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2021年03月13日04:10

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“極端に邪悪で、びっくりするほどの悪業で下品”という原題だけど、真面目に驚く映画でした。ジョー・バーリンジャー監督「テッド・バンディ」(2019)。

原題は「Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile」です。元になったのは担当判事(この映画ではジョン・マルコビッチが演じています)の言葉で、"The crimes were extremely wicked, shockingly evil, vile, and the product of design to inflict a high degree of pain.(この犯罪は極端に邪悪で、びっくりするほどの悪業で下品であり、高度な計画性を持って苦痛を与えようとした犯罪)"だそうです。

すでに何度か映画化されている事件で、ジョー・バーリンジャー監督によるドキュメンタリーもあるようで、いちおう有名な犯罪者として名前だけは知っていました。だから“時々思い出したように再放送する風変わりなドキュメンタリー”のひとつだと思い、今まで見ていないから見てやるかと録画したしだい。そしたら新作の劇映画でした。

ザック・エフロンが主人公のテッド・バンディを演じていますが、驚くほど本人に似ています。エンドロールに実際の人々のフィルムが出てきますし、そもそも裁判をテレビ中継した最初の事件だそうで、その映像と見比べてもバンディとエフロンはそっくりです。似ていたら映画の価値が上がるのかと言うと、そうは言えませんが印象的ではある。

今回の作品で僕が興味深かったのは、原作者でもあるエリザベス・ケンドール(リリー・コリンズ)と、バンディに子供を認知された女性キャロル(カヤ・スコデラーリオ)も、本気でバンディに惚れていたという部分でした。そしてこの映画で描かれる限り、バンディ本人は弁護士としての才能も十分にあり、法廷での弁論などに十分説得力があるわけです。

とはいえ現実には死刑が執行されていますから、バンディが犯人だったということで歴史は決着しています。それを覆すという意図はない映画だということ。しかしバンディという人間が生きているあいだじゅう、本気で彼を愛した女性が少なくとも2人いたということです。そのドラマが、なかなか興味深いのでした。

この作品はNetflixが900万ドルで権利を買い上げたそうです。Netflixというところは、日本語字幕制作についてはカネをケチる会社みたいですけど、買い付けにはカネを惜しまないらしい。それはそれで意味があるとは思う。←今回は東北新社が字幕をつけていますから、日本語字幕としての問題は全くありません。一流の字幕翻訳家である佐藤恵子さんが仕事をしています。

それにしても人間というものは、かくも他人を信じてしまうものなのかと驚きます。そしてひとたび信じてしまうと、そこから抜け出すのはとても困難なのだとよく分かりました。とはいえ普通の場合は、その“信じ合い”が幸福をもたらすものなのですが、このバンディという殺人鬼に翻弄された2女性については(そして殺された多くの女性たちにとっても)実に不幸な出来事だったわけです。無関係だった我々は、無関係で良かったねと安堵するほかありません。

とりあえず映画としては、不思議な人物像を提供してくれる奇妙な味わいの作品でした。ジョン・マルコビッチの判事ぶりなど、一見に値する映画です。時間が許す方は、体験してみるとよろしいのでは?
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