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2020年06月07日14:50

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高校三年生の10月

■人生やり直せるとしたら、何歳がいい? 「リア充だった14歳」「婚活で焦った33歳」という人も
(キャリコネ - 06月06日 09:20)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=210&from=diary&id=6109655



どんな人にでも、「美しい季節」というのはあると思いますが、
 
僕にもやはりありました。
 
サッカー部を6月で引退して受験勉強に集中しなければならない時期に、
 
演劇部の部長から、男子がいないので助けて欲しいと頼まれました。
 
美人の頼みは何でも聞いてしまう僕は、二つ返事で引き受けました。
 
元より演技力なんかない僕に、彼女は実に根気良く指導してくれました。
 
たぶん、彼女は僕にだけ特別に優しいのだと勘違いするほどに。
 
 
そして運命の日、10月の夜、偶然その日は彼女と僕だけが遅くまで残っていました。
 
旧制中学時代からの古色蒼然たる講堂の舞台で、稽古を終えたときにはすでに夜。
 
後片付けをして、二人で真っ暗な講堂を出口に向かって歩いていました。
 
折から十五夜の月が窓から差し込んで、真っ暗な通路にだんだら模様をつけていました。
 
すると、前を歩く部長(M尾A子さん)が何かに躓いて倒れました。 
 
急いで助け起こしたとき、有難うと言って僕を見上げた彼女の顔を
 
満月が明るく照らしました。
 
 
フランスの詩人が「月光は人を狂わせる」と言った言葉通り、一瞬で狂った僕は、
 
衝動的に彼女を抱きよせ、唇を奪ってしまいました。
 
その瞬間、僕の胸を突き放した彼女の、驚きに見開いた瞳の美しさは、
 
何十年も経った今でも、鮮明に記憶に焼き付いています。
 
 
次の日から彼女は僕を無視するようになりました。
 
今とは違って、当時の高校では無理やりキスを奪うなどという行為は、
 
今ではレイプに匹敵するほどの言語道断な犯罪だったのです。
 
A子さんが激怒したのも無理はありません。
 
告白の機会を永遠に失くしてしまった後悔の気持ちはもちろんありました。
 
 
しかし、これには後日談があって、僕は関西の大学に進み、
 
M尾さんは東京のお茶の水に進んだのですが、
 
卒業後半年くらいたったある日、
 
M尾さんの親しい友だちにこんなことを告げられました:
 
「○○クン(僕のこと)、A子の気持ち、あなた判ってなかったの?
 
あなたあの子にひどいことしたんやてね。
 
A子、真剣に悩んでやったんよ。 
 
なんであんなことしたのか、あなたがどんな気持だったのか掴めないって…」
 
 
僕としては、完全に嫌われ、軽蔑されていると思っていたのです。
 
彼女はそれから卒業までの間、僕からの告白を待っていた、と言うのです。
 
その友達に、僕は必至に頼んで東京の連絡先を聞き出そうとしましたが、
 
決して教えてくれませんでした。彼女から言われていたのだと思います。
 
もちろん、彼女の家に電話して、親に訊くわけにもいかないでしょうし…。
 
 
だから何歳に戻りたいか、って言われたら、
 
僕は迷わず、高校三年生の10月の満月の夜に戻りたいと言うでしょうね。
 
 

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