自信満々に語るのも、そのため。「チェックの必要はないですよ。本当なんだから」と言いたいわけです。
 だからこそ、こちらとしては疑う。疑うことそのものが、詭弁のまかり通る実社会を生きるためのある種の護身術なのです。アルファポリスビジネス編集部
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