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2020年06月06日16:11

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彼らは生きていた

 ついに千葉県でも映画館が再会。最初の映画はキネマ旬報シアターで「彼らは生きていた」。ピーター・ジャクソン監督の第一次世界大戦の記録映画。イギリス戦争博物館に保存された映像に、帰還兵たちの証言を流す作り。
 冒頭の開戦直後は、メディアが発達していない当時としては仕方ないが、多く人は戦争に疑問を持たず、むしろ高揚している感じと、兵役の年齢に達していない少年たちを志願させる同調圧力、それを承知で入隊させる軍の態度に辟易する。
 訓練を終え、兵たちが前線に出てきたところで、画面が大きくなり、映像がカラーとなり音も加わる。兵たちの体温が感じられ、遥か昔の、遥か彼方の戦場が突如身近になる。モノクロ映画をカラー化するのは反対だが、この映画のカラーは素晴らしい。
 4時間哨戒活動をすると、8時間休憩などの「勤務体系」も初めて知った。火を使うと煙で位置がばれるので、機関銃射撃で出た熱湯を使って紅茶を飲んだり、いきなり起きる滑稽な事件など、塹壕での生活も興味深い。しかしあまりに不潔。スペイン風邪が大流行するわけだ。
 敵の塹壕に向かって突撃する場面は、さすがに映像が残っていないが、兵たちの証言や当時の絵で見せる。その前に何度も出てきた負傷兵の赤い血、変色した死体から悲惨さが想像できる。
 この後も勝利の喜びがあるわけでもない。驚いたのは、イギリス兵と捕虜のドイツ兵がともに救護作業をしている映像。ドイツ兵たちはカメラに向かって笑みを浮かべる。イギリス兵たちはドイツ兵たちを憎まず、むしろ共感している。本当に「無意味な戦争」と思わせる。
 さらに驚くのは、再びモノクロに戻った帰還後の映像。この時代の帰還兵は英雄として遇されると思っていたが、用無しとして世間から疎外される。ここはかつてよく観たベトナム帰還兵物の映画を思い出した。そしてヘミングウェイの「兵士の故郷」の主人公の心境は、多くの帰還兵に共通するものと実感する。
 この映画の製作に、ジャクソン監督らは相当手間をかけただろう。その甲斐あって記録映画の域を超えて、戦争映画の快作となった。

 
 
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