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2020年04月07日21:27

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無人の病院待合室

 緊急事態宣言が出てもスーパーマーケットや病院は通常通りらしいが、1週間前倒しで胃潰瘍再発を抑制する胃薬と入眠剤を処方してもらうべく定例の病院へ行くことにした。
 診察開始時間から1時間半は老人ホームのリビングルーム状態なので、午前11時着で行ってみたら、なんと外来は私一人だった。受付で体温測定があり、女史事務員さんが私の頬に体温計を当てるも、35.4度。30秒経ってもう一回測りましょうと言われ、再測定するも35.8度でそのまま受付を済ませた。
 待合室には人っ子一人いない。照明を落としているのか? 否、待合室正面にあるいつもは流しっぱなしの大型テレビがオフになっていた。待合室の後方に立って1分も経たないうちに名前を呼ばれ、診察室へ。
 薬の処方をお願いしたあと、「もしぼくが38度5分の熱が出たとしたら、ここに来て相談していいのでしょうか?」と質問してみたら、「ダメダメ。インフルエンザの症状が出たらまずは電話して」とのことだった。病床数が79室の中規模病院でも診てもらえないのね、と納得。かれこれかかりつけになって12年、先生を頼りにしてんだけどなぁ。
 会計待ちもわずか3分ほどだったのだが、誰も座っていない待合室を眺めながら、ネヴィル・シュートのSF古典『渚にて〜人類最後の日』を不意に思い出す。第二次大戦後、核戦争が勃発して、人類は次々と死滅し、残ったのはオーストラリア沖を航行していた原子力潜水艦の船員とオーストラリア南部の狭い地域の住人のみとなり、彼ら彼女らも次々と死んでいく、という預言的なディストピア小説だ。500ページ近い分厚い文庫で、10日掛けて読んだ。なぜ覚えているかというと、2012年2月、23日間のタイ旅行で持参したからだ。バンコクでの滞在先は外国人旅行者のたまり場のような街の、泊まっているのは欧米人ばかりの賑やかな安ホテルだったから、室内外とも明るかったが、北へ北へと流れていくにつれて街も部屋も灯りがどんどんと暗くなって、そんな旅先でこの文庫を読み進んだのだった。貧乏ひとり旅という孤独の中で読むにはど真ん中の小説で、逆説的に小説の隙間に垣間見られる人間愛と人類愛を敏感に受容することができた。
 午後から1時間ちょっと、登場人物がすごい数にのぼる「家族小説」(『光の犬』)を読むも、集中力が早々に切れたところでラズリの散歩を50分ばかり。「不屈の聖人」が祀られている妙隆寺に寄って参拝した。
 帰宅後、日が落ちる寸前まで庭掃除と草むしりと枝払い。私には珍しく2時間あまり、一度も休むことなく黙々と作業に没頭した。気分爽快。
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