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2021年06月08日02:23

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耳が痛い内容のエピソードには“ダメ”を出すというのは“正しい”のか? 「LAW & ORDER: 性犯罪特捜班」シーズン22第1話(2020)を見て。

たまたま6月7日からスカパー契約14周年記念特典というやつを実行して、主なスカパー各局が無料で見られるようになりました(16日間の限定です)。思えば「ナッシュビル」がスターチャンネルで放送されるからとあわてて受信契約してから、早くも14年が過ぎたということですね。その数年後、それまで20年以上契約していたWOWOWは、内容の低下(僕個人の判断です)を理由に解約してしまいましたが、こういう特典があるからスカパーはやめられません。

で早速、昨年11月に全米(NBC)で放送したシーズン22の第1話「Guardians and Gladiators」を見ました。「LAW & ORDER: 性犯罪特捜班」は、犯罪捜査する刑事チームと裁判で戦う検事チームの連携を描いたシリーズ「LAW & ORDER」からスピンオフした別シリーズで、マンハッタン警察の性犯罪特捜班と裁判を担当する検事を描きます。

本家である「LAW & ORDER」は2012年の3月で終了したようですが、「性犯罪特捜班」は継続しています。主人公の女性刑事オリビア・ベンソン(マリーシュカ・ハージタイ)が新人刑事だったころから始まり、現在はキャプテン(普通なら署長?)としてチームを引っ張っています。そのベンソン刑事が、セントラル・パークで子連れの母親からの通報により、駆けつけた白人警官が逮捕した黒人青年(ブレイク・モリス)が誤認逮捕だったということで窮地に陥ります。

ちょうど僕はNHK−Eテレで放送した「ドキュランドへようこそ」という番組の「人種差別をなくす実験授業」というエピソードで“、無意識の偏見”に気づかせる3週間の特別授業というものを見ていたから、窮地に陥ったベンソンが内務査察課の調査を受け“無意識の偏見”に気づく部分には痛烈な印象がありました。

「人種差別をなくす実験授業」は、イギリスの私立中学で11歳の新入生たちを白人とそれ以外に分け、3週間特別授業を展開するのでした。まず生徒たちは、単語を次々に見せられ、反射的にその言葉が“白人”を連想するのか“黒人”を連想するのかの2択を迫られます。その結果は、“中立”がごくわずかで“有色人種”寄りとされた生徒と同数。大半が“白人にいい意味を見ている”という結果でした。

ところが、生徒を白人とそれ以外の2チームに分けると、それ以外の生徒たちは和気藹々と語り合うのに対し、白人側の生徒たちは“無意識の偏見”に直面して深刻に悩むのでした。この反応の“温度差”は実に興味深い。今回のベンソン刑事も、同様の心境に至ります。ベンソンの息子(たしか生まれてすぐ養子にした=ライアン・バグル)がネットに公開されたベンソン刑事の“黒人逮捕シーン映像”を見て、疑問を突きつける。

今回のポイントは、imdbの得点では毎回8点近いこの「性犯罪特捜班」の評価点が、この挿話に限って5.8点と低いことです。「人種差別をなくす実験授業(The School That Tried to End Racism)」の評価点に至っては4.5しかありません。←投票者数が47人しかなく、その半数以上が最低点の1を投じていました。

この“正直な”評価には驚くほかありませんね。僕自身、“無意識の偏見”がないかと問われたら、とても“ない”とは言い切れません。だって長年アメリカ映画を見続けて、“無意識に”社会通念としてWASP社会の倫理観を刷り込まれているんだから。もしかしたら僕は、トイレに2種類あったら“カラード(有色人種用)”ではなく“白人用”に入るを選択してしまうかも。

ところが“正直”な反応は、自分の中のそういう無意識な偏見を認めようとしないわけです。だからこそ偏見が残り、偏見による悲劇が繰り返される。それを諌めようとした「性犯罪特捜班」のこのエピソードは、見事に“非難”にさらされたということです。

とはいえ「人種差別をなくす実験授業(The School That Tried to End Racism)」を体験した生徒たちは、通常授業に戻って仲よく学校生活へと入っていきました。11歳までにこういう体験をしておかないと、社会生活によって無意識の偏見が植え付けられるのだそうです。その現実に、目をつむりたい気持ちは僕も分かるけれど、実際に目をつむっていたらこの世は闇です。←あ、目をつむったら暗いからというダジャレじゃないからね。

とにかく、耳の痛い話には耳を貸さないという風潮が、20世紀終盤から蔓延しています。かつてエド・マローは、番組の祝賀パーティーで“耳の痛い話をします”と切り出しました(「グッドナイト、グッドラック」参照)。そして赤狩りのマッカーシズムに立ち向かった(映画の構成の話ね。現実の時系列とは別)。それがマスコミの理想形だと定義されたことなど今は昔。imdbの得点投票者たちは“正直”なものです。

しかし理想を忘れて、現実の自分を全肯定してどうする、と僕は思います。自制というものがない個人が集合しただけの社会なんて、野蛮な弱肉強食の獣社会でしかない。そんな人間社会に突入してしまった地球なら、いっそ滅びてしまえと思います。少なくとも関西風に“あんた、いっぺん死に!”と叫んでやりたい。とまあ、寿命あと10年を切った老人は、気楽な言葉を吐くのでした。
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