ラズリのシャンプーと、「隔絶された人々　イゾラド〜」

　ペペロンチーノの朝食後、空気が乾燥しているのでラズリを洗うことにした。
　浴槽に38度の湯を張る。
　タオル２枚とバスタオル1枚、そして肝心のラズリを抱きかかえて2階の浴室へ。重い！
　私も裸になって、観念しているラズリと一緒に浴室へ入った。ひと晩中窓を開けっぱなしにしているので寒い。通常はラズリだけを浴槽に浸けて、湯を掛けながらシャンプーをするのだが、今日はラズリと共に湯に浸かった。（私の身体が）温まった頃合いで立ち上がり、ラズリに石鹸シャンプーを振りかけつつ両手を使って洗った。
　湯をまとったラズリを抱え上げて洗い場に下ろし、シャワーでシャンプーを丁寧に流す。そしてタオル2枚で水分を拭き取り、仕上げにバスタオルで全身を包み込むようにして水気を切って終了。浴室の外に出した。
　それからが結構たいへんで、浴槽内をバスマジックリンをたっぷり染み込ませたスポンジでこすり洗いし、ついでに浴室も清掃する。さらに、タオル2枚とバスタオルも洗って、最後に自分の身体もシャワーを浴びながらざっと洗って終了。
　服を着てから、今度は石油ファンヒーターの前にラズリを寝かせて10分以上ブラッシングする。7割方、乾いたというところで、ラズリを解放してやり、ご褒美にササミジャーキーと水を与えた。全工程で1時間半くらいかかった。
　犬を洗うのはクルマを洗うよりも遙かに重労働だ。体積はクルマのほうが何倍か大きいのだが、相手は友だちだし生き物だ。クルマも友だちではあるが、感情は犬ほどにない。
　午後1時半くらいから、一昨日、献本を受けた文庫を読み始めた。勢いのある筆致だ、などと感心しつつ1時間ほど読んだところで、ラズリと散歩・午後の部に出た。市場の入口脇にある乾物屋でオリーブオイルを買った。さらに安売りスーパー前でラズリのリードを手すりに結んで、牛乳と海老とパスタなどをささっと買って、うちに帰った。
　コーヒーでひと息つきながら朝刊のラテ欄を見ていると、午後4時15分から＜ＮＨＫスペシャル選　沢木耕太郎・アマゾン紀行▽密林深くの未知の先住民を追う！＞という番組がある。時計を見たらあと30分後だ。
　
＜ある日、南米アマゾンの密林から二人の裸の男が現れた。文明社会と接触したことのない先住民、イゾラドだ。部族名は不明、しかも二人の話す言葉は誰にも分からない…。イゾラドという不思議な語感に誘われ、作家の沢木耕太郎氏がその最深部を紀行。森を封鎖してイゾラドを保護する男、１９９６年に出現した別のイゾラド部族の調査を経て、政府から「アウラとアウレ」と名付けられた謎のイゾラドと、ついに対面する…＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（NHKのホームページより転載）

　1秒たりとも目を離せないドキュメンタリーだった。考えさせられる内容だった。

　先月、インド東部の島に上陸し、現地住民に接触しようとしたアメリカ人が殺害される事件があったが、アマゾン流域の奥地にはいくつもの先住民族が暮らしていて、ブラジル人といっさい関わりがないばかりか攻撃的な部族が今なおいる。NHKと沢木耕太郎が接触を試みたのは、そもそも排外主義的な部族でいまはわずか2名だけが残った男たちだった。言葉は通訳を介しても半分以上通じない。
　取材班はふたりの住まいを訪ね、アウルとアウラの様子をカメラが執拗とも言えるほどに追う。沢木は言葉を発するわけでもなく、その場に佇んでいるという風でアウルとアウラを見つめ、余裕が出てきたところで天井を見上げて、彼らがせっせと作り続けている何百という「矢」を見つめている。弓は作っていない、なのにどうして矢だけを作っているのだろうか、と沢木自身のナレーションで語っていた。
　番組では、先住民族の今後として3つの道筋がある、という。
　社会と隔絶したまま暮らしていく。
　文明化した人間と交流しつつもいまの生活を続けていく。
　便利な社会に合流して少数部族の暮らしを捨てる。
　学校の視聴覚教室でドキュメンタリーを観てディスカッションするにふさわしいような問いかけだ。小学生でも中学生でも高校生でも、共通して感想を言い合えるだろう。
　私は私で深く、考え込んだ。そしてアイヌ民族を想い、沖縄のことも考えた。
　さあ、また文庫に戻ろう。
　そう思って本を手に取ったところで家電に電話が掛かってきた。詩人のご長男からで、話が長引いて午後6時近くまでいろいろとお話をさせていただいた。
　夏に売り込みが首尾よくいかず、そのままどうしたものかと思いながらも動かなかった。活動を再開しよう。
　年末になってやるべきことが山積している。頑張らねば。