苦い思い出

■校長が女子大生に「性経験はあるよね？」　教育実習中のセクハラ、教職を断念する学生も
(弁護士ドットコム - 09月15日 09:51)
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教職経験も20年近くなったある年、新卒教員の指導教官が回ってきました。
　
相手は如何にも優等生と言った感じの、奈良女子大出身の２３歳。
　
面談して「奈良女か、優秀なんですね」といい、
　
「高校は大阪の方ですか？」と訊くと
　
「奈良高校です」と一言。奈良高校は県下第一の進学校。
　
「ああ、これはかなりの見栄っ張りで、挫折を経験せんと来たんやな」
　
という印象を持ちました。
　
最も厄介な種類が、この「挫折を知らんと大人になった教師」なんですな。
　
できん子の気持ちが理解できん、というとこが最大の欠点や。
　
「難儀な子を受け持ったな」と思ったが、当番やからしゃーない。
　
　
それから放課後、毎日提出してくる報告書と、次の日の指導案。
　
完璧でしたが、僕は書類などあまり興味がないので、
　
ざっと目を通し、そのままハンコを押していました。
　
そんな日が続いた１０日過ぎ、いつものようにハンコを押して本人に返すと、
　
彼女は立ち去らないのです。
　
見上げて「なにか？」と訊きますと、少し憤慨した様子で、
　
「ちゃんと見てくださってるのですか？」と切り口上。
　
かなり怒っている様子に、もう一度じっくりと見て
　
「これで結構です」と言って書類を返しました。
　
それでも彼女は立ち去らずに「ちゃんとご指導をお願いします」
　
とさらに押してくる。よっぽど腹が立っていたんでしょうな。
　
　
次の日、空き時間にその子の授業を参観しました。
　
優等生らしく、マニュアル通りの完璧で隙のない授業展開、
　
しかし肝心な何かが足りません。
　
生徒とのrapportがないのです、尤も新卒なら無理もありませんけど。
　
それを指摘すると、彼女は「じゃあ、先生の授業を見せてください」
　
とかなり強気な性格を見せよる。
　
自分では「指導書通りの完璧な授業」という自信があったんでしょうな。
　
　
僕は新卒以来、指導書なんちゅうアホらしもんは見たこともないし、
　
中程度の高校のレベルと、手作りの授業を心がけてましたので、
　
「参考になれへんと思うけどな」と、自分の好きなように進めました。
　
　
僕の授業はどこのクラスでも人気で、初めに一発笑わせてから、
　
好奇心をくすぐるような質問をしたり、プライドを挑発したり、
　
誰かの質問を「オイ、みんな聞いたか？これ凄い質問ちゃうか？」
　
と全員に「よし、これに答えれた奴は平常点１点」と振ったら、
　
あっちこっちから「オレもオレも」と手が上がるうるさい授業。
　
もともと英語教師には、芸人的要素が必要なんですわ。
　
　
学期初めに「僕は指名はせん。自分で手ェ挙げた奴だけ当てる」
　
「僕が慌てて青ざめるような質問して見んかい！」
　
と喧嘩を売ってましたから、みんな「手ェ挙げんと損や」
　
という雰囲気で、あちこちから手が挙がる。
　
要するに「英語はオモロイ、俺も勉強したい」
　
て思わせたら勝ちやないですか。
　
彼女は実習で習ったのとは全然違う授業に、目ェ丸うしてました。
　
　
あとで「どや、参考になれへんかったやろ」と訊くと、
　
「わたしにはとても真似できません」やと。
　
そらそうじゃ、昨日今日来た奴にこんな授業できたらモンスターやんけ。
　
　
「あのな、授業には教師の持ってる人間性が全部出るんや、
　
指導書通りに授業やってたら、アンタの教師としての能力もつかんし、
　
だいいち英語嫌いを増やすばっかりやで。
　
まず肝心なことはプライドと好奇心を刺激することやな」と答えてやりました。
　
　
これは、一種の職人芸が要求されるやり方でしたから、
　
真面目だけが取り柄の若い子には、無理な要求だったと反省しました。