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2019年12月08日21:37

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徒労に終わる

 1カ月前から毎朝、珈琲を淹れる前にプロテインを牛乳で割って飲むようになった。手術に備え、少しでも筋肉をつけて体重も増やしたいから。おかげで筋肉は増えていないけど、牛乳の消費量だけは顕著に増えている。
 ペペロンチーノの朝食後、牛乳などを買いたくてスーパーへ。バーゲン品の骨付きラム肉やミルクフランスパンなど結構なたくさん食料品を買って、スーパーを出たところで、女性ホームレスの姿があった。彼女は私に背を向けている。
 生肉や牛乳を買っているので、いったんうちに帰り、熱い珈琲か紅茶を作って出直して来よう。
 冷蔵庫に収めて、紅茶を淹れた。私はストレート派だが、身体が温まるかと考えて少し砂糖を加えた。ステンレスボトルに2杯分の紅茶を入れたら、ボトルは手に持てないくらいに熱い。駅まで行くと、少しは冷めるだろう。
 自転車で彼女が常用しているベンチへ行ってみたら、彼女はいなかった。荷物は置きっぱなしだった。
 駅周辺を放浪しているのだろうか。紅茶の入ったボトルを渡したいので、探しに行った。20分ほど歩き回るも見つからない。ベンチに戻ったら、相変わらず荷物だけがそばに置かれていた。
 2時間後、ふたたび熱い紅茶を作った。自分が持っている衣料でいちばん保温性が高いダウンジャケットをステンレスボトルとともに大きなエコバッグに押し込み、自転車に乗って駅近くのベンチへ行った。
 彼女はやはりいなかった。
 ダウンジャケットを用意した理由は、彼女がみすぼらしいからという理由の他に、昨日のような雨でも彼女はベンチに座っていた、とベンチ前にある土産物店の店番をしていたお爺さんが言っていたからだ。店番と書いたが、創業者なのかもしれない。とにかく彼から彼女の様子について詳しいことを聞き出せた。
「日が暮れて店を閉めるときでも彼女はしばしばベンチに座っています。寒さで死にはしないかと心配ですが、こちらが何か施しでもいったんしてしまったら頼られてしまうと心を鬼にしている」
 お爺さんの冷たい態度は理解出来る。実際、この私も同じだ。
 せいぜいが冬山に行っても大丈夫なほどの分厚いダウンジャケットを差し出すくらいしか、いまの俺には出来ない。
 姿を見せない彼女を1時間、その場で待ち続けた。
 今日は機能に較べて少し暖かくなったが、私には1時間が限界だった。
 紅茶の入ったボトルはまだほんのりと暖かい。ダウンジャケットも見るからに暖かそうだ。これを受け取ってもらうことが私の今日の責務だ、みたいなことを思いながら立ち続けたのだが、果たすことが出来なかった。
 そろそろラズリの散歩の時間だ。
 家に戻ってすぐにラズリとお寺の境内へ。
 晴れた日曜日なので、午後3時半でも参拝客が多い。ジャンパーにiPhoneが入っていたので「黄葉」を撮った。
 万葉集では紅葉じゃなくて黄葉だった。1週間ほど前、高校の恩師がTwitterでそうつぶやいていて、「だからわたしは黄色が好きです」とも書いていた。先生は歌人で、万葉集に通暁されている。私は「先生」がおっしゃっていることを高校時代も今も信じている。
 私は「先生」の授業だけでなく、すべての授業で一分の隙もなく拝聴するようにしていた。授業内容以外でも、教師の表情や声の調子まで注意深く受け止めるほど真剣だった。テストでいい点を取りたいから。家で長時間の勉強をしたくないから。
 しかし、そのなかでも「先生」の授業は特別だった。人生でもっとも影響を与えてくれた人は「先生」のように思う。
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