シネマ・ロサで山内大輔監督の新作2本を鑑賞。「最短距離は回りくどくて、雨とソーダ水」。悠斗と青山が苦難の末に結ばれてハッピーエンドとなった前作から一転、青山が行方不明となった末死ぬ。失意の悠斗の前に、青山を知る裏社会の男柴原が現れる。
ここからが怒涛の展開。柴原によると、青山は裏社会の金を持ち逃げし、悠斗が男性機能を失った事件も、悠斗を独占するために青山が仕組んだこと。それに青山に利用された揚句柴原に売られた男娼の流花が現れたり、青山の別の顔が次々出てきて、前作の余韻を吹っ飛ばす。悠斗は流花とともに、青山の借金返済のため秘密クラブを任される。
悠斗の事件でこの世界を追われた聖夜は、なんと私と同業者になっている。客の少年をレイプし、自分の言いなりにして復讐に利用しようとする。仕事中にそんな暇があるとは羨ましい。
新たな登場人物の紹介と、青山の物語に尺を取られ、話はほとんど進まず。それにカラミ場面が多い。山内監督のピンク映画にもこれほどのカラミはない。3作目への橋渡し的な作品としても、物足りない出来。
「落花流水」は完結編。冒頭で流花が客を殺す。前作では大人しかった山内監督の血まみれ描写が復活。最も面白いのは、裏社会の下っ端で、直接暴力を振るう若者たちの描写。女性客はドン引きだろうが、現場では「食人族」のTシャツを着て演出する山内監督。これはイーライ・ロス監督と同じ。山内監督はこうでないと。
ただツッコミどころは多い。柴原は裏社会の人間にしては、若者たちの言う通り「甘すぎる」。それにガードも緩すぎる。聖夜と障害を負って生きていた矢崎は消えてしまう。低予算ゆえか。
3作を観て最も印象に残るのは、天性の男娼である悠斗の無自覚なファム・ファタールぶり。周囲の男たちは悠斗を独占しようと血を流す。流花が客を殺したのも、悠斗に接近するためだったのではないか。
しかし当人は一途であり、青山を愛する閉じた世界にこもってしまう。1作目とは違った余韻を残す。山内監督とBLの相性が良かったのかはわからないが、この作品は山内監督の個性が発揮されて楽しめた。観客の中で男は私含めて2人。居心地悪いな。
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