砂守勝巳さんの文庫本

　毎回のように書いているが、私の所有する原付バイクは1週間以上乗らないとエンジンがかからなくなるボロだ。なので家から歩いて7分のところにとうきゅうストアや元町ユニオンがあるというのに、バイクを動かしたい目的で隣町のOKストアへバイクで向かう。
　今日みたいな日にヘルメットを被ると、当たり前のことながら暑さが倍増するのだが、「途中にあるブックオフに寄って本を買っていいよ」ともうひとりのぼくが言ってくれるものだから、その言葉に元気づけられてバイクに乗った。
　積ん読状態になっている本が20冊くらいあるので、1冊買いたい本が見つかったらそこでストップと自戒する。
　今日は文庫の百円棚の「あ」から割と注意深く眺め始めた。ちくま文庫版日本文学全集の『内田百間』があったので手に取った。この文庫版はその作家にあまり興味がなくてもブックオフで見つけ次第買うのでいったん、手に握った。が、まだ入店して3分と経っていないので、これじゃあ淋しすぎる。
　もうしばらく文庫の背表紙を順々に追っていたら、砂守勝巳著『沖縄ストーリーズ』というタイトルに惹かれたので棚から抜き出した。著者紹介を読むとこの人は写真家で、1996年に土門拳賞を受賞しているとのこと。帯に6組の男と女の物語とあるし、本文を開くと文字が小説組みなので、短編集だと受け取った。カメラマンで小説のジャンルに行った人といえば藤代冥砂だ。以前この人の文庫を買って読んだらつまらなかったというトラウマがあるので買うのはやめようと思ったのだが、念のために「あとがき」と「文庫のためのあとがき」を読んだら、人柄に惹かれた。どうせ110円なんだし、内田百間先生には申し訳ないがこの砂守さんの本に乗り替えよう。
　で、さっさと買って店を出て、スーパーに行ってオリーブ油やステーキ用ラム肉（分厚くて美味しそうだった！）、味付けされた牛モツ、マイミクさんがはまっているマリトッツォ（山崎製パンの安物）、かりんとう等々を買い込む。ラム肉があるためバイクを飛ばして帰った。
　うちに戻り、改めて『沖縄ストーリーズ』を開き、さらに砂守勝巳の名をウィキなどで調べてみたら……、2009年6月に亡くなっていた。釜ヶ崎（大阪のドヤ街）の写真ルポでデビューし、写真集も出していることがわかった。なんかぼくの感性に近いところがありそうで、この文庫を選んでよかったと思う。古本は一期一会だ。
　うーん、一期一会？
　この言葉は当分使いたくない。
　今月芥川賞をとった李琴峰さんが昔のインタビューで、（台湾から）日本に来て最初にいい言葉だと思ったのが一期一会で、日本語を深く勉強するうちに大した言葉だとは思えなくなった、と話していた。
　で、その李琴峰さんはTwitterをされているので、iPhoneのブラウザのお気に入りに登録して、週に2回ほど読んでいたら、3〜4日前に承認された人だけが読める半クローズドになっていた。芥川賞受賞で本が売れているだろうになんで？　と思って調べてみたら、彼女がかつてアベ元総理を批判していたことでネトウヨがTwitterに押しかけ、炎上したとのこと。
　ネトウヨ民というのはナチス親衛隊と同様に執拗さがあって、政府に批判的な者は見つけ次第嫌がらせをする。私が所属している市民ブループでは戦争犯罪を告発する展覧会を毎年開催しているのだが、もっとも気を遣うのが「いかにネトウヨを刺激しないか」という点で、本末転倒な話し合いがおこなわれ、開場期間もたえずびくびくしているのである、犯罪者の野放し状態、と言える。
　母語でないのにもかかわらず、実に美しい日本語の文章を書かれた李琴峰さんがなぜゆえ、汚い言葉しか使えない非国民たるネトウヨから「いじめ」を受けるのだ？　これは国際問題として、差別問題として報道されるべきではないの？
　今朝の朝刊にも取り上げられていたが、「国際社会では歴史問題のグローバル化が起き」、さらに「日本の歴史教育が、歴史的事実をきちんと伝えてない」という指摘がある。ちなみに別のページで、いわゆる軍艦島が世界遺産委員会から「朝鮮半島から強制連行された人々について説明がなされていない」と遺憾の意を表せられたという記事もあった。
　しかし、体制が体制だけに、これから先もネトウヨの暴力的な言動と行動によってますます「表現が不自由」になるのだろうな。暗澹たる気分。
　で、県立文学館の学芸員トップのかたへの手紙だが、相変わらず難航している。教えを乞う目的が8割を占めているので、基礎テキストをプリントアウトしてその上に手書きで質問文を書き込む、ということをちまちまやっている。これが思った以上にたいへんで、わからないことを質問したいのだが何をどう質問したらいいのかわからへん、というのが莫迦の底辺らしいのだが、自分がこの莫迦の中にいる一人だということがわかった。結局、2時間以上格闘し、明日延ばしにした。