倒錯的な時間が流れ 二学期がスタート
〈もうこれでお役御免だろう〉と思っていた矢先、副部長さんが半べそで私の所にやってきました
「ごめん…美術部が…」
…
今となっても真相が定かではないのですが 皆で出し合った&生徒会から予算で充当されていた美術部の部費が行方不明になってしまったそうなんです…
最初は「部費がどこかになくなった」「保管場所の勘違い」…などと考えていたらしいのですが、部内に「誰かが着服したんじゃないか」みたいな声が上がり始めてしまって部が分裂しそうだと
それに部費(生徒会の補助金)盗難の事実が生徒会に知られれば 廃部も免れないと…
「そこで 本当に申し訳ないんだけれども、キミに一肌脱いで貰いたいんだ…」
…
今まで気持ちの上では私を守ってくれていた部長さんや副部長さんですから むげに断るわけにもいかず
私はとるものもとりあえず、副部長と部室に向かいました
まだ夕方には蜩(ひぐらし)の鳴き声がするような晩夏…
美術部室に足を踏み入れた私に舞い込んだ依頼は耳を疑うものでした…
“なくなった部費を文化祭の時の模擬店というか 物販の収入で補填したい”
“そのために…話題性を持たせてお客さんの購買意欲を刺激するために”
提示されたのは
世界史の教科書にも登場した(はずの) ルネサンス期の絵画“(サンドロ・ボッティチェリの)ヴィーナスの誕生”の真似事でした…
作品をブックマーカー(しおり)やポストカード、ミニポスターに加工して販売して 収入を部費や補助金に補填する…
私も“ヴィーナスの誕生”は印象的な絵画でしたからよく知っていましたが、同時にその名を聞いて血の気がひきました
「全部脱ぐんですか!?」
思わず口を衝いて出た言葉です
「当然でしょうね!あんたは美術部を救うヴィーナスになるのよ」
ミューズとかヴィーナスとか、そんな賛辞は関係ありません いくらなんでも全裸はない…
そう思って はっきりお断りしました
「あんた断れるの!?美術部潰す気?」
相変わらず高圧的な態度の矢澤さんが部室を飛び出していって…
…なおちゃんを伴って帰ってきました
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