検査、なぜ受けられない？　新型肺炎に不安の声　 2020/2/27 中日新聞紙面から

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、体調を崩して検査を受けたくても受けられないとの声が行政に数多く寄せられている。
加藤勝信厚生労働相の二十六日の国会答弁で、国全体の検査件数が想定の四分の一にとどまる実態が判明したが、背景には各自治体で異なる検査能力や人手不足があるとみられる。
住民の不安が高まる一方で、検査機関にはアウトブレーク（患者の急激な増加）などへの緊張と不安が広がり始めている。
　
「検査を受けたいのに断られた。なぜだめなのか」。
発熱が三週間以上続いている名古屋市千種区の四十代男性はそう嘆く。

男性は二月初め、せきとともに発熱して診療所を受診。医師は風邪と診断したが、新型コロナウイルスの感染が不安になり、市の保健センターに電話した。
しかし、発熱は厚労省が示す相談・受診の目安「三七・五度」を下回っており、「風邪だと思う」と言われて検査を受けられなかった。

ところが熱はその後、三七・七度まで上がった。
再び診療所に行き、検査ができないか医師に聞いたが「風邪だと思われるから不要」と言われた。
それでも心配で、保健センターに再度電話したが、中国・武漢市の人と接触していないことを伝えると、やはり検査の必要はないと判断された。

今も熱がぶり返し、せきが出るが、厚労省の相談窓口に電話をしても「自宅で安静にしてください」と言われるだけ。
男性は「もっと優先すべき人がいるのだろうけれど、どういう検査態勢なのか」と話した。

名古屋市の保健センターに寄せられた相談は二十四日までに三千二百三十件。
とりわけ目立つのが「発熱して感染が不安」「検査をしてほしい」との声だ。

同市の場合、医療機関からの検体は市衛生研究所に送られ、ウイルスの遺伝子を調べる「ＰＣＲ検査」にかけられる。
検査の上限は一日当たり二十人。現在はその上限に迫る十数人分の依頼がある。

同研究所は瑞穂区から守山区への移転作業中。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、四月のオープンを二カ月前倒しして検査を始めた。
担当職員八人が交代で出勤し、休日を返上して検査に当たっている。

検査は結果が出るまで約六時間かかる。
感染の可能性がある人の喉の粘膜やたんに生理食塩水を加え、遠心分離機や試薬でウイルスを抽出。
そこに新型コロナウイルスにくっついて光る蛍光物質などを加えて、陽性かどうかを判断する。

ウイルスの遺伝子を増幅する必要があるため、検査時間を短縮するのは難しい。
確実な検査結果を出すために、一人につき粘膜とたんの二種類の検体を調べており、今後さらに検査依頼が増加すれば「翌日に回すか、愛知県などの機関にお願いするしかない」。
現場には危機感が募る。

検査に不可欠な試薬も不足している。
薬剤メーカーに発注しているが納入の見通しが立たず、在庫はあと一週間で底を突く。
国が大学や民間医療機関にも検査を呼び掛けているため、国内全体で在庫が不足している可能性があるという。

ＰＣＲ装置はもともと、インフルエンザや食中毒の検査での使用を想定していた。
同研究所の担当者は「今の状況で食中毒が発生したら、検査に遅れが出かねない」と不安を隠さない。

◆感染確認の自治体は苦悩

感染が確認された自治体の多くは、今後さらに検査件数が増えた場合、需要に応じられなくなるとの不安を抱えている。

感染者が増えている北海道は、二十五日昼までに百七十人を検査。
担当者は「検査の要望は増えており、一日当たり最大四十人の態勢は必ずしも十分とは言い切れない」と話す。

二十五日までに五百三十人以上を検査した東京都の担当者は「要検査と判断された分だけで手いっぱい」と明かす。
早急に態勢を増強するため都議会に追加の補正予算を要望しているが、検査機器がそろえられるかは見通せない状況だ。

感染者が出ている愛知県や三重県も今のところ、検査が必要と判断されたケースはすべて処理できている。
愛知県の担当者は「今の態勢が不十分とは思わないが、民間検査機関で検査できるようになれば厚労省が示した目安よりも広い症例に対応できるようになる」と期待する。
一方で、三重県の担当者は「アウトブレークがいつ起きるか分からない。
そのときに自治体が民間の機関をどのような形で活用できるのか、今の段階では分からない」と話した。

名古屋大大学院医学系研究科の八木哲也教授（臨床感染統御学）は「自治体の予算などの問題があり、全国一律で検査態勢を整えることは難しい。
重症者や入院が必要な患者の検査を優先せざるを得ない」と話している。

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■新型肺炎、退院後14%が再び陽性　中国「経過観察を」
(朝日新聞デジタル - 02月27日 11:07)
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