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2021年03月09日02:08

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僕が興味を持っている監督なら自伝的な内容の映画は面白い。ペドロ・アルモドバル監督「ペイン・アンド・グローリー」(2019)。

昨年公開時(2020年6月)に劇場公開されたようですが、見逃してしまいDVDで見ました。タイトルバックの極彩色の洪水を見ると、劇場で見たかったなとは思います。DVDでこの感覚、ゴージャスでうっとりしてしまいました。そう感じなかった方には、この映画とおつきあいしなくていいと思います。どうぞタイトル終了後、スイッチをお切りください。

物語は、映画監督で脚本も自分で担当しているサルバドール・マロ(アントニオ・バンデラス)が老境を迎え、背中が痛むなど苦しんでいます。そのため仕事にならない。彼の旧作がシネマテークでかかることになり、長年仲違いしていた俳優のアルベルト(アシエル・エチェアンディア)を訪問して仲直りし、一緒に出席する合意を得るのですが…、という展開。

映画監督が主役で、それをアントニオ・バンデラスが演じるとなると、アルモドバルの自伝的な映画だと思いますよね。少なくともフェリーニにとっての「81/2」を感じさせます。後段でサルバドールの友人としてフェデリコと名乗る男が登場するわけだし。とはいえ、別にアルモドバルの私的映画だと感じなくても、業界の裏話でいいわけです。

imdbのトリビアには、"deporting Salvador Mallo" is an anagram of "stalling Pedro Almodóvar".とありました。グーグル翻訳にかけると、“「サルバドール・マッロの強制送還」は「ペドロ・アルモドバルの失速」のアナグラムです”となります。たしかに並べ替えるとStalling pedro alModovarとなりました。こういう楽しみ方は、映画を面白がった人だけにしましょうね。知ったかぶりトリビアほど情けないものはないと僕は考えていますので。

冒頭で、バンデラスがプールに沈んでいる映像があり、「アタメ」における“映画史上最高の潜水シーン”の焼き直しかと思いましたが、それも捨て置いて結構。マロ監督の秘書が実に親身にテキパキと仕事をこなすあたりとか、回想シーンの若い母親(ペネロペ・クルス)とか、ベタな楽しみが随所にあります。僕はサルバドール少年になって、洗濯する母親の背中に乗りたいとつくづく思ったのでした。

あるいは、小学生のサルバドール少年が、文盲だけどハンサムな左官エドゥアルドに文字を教える面白さとか、ラストシーンでは今村昌平の「人間蒸発」並みの鮮やかな幕切れを見せてくれるなど、僕には十分満足できる作品でした。でも、アルモドバル作品ですから、観客を選びます。僕は酒を飲まないので、酒好きの人たちが好む逸品ツマミで口に合わないものがあるのと同じ気がします。

とはいえ、このスペイン料理はミシュランの3つ星クラスだと思う。味の好みは人それぞれですから、合わなかった人には残念でしたとしか言えませんが、僕はゴージャスな料理をたらふく食べて満足です。てなわけで、僕が興味を持って追いかけている監督さんたちそれぞれが、みんなこういう“自伝的映画”を作ってくれたら楽しいだろうな、と思っています。
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