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2019年07月19日16:24

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異変を受け入れていく日常の異常 『天気の子』

新海誠監督の新作『天気の子』を見て来ました。

パノラマ的スケールだった『君の名は。』を見た時、『ほしのこえ』からずいぶん遠くまで来たものだと思いましたが、今回は前作以上に手慣れた職人監督の作品のようで、円熟味が増してきたようです(まだ若い監督ですが)。


※ご注意。物語の内容に深く触れている記述があります※


【物語】
連日の雨がやまない夏の東京に、高校生の少年・帆高(声:醍醐虎汰朗)がやってくる。家出をしてきたのだった。
金に困った帆高は、怪しげなルポライターの須賀(声:小栗旬)の事務所で働くことになる。
ある時、女子高生の陽菜(声:森七菜)と知り合った帆高は、彼女が「100%の晴れをもたらす晴れ女」であることを知り、晴れを売るという仕事を思いつく。


…『君の名は。』で驚いたのが、それまでの新海誠監督作品とは異なり、スペクタクルな天災が回避され、大団円を迎えたことです。それがこの映画では、天災は避けられず、ゆるやかに進行し、主人公も劇中の人びともそれを受け入れていきます。この点に特徴があります。

あの記録的な前作では、時代を超えた縁による男女の結びつきをファンタスティックに描いていましたが、本作ではそういう超自然的な何かの存在は極めて希薄で、不条理な気まぐれとしてあっさりと処理されています。映画の中の人びとは、異変を日常として受け入れていきます。

それがかえって緻密な生活描写を壊さず、共存させているので、この監督作品としてはファンタジーと日常のバランスが良く取れています。見ていて円熟味を感じたのはこの部分にです。

ミュージカル映画のごとく鳴り響く挿入歌と繰り返される主題歌は、もはや洗脳に近いほどの演出なのに、違和感を感じさせず受け入れて見られる、不思議な映画でもありました。

主人公の2人の男女のキャラクターデザインを見ていると、過去のこの監督作とのつながりも見て取れるので安心します。小栗旬が演じるキャラクターは、細田守監督作の登場人物のような線の細さと危うさがあり、作品に緊張感を与えていて良かったです。


現実には、温暖化や異常気象は回避できず、受け入れていくしかないのかもしれません。それに対して悲観的にならないのは無責任なことかもしれませんが、その下で懸命に生きる主人公たちには大いに共感できます。


★★★★。良作と思います。
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